I'm home!
arc3後|2008.02.09
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「ごはんにする?おふろにする?それともあ・た・し?」
 悪戯っ子の表情で、ポコはにんまりと笑う。
 そのあまりにも有名な台詞に、エルクは吹き出した。
「はは、んだよそれ。おまえを選んだら、どうなるんだ?」
「近所迷惑承知でプチコンサート。どうせあまり眠っていないエル君を、めくるめくお昼寝の世界にご招待〜」
 あくまでおちゃらけた態度を改める気はないらしい。茶目っ気たっぷりにいうポコに、エルクは苦笑する。
「さっき船で眠ってたから、昼寝はしねーけど、魅力的だな」
「………さっき、ね…ま、いいや。それでどうするのさ?」
「んー…」
 顎に手をあて、真剣に悩み出すエルクに、今度はポコが苦笑した。
 そして、エルクの空いた方の手を掴むと、いつまでも入り口で突っ立ている彼を部屋へ引きこむ。
 ちなみにその間、エルクは全くもって無抵抗である。
「なあ、おめーメシ食ったのか?」
「ボク?まだだけど?」
「ん、じゃあごはんにする」
 その言葉に、ポコは失敗したと思った。それでは、せっかく選択権を渡したというのに台無しだ。
 3ヶ月間遠征に出ていた彼が、ようやく気を遣うことなく、休められる自分の家に帰ってきたというのに。
 なんでそう他者を優先するのだろうか。
 ポコはこっそり溜息をつくと、軽く首を振って気を取り直す。
「りょーかい。そこに座ってて」
「え、いや、オレも手伝」
「座ってる!」
 問答無用でソファに押し込み、ポコは取り付けられたキッチンに立つ。
 ビビガから、昼頃帰ってくると聞かされていたから、準備は万端。レンジに放り込むと、ヤカンに水を張り、エルクに手渡す。
「なんだ?」
「沸騰させて」
「………了解」
 迷いのない動きに、どっちが家主なのやらとエルクは苦笑した。
「なー、おまえいつから来てたんだ?」
「一昨日からー。ビビガさんが快く開けてくれました」
 ありがたいよねと指を組み、感謝するポコに、そういえばこいつはビビガと顔見知りだったなとエルクは思い出す。
 そしてヤカンの中の音に、エルクはポコを見た。
 頷かれて、ヤカンを取り上げられる。
「あ、そーだ。手紙分類しておいたよー」
「お、サンキュ。爆発とかしなくてよかったな」
 さらっとエルクが言って、ポコはその不穏な単語に目をむいた。
 思わず、急須に注いでいた手を止めて、エルクを見る。
「え、したの?」
「いや?昔はあったけど、今はギルド通して届くからなくなったな。カッターの刃とかはまあ、時々あるけど。あ、あと、消印ついてないのは気をつけねーとな」