雨空を抜けて
arc2|2008.02.21
「そんじゃ、早く洗わねーと、妙な染みが残るぜ?さっさとシャワーのついでに洗って」
「駄目駄目駄目。それよりさー、あきらかに…その、あまり言いたくないんだけど…た、体脂肪率エルクのが低いでしょ?低い人の方が風邪ひきやすいんだよ」
「でも、真っ先に冬布団使いだしたのおめーじゃね――っだー!!な、なに!?」
熱くなりすぎていたらしい。完全に無防備の後頭部を殴られ、エルクは涙目で振り返った。
同様にヒートアップして、侵入者の存在に全く気づかなかったポコは、目をむく。
「シャンテ!?った!!な、なにすんのさ!!」
額をチョップされ、思わず非難の声を上げると、歌姫はそのきれいな顔を怒りに歪めた。
すぅっと息を吸い込むその姿に、やばいと本能的に悟った2人が1歩退いたと同時。
「う・る・さ・いーっ!!!いい加減にしなさい!!!ガタガタぬかすんじゃないわよ、まったく!!そんな暇があったらとっとと入りなさい!!」
「っちょ、シャンテ!??」
「うっわ、」
シャンテは2人の首根っこをつかむと、困惑しているのか軽い抵抗しかしない2人をズルズルとシャワー室へ引っ張る。
そして容赦なく放り込んだ。
「だっ!」
「っ」
それでもしっかりと受け身をとる2人を無視し、シャンテはシャワーノズルをつかむ。
先に気づいたのは、飛んでいった帽子を掴もうと、一瞬目を離したポコではなく、エルクだった。
「ちょ、ま、タンマ!」
だがその制止はむなしく、躊躇いなくひねられた蛇口によって、2人の頭上に先ほどの雨なみの冷水が降り注ぐ――はずだった。
目をギュッと閉じて、襲いくる冷たさに身構えていたポコは、確かにバシャバシャと音は聞こえるのに、いつまでたっても自分に降りかからない事実に、恐る恐る目を開けた。
ポゥと穏やかな音と赤みがかった透明の壁。それに阻まれて床へ流れる水。
かかげられた腕、いつのまにか守るように自分の肩をつかんでいる指、そのどちらも隣にいるエルクのもので。なにが起こったのかようやく分かった。
「ナーイス、エルク!」
弾んだ声に、エルクは戦闘中にだけ見せる緊張をはらんだ濃紫の瞳を苦笑へとかえて、ポコに一瞬視線をおくり、湯気のではじめたシャワーへ戻す。
湯気の向こうで、艶やかな青い髪を軽く振って、歌姫は肩をすくめた。
「残念。頭冷やすのにちょうどいいと思ったのに」
「駄目駄目駄目。それよりさー、あきらかに…その、あまり言いたくないんだけど…た、体脂肪率エルクのが低いでしょ?低い人の方が風邪ひきやすいんだよ」
「でも、真っ先に冬布団使いだしたのおめーじゃね――っだー!!な、なに!?」
熱くなりすぎていたらしい。完全に無防備の後頭部を殴られ、エルクは涙目で振り返った。
同様にヒートアップして、侵入者の存在に全く気づかなかったポコは、目をむく。
「シャンテ!?った!!な、なにすんのさ!!」
額をチョップされ、思わず非難の声を上げると、歌姫はそのきれいな顔を怒りに歪めた。
すぅっと息を吸い込むその姿に、やばいと本能的に悟った2人が1歩退いたと同時。
「う・る・さ・いーっ!!!いい加減にしなさい!!!ガタガタぬかすんじゃないわよ、まったく!!そんな暇があったらとっとと入りなさい!!」
「っちょ、シャンテ!??」
「うっわ、」
シャンテは2人の首根っこをつかむと、困惑しているのか軽い抵抗しかしない2人をズルズルとシャワー室へ引っ張る。
そして容赦なく放り込んだ。
「だっ!」
「っ」
それでもしっかりと受け身をとる2人を無視し、シャンテはシャワーノズルをつかむ。
先に気づいたのは、飛んでいった帽子を掴もうと、一瞬目を離したポコではなく、エルクだった。
「ちょ、ま、タンマ!」
だがその制止はむなしく、躊躇いなくひねられた蛇口によって、2人の頭上に先ほどの雨なみの冷水が降り注ぐ――はずだった。
目をギュッと閉じて、襲いくる冷たさに身構えていたポコは、確かにバシャバシャと音は聞こえるのに、いつまでたっても自分に降りかからない事実に、恐る恐る目を開けた。
ポゥと穏やかな音と赤みがかった透明の壁。それに阻まれて床へ流れる水。
かかげられた腕、いつのまにか守るように自分の肩をつかんでいる指、そのどちらも隣にいるエルクのもので。なにが起こったのかようやく分かった。
「ナーイス、エルク!」
弾んだ声に、エルクは戦闘中にだけ見せる緊張をはらんだ濃紫の瞳を苦笑へとかえて、ポコに一瞬視線をおくり、湯気のではじめたシャワーへ戻す。
湯気の向こうで、艶やかな青い髪を軽く振って、歌姫は肩をすくめた。
「残念。頭冷やすのにちょうどいいと思ったのに」