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四拾     日本はもう駄目(2022/1/3)
参拾九    ボクシング界が壊れ始めています(2021/12/26)
参拾八    伊藤かずえ氏が羨ましい(2021/12/20)
参拾七    終活また一歩(2021/12/14)
参拾六    今年の訃報(2021/12/8)
参拾五    最近の世相(2021/11/30)
参拾四    村田選手正念場(2021/11/20)
参拾参    イシクラゲ退治(2021/11/16)
参拾弐    韓国映画三たび(2021/11/6)
参拾壱    衆議院選挙は面白イベント(2021/11/2)
参拾     円高のままにデフレ脱却は無理でしょう(2021/10/25)
弐拾九    ビートルズ解散経緯が再度クローズアップされてます(2021/10/21)
弐拾八    習近平政権が末期症状(2021/10/12)
弐拾七    EV車が招くもの(2021/10/5)
弐拾六    ニュースから美術関連に思いを致す(2021/9/28)
弐拾五    最近の世相(2021/9/21)
弐拾四    ここまで経営者が劣化したのか(2021/9/13)
弐拾参    異国情緒は観光資源(2021/9/4)
弐拾弐    アフガン急迫の蹉跌(2021/8/28)
弐拾壱    千葉真一逝去(2021/8/21)




四拾     日本はもう駄目(2022/1/3)
 新年を迎え、ついつい日本の行く末を考えてしまいます。
 NHKの「検証 コロナ予算 77兆円」を見ていただくと、国民の一部―一部と云いながら相当な数―が白蟻となっているのが伝わってきます。本来の目的である「感染拡大防止」「ポストコロナに向けた経済対策」の二つと関係のない事業に交付金が使われているのがよく解ります。

 昨年末に揉めた子育て世帯に対する10万円給付もあからさまな人気取り施策で、貧困対策にもなっていませんでした。コロナで職を失い、明日の生計が立たない若年者なんか放置です。公明党の人気取り発案とか言われていますが、これに異議を唱えられない自民党もどうかしています。

 不適切な事業、事業費の再委託に係る不適切な仕組み、検証する機関もないまま放置されるバラ撒きと、やり放題なんですね。
 でも、これって、つい最近も別の事業で散々見せつけられました。東京五輪がまんまこれでしたもの。もはや、このような錬金術を誰もが競うようになってしまいました。再委託による不適切処理は、長野五輪ですでに問題になった手法です。誰もが分かっていながら、メスを入れることもなく、むしろ放置して自分も御相伴にあずかろうというメンタリティです。

 東日本大震災の復興予算が10年で32兆円なわけで、いかに異常な錬金術が行われているかが分かります。もちろん、ワクチン接種や雇用調整助成金などは重用施策であり、巨額の支出であっても誰も文句をつけないでしょう。しかし、公務員や年金受給者にも一律給付なんて、失業や貧困対策になんの関係もありません。これを馬鹿げたこととみんな知っていながら止めることができないんんですね。

 そして、あの布マスク配布の無意味な浪費、それも金のことだけでなく、事務処理に追われて関係者が疲弊するだけの大愚作。為政者の人気取りの後始末に追われるだけでした。それに布マスクだから、余ったところで誰も欲しがりません。不織布の有用性が行き渡っていますからね。

 コロナ対策だけじゃありません。以前にも書いた EV補助2倍の最大80万円、米欧並み水準 政府が支援 の補助金なんかまったく不要不急の極みです。給電ステーション整備が為されてなく、各戸にも200V給電設備がなく、電力需給が逼迫している現況下、推進の意義なんてありません。レジ袋有料化と同じ、無意味な格好づけだけで害悪ともいえる政策を推し進めようとしています。

 このような国の劣化が進捗している理由として、官邸による官僚の人事権掌握が考えられます。以前だったら省庁側がまっとうな政策を提示し、政治家の夜郎自大っぷりをそれなりに牽制していたかと思います。いくらなんでも、昨今のばら撒きを静観したとは思えません。

 また、今の次官連絡会議は、かつての事務次官会議とは別物だそうです。民主党時代に政治主導の目玉として廃止され、大きく変質しているそうです。朝日新聞の記事から引用します。

 現職事務次官の発言として「かつての事務次官会議が復活したように見えるが、中身は全然違う。官邸から下りてくる話を聞くだけ。次官側から話題を出すこともあるが、事後報告や雑談がほとんど。何も大事な決定はなされない」

 だそうで、人事権と併せて官邸に対してもの言えぬ体制となっているのでしょう。でなきゃ、コロナ対応で多忙な中、あんな布マスクを全戸配布しようなんて阿呆なこと、誰かが止めたでしょうに。

 上のような事情が重なったといえ、「所詮は税金(借金)、他人の金」とばかり、無責任由来の不幸です。ない袖を国債ですべて賄っているわけで、1,200兆円にまで膨れ上がりました。
 こんなの償還のあてもなく、どんなに困ろうが、先々で誰かが対処するだろうと責任を放棄しています。将来においては、人口オーナスで経済はどんどん縮小し、税収も減り、脱炭素への備えもないことから関連賦課金も上乗せされ、いずれ破綻するのは明白です。そのとき、預金や証券類はすべて紙切れになり、国民が露頭に迷うだけです。その道筋が見えているのに政治家は知らん顔で、人気取り政策に邁進するばかりです。
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参拾九    ボクシング界が壊れ始めています(2021/12/26)
  18日に中国・武漢で行なわれた格闘技興行のエキシビションマッチで、元WBOフライ級王者の木村翔選手が、散打の選手に危険な反則を受け、なお負けとされました。動画を見ると、とんでもない試合内容です。

 ボクシングルールのはずが、投げや突き飛ばしを連発し、木村サイドの抗議をレフェリーは無視しています。2Rに木村選手を抱え上げて頭から落としました。木村サイドが試合継続を拒否すると、反則側に勝ちが宣せられました。

 ネットやニュース報道では、中国選手や興行団体の無法を非難する意見が溢れましたが、そう簡単な話でなく、実は根深い問題があるんです。一般記者には解らない話だし、内部事情に詳しいボクシングライターは絶対に書かないしで、世間の方に伝わることもないでしょう。もちろん部外者の私は、断片的な話しか知りません。

 JBC(日本ボクシングコミッション)とJPBA(日本ボクシング協会)とがあり、JBCはライセンス管理やランキング管理、ルールや試合指導を行うために必須の組織です。JPBAは公認ジムの加盟団体で、その存在については是非があるそうです。
 JPBAがJBCに対して不手際などを理由に、「来年からの承認料、ライセンス料の支払いを止める」と通達していたものを、最近になって取り下げました。承認料は興行主催者から単に預かっているだけなのに、協会が勝手に止め置く筋合いではありません。協会内部からも決議もなしに勝手なことをするなと批判を受けたそうです。

 一部の協会関係者(=ジム会長=プロモーター)が、噛ませ犬としてタイなどから無名選手を格安で招いて試合を組んでいて、JBCがこれを認定しなかったことに対する嫌がらせとも言われています。あるいは、昨年の井岡選手へのドーピング検査での不手際を理由に上げたりもしていました。
 選手招聘の厳格化は、選手の生命安全に係ることだし、ドーピング検査は本来興業主催者側が実施すべきことです。ドーピング検査なんて、事務仕事を請け負う素人のJBCにできることではありません。井岡選手も検査の不手際に文句をつけるなら、自分(興業側)でWADA系列の検査機関に高い検査料を払って実施すればいいんです。本来自分たちがやるべきことをせず、已む無く対応しているJBCに文句をつけている構図に見えます。

 今回の試合の件は、非ボクシング興業に関わった木村選手に問題があるんです。JBCはボクシングの適正運営を保持する方針を出していて、これを遵守することがボクシングのステイタス維持にも繋がります。
 ボクシング関係者は亀田一家の無法行動をボクシングを貶める行為であると散々批判しましたが、木村選手のやったことも同根なんです。しかも、木村選手はJPBA会長である花形進氏のジム所属選手なんです。花形会長もJBCにいちゃもんをつける暇があるなら、今回の件について厳正な対処をすべきです。

 非ボクシング問題は、井上選手も参加した今年2月のチャリティーイベント「LEGEND」でも物議を醸しました。チャリティといいながら、出場選手たちはギャラを受け取り−特に井上選手が高額だったそうです。寄付について記者が質すと主催者側は答えられず、後で選手たちに寄付を依頼し、興業に関わった病院に50万円を寄付したそうです。寄付金総額は910万円集まったそうで、東日本ボクシング協会が配布先を決めたそうです。どこに寄付したかは知りません。なお、ギャラの総額は5千万円だったそうで、いささか不誠実なチャリティではないでしょうか。

 この興業は「LEGEND」なのでボクシングのプロモーターライセンスがなく、試合形式もヘッドギアをつけたり外したりで場当たりというべきです。しかも、「東日本ボクシング協会が協力」と発表していたものの、実は東日本ボクシング協会加盟ジムが興業の不適切さについて、文書抗議していたそうです。

 興行参加について、OBはいいとして、現役の井上選手や比嘉選手がペナルティなしのままでいいんですかね。普通に考えたら、井上選手に国内試合停止処分が下されてしかるべきかと思います。井上選手自身が、これまでボクシングの正統性と強敵との邂逅を強く訴求していただけに、言うこととやることが乖離しすぎです。

 木村選手が外国の怪しげな興業に出場したことについて、ピント外れな報道記事ばかりです。試合ルールがどうだとか以前に、出場したことそのものが大問題でしょう。JBCが認定するボクサーに相応しいか、資格を厳しく問うべきかと思います。

 断片的な聞きかじりばかりなので、伝聞ばかりを書き連ねています。違っていたら訂正します。
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参拾八    伊藤かずえ氏が羨ましい(2021/12/20)
 今年の春から話題になっていた伊藤かずえ氏の愛車レストアが12月に完了したそうです。詳細は日産がPRを兼ねて「伊藤かずえさんのシーマ レストアの取り組み」に掲載しています。

 7か月間のフルレストアで、「ディスカバリー傑作選 名車再生!」の凄腕エド氏も真っ青のお手入れです。
 さすが日産本社肝入りとあって、下請けも巻き込んでいますから、中古パーツ手配や部品リビルドはお手のものでしょう。しかし、#13や#21からすると、ゴムや軟質樹脂系パーツはフルカスタム補修と思われます。それらは根本的に経年劣化を免れませんから、中古パーツそのものが使いものになりません。材料から、ひとつひとつ加工しながらフィットさせるしかないでしょう。エド氏もよくやる手法です。

 修理で一番簡単なのは、新品への交換です。旧車修理が難しいのはストック部品がないため、中古部品や近い部品を加工して流用し、なければワンオフ加工と手間のかかる対応が求められることです。単純な部品交換で済まないと、人件費(技術料)が人月計算でトンデモないことになります。伊藤氏のシーマも、まともに請求されたら新車価格をはるかに超えることでしょう。

 中古部品が入手困難で、修理に困る筆頭がエアコンです。私も25年目くらいから効きが悪くなり、数年前に修理しました。中古パーツ交換でも足らず、メーカーへ送ってカスタムパーツで修理完了となりました。新品全交換より高くつきました。とはいえ、新しいエアコン装着は無理があり、旧車レストアの際の鬼門となっています。
 オゾン層破壊が問題となり、冷媒ガス変更にともなってパーツの互換性がなくなったそうです。冷媒ガスについては、どこの修理工場でも廃車から抜き取ったりで旧フロンを確保しているでしょう。

 シーマの全塗装についても、レストアとしては高度(高額)な補修を行っています。部品レベルでサンドブラストで汚れを落とすという徹底ぶりです。
 エンジンから排気系、駆動系まで一旦バラしたうえで、クリーニングと調整を行った模様です。同時に内装まで取り外した状態で全塗装を行ったみたいで、細部まで新車並みの仕上がりです。そこまでの全塗装は、普通やりません。この全塗装だけで100万円超えコースでしょう。

 私も全塗装とエアコン修理を済ませました。また、ここ6回分の車検で、ベルト全替え、ブレーキ周辺の細かいパーツ交換、オルタネータ―交換と、制動や発電関係の補修も済ませていますから、まだまだ後10年は戦えそうです。

 トヨタさんも私のソアラを伊藤氏並みにレストアしてくれたら大感激!なんですけど。伊藤氏のシーマ31年目を超える34年目ですからね。
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参拾七    終活また一歩(2021/12/14)
 3年前に納屋を始めとした旧屋を解体撤去したのは、ひとつには身仕舞の意味があります。不要な家屋を残していては、後に迷惑がかかりますから。旧屋だけでなく、書籍を大処分し、その他物品も不要なものを片端から断舎利しました。一連の始末は退職後の二年間でほぼ片づけました。

 モノだけでなく、終活の際に重要事となるのが金融関係の整理です。いろいろな都合で作成していた口座の整理から始めました。まずは、労金と香川銀行の口座を解約しました。

 次いで、給与振込の際にサブ扱いにしていた百十四銀行の普通口座を引落し専用に転用しました。この作業は大変でした。水道、電気、全労済マイカー保険、NHK、WOWOW、NTT、中讃ケーブル(Pikara)、国保、四国新聞の振替手続きをすべてこちらへ変更したのです。まあ手間がかかりました。このうちの相当は、郵送での変更手続きが求められましたから。キャッシュカードすべての紐付けもこちらにしました。

 こうしておけば終活の最終段階では、この口座を空っぽにすれば一挙に片づく案配です。NHKの強欲受信料も拒否できますからね。また、口座の残額を一定額に抑えているので、事故に遭っても損害を限定できるので安心です。よくあるキャッシュカード被害も余計な損害を被らなくて済みます。

 例外は水利組合やPLガスなど農協関係だけです。そちらは農協の普通口座のままにしています。また、年金の振込もこちらです。農協のATMはいずこの市町村でも複数個所に設置されていますから便利です。加えて、三菱UFJ銀行とゆうちょ銀行、セブンやローソンも利用できます。百十四銀行よりATM数が圧倒的に多く、三菱UFJ銀行とゆうちょ銀行を利用できるので全国いずこであっても心強いんです。

 さらに、老母がボケ始めたこともあり、老母の口座も整理しました。百十四銀行の普通と定期ともにリフォームで費消し、残金は農協に移しました。
 先週のこと、弱っていた老母に身体がいうことを利かない状況が出来しました。これを受け、昨日のこと介護認定の手続き申し込みをしました。来週にも担当者が調査に訪問する予定です。認定を受けたら施設入所を申し込むつもりです。空き次第ではありますが、特養をと考えています。

 近い将来での入所予定もあって、同日に農協の定期口座もすべて解約し、普通口座に集約しました。これで老母の介護への体制づくりもできました。

 前述の対応をする中で、なんやかやとIDとパスワードを作成しなきゃならず、ただでさえ多いIDとPWが溢れかえっています。もちろん、頭の中に止めるのは無理ですから、ファイルで管理してるんですけど、ついにメモがA4ペーパー全面びっしり埋まりました。こういうのはセキュリティ上仕方ないといえ勘弁してほしいです。もちろん、そのペーパーにもパスワード保護をかけています。世間の皆さんもPW管理に頭を悩ませていることでしょうね。
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参拾六    今年の訃報(2021/12/8)
 例年のことではありますが、今年もまた思い入れのある方々が亡くなりました。

 9月にさいとう・たかを氏が84歳で逝去しました。最長マンガといわれる『ゴルゴ13』の帰趨が取沙汰されましたが、予定どおりというか継続ですね。喜ぶべきか悲しむべきか一概にどちらとも言えません。
 今年に入ってからでしょうか、すでにスタッフ主体の制作体制で動いていものと思われます。さいとう氏が亡くなる直前の回は、スコットランド独立をめぐるポリティカルスリラーだったんですけど、絵柄がこなれていませんでした。さいとう氏の手が入っていなかったのでしょうか、やはりレベルが落ちていました。まして、逝去後の作品はコマ割りやレイアウトが大ざっぱな印象でした。このようなレベル低下は、ご本人がいない以上どうしようもないといえ、やはり残念です。スタッフのみでの継続が一概に喜べないのはそこです。

 私が一番好きなのは、『サバイバル』です。さいとう氏を偲んでサトル少年の冒険譚を読み返します。登山中の山が離れ小島となり、そこで生活を回そうとする初期の苦闘話が好きです。


 翌10月には白土三平氏が89歳で亡くなりました。
 30余年前に手塚氏がなくなり、20余年前に石森氏が亡くなり、今年に入ってさいとう氏、続いて白土氏が亡くなったわけで、日本の漫画を創造発展させてきた巨人たちがいなくなりました。

 この巨匠たちの中でも、私は白土シンパでした。『忍者武芸帳-影丸伝-』と『カムイ伝』は金字塔かと思います。
 他にも、『忍者旋風』『サスケ』『忍法秘話』『真田剣流』『風魔』『ワタリ』『カムイ外伝』など忍者もので他を圧していました。また、青年誌のビッグコミックに連載した『神話伝説シリーズ』は、大人向けで読み応えがありました。

 『カムイ伝第二部』は連載中に突如中断したまま、なんのアナウンスもなく尻切れトンボとなりました。すでに作画を弟の岡本鉄二氏に任せていたので、本来の白土本とは趣が違っていました。それもあって、まあ仕方ないかと諦めもつきました。
 若い時分に買い揃えた白土本は、今も捨てずに取っていて、老後の楽しみとしていつか再読するつもりです。


 先月には、喜多條忠さんが74歳で亡くなりました。
 「神田川」と「妹」が好きです。フォークというかニューミュージック系作詞では、松本隆氏や岡本おさみ氏と並ぶヒットメーカーでしょう。
 私にとっても青春ど真ん中でした。高校2年のときにかぐや姫の『神田川』がヒットし、抒情派フォークが一世を風靡しました。これを受けて我がチューリップも『青春の影』や『サボテンの花』をリリースしました。人それぞれ好みもありましょうが、嫌いな方は少数派でしょう。

 ところで、某ヤンキー漫画に載っていた替え歌が洒落てました。

 あなたは ぼおぉ〜おそーぞくのかしら
 赤いマフラー直管にして〜
 二人で行ったー土曜の集会
 いっしょに ばっくれよーって いったのにー

 今やこの洒落が分かる方も少ないでしょう。50年近く前の歌ですから、もはや懐メロもいいとこです。昭和は遠くなりにけりです。
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参拾五    最近の世相(2021/11/30)
 「外国人新規入国を停止 政府、オミクロン型対応

 昨日の日経新聞の記事です。当面1か月間とのことで、細部の詰めがないままの決定とあって、おそらく特例措置について検討中のことと思います。

 となると、先週書いたボクシング世界戦もなくなるのでしょう。
 年末の村田vsゴロフキンのミドル級戦と井岡vsアンカハスのS.フライ級戦は、まず以って中止と思われます。
 井上選手のバンタム級戦は、相手のアラン・ディパエン選手がすでに入国済みなのでやれそうです。でもね、ボクシングファンたちは、この試合にまったく期待していません。30歳のタイ人で、IBF級5位、WBA8位の無名選手とあってタイ側関係者でさえ井上選手の相手ではないと認めているそうです。私の2021年は終わりました。

 普通の主婦に降りかかった『自転車で赤切符切られた話』がこわい「知らなかった…」

 これは必要なことです。この女性も今回の件で、自転車にも車輛としての責任が伴うことを自覚したでしょう。また、その責任が自動車と同等であることを知っただけでも意義があります。
 車を日常的に使用している人間は、交通法規遵守が習い性ともなっています。駄目なのは学生さんたち免許未取得者、運転しない主婦層、法令順守の規範意識が希薄なる老齢者です。彼ら、彼女らの自転車運行のいいかげんさったらないです。交通法規に縁遠いので仕方ない面もあります。学生さんたちは、学校で自転車運行教育を受けているので法規を知っています。しかし、若者の中にはクソ食らえっていう輩が一定数います。そいつらにとっては、法令を無視することもファッションなんかな。
 しかし、一旦ことあれば大変な賠償責任を背負うこととなります。つい最近も怖いニュースがありました。学生さんが自転車で老齢歩行者を転倒させ、死亡させたんですね。数千万円の賠償が突きつけられることでしょう。自転車でいいかげんな走行をしている方は、対人の保険契約をしておくのが身のためです。

 EV補助2倍の最大80万円、米欧並み水準 政府が支援

 一週間前の日経新聞の記事で、かつての農業関係補助金も真っ青です。
 EV所有のメリットがあれば、必然的に購入も進捗するでしょうに。中国がEV補助を国と地方の二階建てで推進したのは、大気汚染への急迫した事情があったのと、劣位にある国産自動車産業へのテコ入れだったわけで、日本にその必要性はありません。

 脱炭素に向けてのEV促進なら時期尚早です。給電インフラがまったくといってほど未整備の状況でEVを買わせてどうしようっていうんでしょうか。また、電力需給が逼迫気味なのに矛盾してもいます。そしてさらに、バッテリーを巡る環境問題には完全に目を瞑っています。EV所有への環境が整備されたうえで補助推進するなら説得力もあるんですけど。
 2030年代後半くらいで、脱炭素への半強制的な指導に対するインセンティブとして検討するくらいの話じゃないでしょうか。 結論として、まったく無駄なバラ撒きです。
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参拾四    村田選手正念場(2021/11/20)
 WBA世界ミドル級スーパー王者村田諒太選手とIBF世界同級王者ゲンナジー・ゴロフキン選手が、12月29日にさいたまスーパーアリーナで統一戦を行います。

 ボクシングファンの間でも、「待ち焦がれた一戦派」と「退職金狙いの卒業試合に興ざめ派」に分かれています。
 ボクシングファンに国粋感情はあまりありません。どこの国の選手であろうと、高い技術を持ち、スピリット溢れる闘いをすれば誰であろうとも称賛します。たとえ日本人選手であろうが、卑怯、インチキ、逃げ姿勢だと普通に嫌われ、対戦相手の海外選手を応援さえします。

 すると村田選手は、いろいろ感心できないんです。帝拳ジムは政治力があるのでしょう。村田選手が2年近く試合をしていないのにも係らずタイトルが剥奪されていません。怪我とかで試合ができない場合、休養王者として棚上げし、代わりに暫定王者を立て、復帰後に両者で決定戦を行ったりします。村田選手は怪我でもないのに剥奪されず、こうやって大一番に臨めるのです。そもそも、スーパー王者への昇格も意味不明で、露骨な特別扱いをファンたちは指摘し続けてきました。

 村田選手は昔からゴロフキン戦かアルバレス戦を希望していました。ビッグマッチを目指すのはよいことです。ビッグマッチ=ビッグマネーとあって、誰でも望む路線です。しかし、言いたいんです。ビッグマッチを希望するなら、まずは自分自身が立ち位置に相応しくなるようキャリアを積むべしと。
 今のところ村田選手の世界的な評価は、凡庸な王者というものです。アメリカのプロモーターであるボブ・アラム氏が金メダルの村田選手に肩入れし、ラスベガスでメインエベントに迎えました。ところが、ここで一方的な大差判定敗けを喫し、以後は引き籠っちゃったんですね。

 ボクシングファンたちは、村田選手が自身の価値を高めるべく強敵と対戦することを切望してきました。しかし、なにもしなかったんです。ジャモール・チャーロ選手(32戦無敗)あたりと闘って勝ち上がれば、ゴロフキン戦やアルバレス戦への興味も世界レベルで期待されます。チャーロ選手とまでいかなくても、マット・コロボフ選手(33戦28勝4敗1分)、セルゲイ・デレブヤチェンコ選手(16戦13勝3敗)、クリス・ユーバンクJr選手(31戦29勝2敗)、ハイメ・ムンギア選手(36戦無敗)など声望を高めるに相応しい対戦相手はたくさんいます。
 強敵と闘うとなると、相手のボクシングを分析して勝つための練習を積みます。これを重ねることによって技術が磨かれ、ボクシングの幅が広がります。そして、経験値が高まって実力が付くものです。
 でありながら、上に書いた強敵たちの誰とも闘わず、いきなりのゴロフキン戦なんです。強豪たちと闘ったら、多分敗けるんじゃないかと想像します。敗けたらビッグマッチに辿り着けません。それを避けるための不戦だったのでないかと邪推するわけです。

 いえ、いきなりゴロフキン選手と闘っても問題ありません。ただし、その場合は安いファイトマネーに甘んじるしかありません。有象無象のボクサーとして挑戦するなら仕方ないことです。誰もがビッグマネーを提示されるに相応しくなるよう、自身のキャリア向上を目指すものです。村田選手はそこのところをスルーしているんです。決定戦で戴冠し、大したキャリアを積むことなくスーパー王者に昇格するという、説明のつかない経歴なんです。

 上に書いた強敵の一人とでも闘っていたら、ファンの見る眼や期待も違っていたでしょうに。仮に敗けてもいいんです。そこから再チャレンジすればいいんです。現に、ハッサン・ヌジカム選手やロブ・ブラント選手に敗けての再戦勝利を飾っていますから。けど、強敵とはやらないんですね。せっかくのミドル級の逸材でありながら強敵とやらず、ビッグマネー狙いのゴロフキン戦をのみアピールする姿は、あまり見映えのよくない景色でした。
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参拾参    イシクラゲ退治(2021/11/16)
 納屋を解体撤去した後には、花崗土を入れて整地しています。当然のこと、時間の経過とともに雑草が生え出し、日々草抜きに興じています。賽の河原というか、草抜きはゴールのない苦行です。
 2年ほど前から黒い干からびたカスのようなものが表土に生じ始めました。乾いたそれはカサカサで、正体も分からず取り除いて燃やしていました。先月のこと、ネットの記事でイシクラゲと知りました。こんな具合に汚いことこのうえなしです。



 よく雨上がりの校庭や畑で見かける謎の黒いやつの正体が分かってびっくり「これ生き物だったのか!」

 まさかの植物だったんですね。これが整地した敷地内一体に繁茂し、せっかくのきれいな花崗土も今や黒く薄汚れています。原因が分かれば対策です。検索すると、真っ先に「コケそうじ」が表示されます。
 近在のホームセンターや農業資材店を回っても少量のスプレータイプしか置いていませんでした。仕方なくリンク先から通販で買いました。2L濃縮を1ケ買ったものの、まったく足りなかったので2ケ追加注文しました。
 10月末日に雨上がりを待ち、まずはショウロで撒いたものの、これは失敗でした。液剤が出過ぎて、散布しにくいんです。そこで、2回目と3回目は噴霧器で散布しました。噴霧器が正解です。無駄なく均一に撒けるし、念入りに撒くにも加減が容易です。

 先週の雨上がり後に2回目、そして本日のこと3回目を散布したところです。すでに、一部が枯れ始めています。下図のように黄色く変色するので判別し易いです。



 変色はごく一部だけで、すべて枯れるものか疑問です。枯れるには長い時間がかかるそうで、当分様子見ではあります。しかし、確実に枯らせるには、何度も散布する必要があるそうなので、次回の雨上がり後に4回目を散布する予定です。
 イシクラゲは耐久性というか抗堪性が半端ないそうで、乾燥あるいは半乾燥状態だと仮死状態で、薬剤をまったく受けつけないそうです。雨に濡れると柔らかくなって活性化し、そこで初めて薬剤を吸収して効果が出るそうです。

 「コケそうじ」2Lタンク1ケを残しているものの、これではイシクラゲ完全退治には足りそうもありません。もう2ケほど追加購入する必要がありそうです。なお、水を含んで戻すとワカメそのものです。土壌がきれいなら、食べるのも可能だそうです。
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参拾弐    韓国映画三たび(2021/11/6)
 これまで韓国映画の秀作を紹介してきました。
 九百九拾九  大作延期中は韓国映画で(2021/2/27)
 弐      韓国映画がクール(2021/3/21)
 その後もWOWOWが話題作を放映してくれるので、変わらず楽しませてもらっています。韓国映画って大したものです。

 長く国家権力に抑圧されていた過去もあり、権力機構の理不尽さをテーマにした作品が多くあります。ここ半年の間にも、評判の作品がたくさん放映されました。

 『権力に告ぐ
 “ローン・スター事件”を下敷きにしているそうです。同事件を素材にした『ブラックマネー』もあるそうで、これも、いずれ観たいと思います。金融機関の売却にまつわる不祥事を検事が追及する話です。権力構造と一体化した経済事犯なので、そう簡単にハッピーエンドにしてくれません。やはりといった裏切りもあり、モヤモヤが晴れないんですね。韓国の現実を踏まえると仕方ありません。

 『インサイダーズ/内部者たち
 政治と経済界とマスコミと暴力組織とが一体化した権力構造の腐敗を描いています。こちらは完全フィクションなので、気持ちいいエンディングを迎えています。検察官と裏社会の人間が手を結ぶという『悪人伝』にも似た内容です。悪役たちの卑劣さに鬱憤が溜まりに溜まりますから、ラストでの決死のどんでん返しに溜飲が下がります。

 『殺人の告白
 時効を控えた連続殺人事件の被害者遺族たちと刑事が、犯人に壮大な仕掛けで挑むエンタメです。馬鹿馬鹿しい話なんですけど、エンターテインメントとして私は大肯定します。

 『ノンストップ
 コメディアクションです。ストーリー、アクション、会話、演技に破綻がないので安心して楽しめます。もはや日本は、このレベルの映画がつくれない模様です。
 なお、ハイジャックものはいろいろあります。リーアム・ニーサンの『フライト・ゲーム』、バンパイアものの『Blood Red Sky』、ジョディ・フォスターの『フライトプラン』など名作が多々あります。ハイジャックものの面白さというのは、逃げ場のない閉鎖空間という制限事項があるので、それを活かした工夫が求められるからだと思います。ところで、あまり知られていない『パニックフライト』が隠れたお薦めです。

 『哭声/コクソン
 韓国では極めて評価の高い映画だそうです。國村隼氏が不気味な異邦人役で出演し、その演技もまた高評価を受けました。
 あまり、この手の映画は好きでありません。『殺人の追憶』と同じで、いわゆる投げっぱなしのストーリーです。辻褄を合わせる気がないので、いくらでも不可思議な事象や呪術を詰め込めるんですね。いわば、『エヴァンゲリオン』と同じやり方です。

 『ザ・ソウルメイト
 マ・ドンソク兄貴が器用に役をこなしています。

 『ハロー!? ゴースト
 上と同じ幽霊と生きた人間とが織りなすハートフルドラマです。

 『感染家族
 ゾンビコメディです。競ってゾンビに噛まれようとする村人たち。一体なぜなのか、観てのお楽しみです。

 『王になった男
 ドラマでも大ヒットしたそうです。入れ替わりの影武者が善行に励むという、よくある話です。
 アメリカ大統領の影武者の活躍を描いた『デーブ』にインスパイアされたものと想像します。怜悧だった大統領が、なぜかハートウォーミングな行動で周囲から認識を改められるシーンが素敵です。
 日本映画の『記憶にございません!』は少し趣向を変え、記憶喪失による別人格での変質を描いています。陰湿な首相が記憶を失くして明朗な人間に変わっちゃうんですね。

 『王と道化師たち
 トリックで奇跡を演出して為政者の評判を上げようとする一味の闘いをコメディタッチで描いています。

 『タクシー運転手 約束は海を越えて
 光州事件を舞台に海外取材記者を現地に送り届け、騒擾に巻き込まれながらも取材に協力し、現地の貴重な情報をソウルまで持ち帰るために危険な逃避行を完遂する話です。帰途を助けるタクシー仲間たちの協力シーンは、トラック野郎のあのシーンまんまです。

 全般的に突っ込みどころが多いものの、許せるんですね。例えば、『タクシー運転手 約束は海を越えて』はシリアスな話なのに、トラック野郎のノリだったりしますから。でもね、それが映画熱が充実している証しなのでしょう。変にこじんまりせず、エンタメとしての生気が溢れているんです。邦画からは、すでに失われた空気です。
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参拾壱    衆議院選挙は面白イベント(2021/11/2)
 私が一番心待ちするイベントはボクシングのビッグマッチです。それに続くものはなにかと問われたら考え込んでしまいます。柔道の五輪や世界大会も楽しみです。フィギュアのトッププレイヤーにも感動させられます。で、一昨日の衆議院選挙です。

 子どもの頃は結果を知るだけで十分でした。中選挙区制の55年体制だと、なにも変わりようがありませんから、興味の持ちようもありませんでした。これが一変したのが、中選挙区制導入と細川護熙氏率いる日本新党の躍進とこれを担いだ政権交代です。ついに自民党政権にピリオドが打たれたと感慨深かったです。

 以後、自民党の復権と民主党への政権交代、そして安倍政権による再復権と政治が動きました。となると、衆議院選挙への興味もいや増します。こここのところ、開票時からTVに釘づけになってしまいます。メディア側も有権者の投票行動を把握するため、大規模な出口調査を行って投票傾向を精密に掴んで提示してくれます。

 今回は珍しく投票行動の分析に失敗し、見事に大外ししてくれました。それもまた、ドラマチックな刺激をもたらすスパイスです。私はTV東京の池上版をずっと見ていて、TV東京さんは最初から最終票に近い数字を出していました。
 結局、自民党はマイナスといえ過半数どころか安定多数を獲得し、躍進が期待された立憲民主党は大きく減勢しました。そのマイナス票がきっちり日本維新の会に移って大躍進となりました。
 維新が国政に進出したときが54票で、次の選挙で41票だったことから、今回の躍進を元に戻っただけと評する方がいますが、それは違うかと思います。橋下氏が注目を浴びた最初の選挙は、細川新党や前回の希望の党と同じで、新しきモノへの期待票でしょう。しかも、他党と合体したりの数字であり、党への信任ともいえませんでした。
 しかしながら、今回は間違いなく独自党への信任でしょう。他の野党と違って大阪ローカルといえ、実績を背景にしているだけに本物です。府や市議会を抑えていて、下部組織もしっかりしていての党勢です。

 石原伸晃氏、野田毅氏、中村喜四郎氏、辻本清美、平野博文氏らの落選、小沢一郎氏と甘利明氏、平井卓也氏もやっと比例復活できたのは象徴的でした。いずれも若い新人たちに敗れたのであって、世代交代が顕著でした。こういうのは皆が歓迎していることでしょう。
 世界の政治家たちにも言えることですが、老政治家というのはえてして長年月の間に力を各所に浸透させていて、なかなかに他者が食い込むのが難しい状況があります。今回、下剋上を成し遂げた方々は、いずれも地道な活動で地歩を築いたもでしょう。こうやって新人が食い込める余地があることを世に示したのは意義が大きいです。後に続く者に勇気を与えるであろうし、世代交代の可能性を強く感じさせてくれます。

 岸田首相は今後の政権運営に自信を持ったことでしょう。安定多数を得た実績は無視できませんし、政権の急所になりかねなかった甘利幹事長を更迭できました。しかも、これは本人の責任による辞任という、傍から文句をつけられようもない仕儀ですもの。
 なんだかんだ岸田首相は幸運に恵まれました。前回の自民党総裁戦で恥をかいた分、地道に研鑽を重ねたものと想像します。こういう幸運は、実は貴重なんです。決して運否天賦を信じるものではありませんが、悲運よりかは歓迎すべきことです。
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参拾     円高のままにデフレ脱却は無理でしょう(2021/10/25)
 為替の高低を論ずる際は、必ず長短を語る必要があります。為替は“行って来い”ですから、そのもたらす影響には必ず長短があります。最近の燃料費高騰を受け、円安を問題視する向きが声を強めています。これこそが円高メリットを謳う方々の特徴で、短期的視点に立ってものごとを論じています。

 長いことデフレ脱却が叫ばれ、物価安はいいとしても、日本の賃金の安さが厳しく問われています。「平均所得の推移を国別でグラフ化」を見ると、2013年あたりからOECD平均を下回り始め、今や韓国にも迫られている状況が明らかです。次頁に掲載されている「1997年の平均所得」を見ると、世界第三位の高水準にあるだけに、その凋落ぶりが哀れを誘います。

 同頁下に、「2000年を基準にした、各国の平均所得の成長率」が掲載されており、日本以外のすべての国が右肩上がりの成長なのに、日本だけが横ばいあるいは下回っているのが示されています。

 一体原因はなんなのでしょうか。経済のことは分かりませんが、日本の賃金の安さが円高と無関係とは思えないんです。賃金だけでなく、外食費の安さ、各種サービスの安さといい「安いニッポン」に落ちぶれています。かつての日本は「高いニッポン」と呼ばれ、「東京の生活費は世界一高く、暮らしにくい」と批判的に捉えられていました。
 そもそも「高いニッポン」に円高が加わったのが衰退悪循環の始まりであったのは誰もが知っていることです。円高進行にともなって、日本の価格競争力が急速に失われ、世界的にもコスト劣位となりました。でありながら、円高を容認し、円安を危機と捉える向きはなんなのでしょうか。

 円高による人件費圧縮圧力は厳しいものでした。円高進行に伴う製造業の人件費切り詰めが、「絞った雑巾をさらに絞る」とか諦観とともに語られました。逆に、輸入品の低廉化進行に伴って国内競業者もまた価格切り下げを強いられました。
 そのような事業者の苦闘もあって、労働組合も変質してゆきました。御用組合とばかり、経営側と歩調を合わせるスタイルが一般的となり、世間も特に疑問を呈さなくなりました。雇用を優先するとなると仕方ないことといえ、賃金低廉化は避けられませんでした。まさに、「安さに甘んじるか廃業か」です。人々の生活を考えたとき、事業展開が難しい業種は廃業一択だ、などと斬って捨てるわけにもいかないでしょう。

 台湾TSMCとソニーとの合弁工場を熊本に建設することが決まりました。この件には、日本側の持つ将来技術とTSMCの世界最先端と云われる微細技術とがシナジーを発揮するとの期待があるとされています。8,000億円ともいわれる総投資額のほぼ半分を日本政府が融資するそうです。仄聞するところでは、今の為替ではコスト劣位から逃れられず、まともに競争できないそうです。そのために日本政府が巨額融資で誘致したそうです。本当かどうかは知りませんけど。

 今日の為替レートは、ドルが113円強で、ユーロが132円です。円安傾向だそうですが、コスト劣位を跳ね返すにはまだまだ不十分です。とはいえ、凌ぎやすくなったのも事実で、今後の為替推移次第ながら、光明も見え始めたと思われます。
 中国が製造大国を背景に覇権大国となった現状に対抗するに、半導体という重要サプライチェーンを台湾と韓国に置くのでは安全保障の面から不十分とアメリカも考えているのでしょう。日本を重用するとなると、デフレ最大要因が円高由来だと知悉している以上、円安にも目を瞑るものと考えます。

 円高によるメリットも当然のことありましょうが、長い目で俯瞰すると、今日まで空っぽの日本が着々とでき上がってきたわけで、放っておけば今後さらに進行するでしょう。これを食い止める処方箋として、円安を抜きには語れないでしょう。
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弐拾九    ビートルズ解散経緯が再度クローズアップされてます(2021/10/21)
 半世紀前のビートルズ解散は世界に衝撃を与え、今なお人々の興味を惹いています。
 ポールが今月末放送予定のBBCのインタビューの中で、ビートルズの解散を引き起こしたのはジョンだと語っているそうです。ジョンが「ヨーコと新しい人生を歩んでいた」「常に脱退を考えていた」とのことです。

 また、つい最近のこと、解散直後にジョンがポールに送った手紙がオークションに出品され、その内容が話題にもなりました。ポールの妻であるリンダをボロカスに貶す内容だそうです。互いに相手の妻を敬遠し合っていたのがよく分かりますね。

 ところで、解散についての大方の感想は、最初に脱退したのはジョンにしろ、一番の原因はポールにあると見てるんじゃないでしょうか。解散の少し前頃を記録した映画『Let It Be』から、いろいろな様相が見て取れます。この映画を観たのは学生時代なので、もはやうろ覚えですけど。

 映画全編を通じて、ポールが他のメンバーと一緒に音楽を作り上げることに嫌気が差しているとの印象を受けました。特にジョージに対して厳しいというか、完全に見下ろしていましたね。スタジオに早めに出ていたジョージがリンゴに「Octopus's Garden」のピアノ・アレンジを楽しそうに聴かせました。で、次のシーンは見るのが辛かったです。
 戸口で聴いていたポールが、コートに手を突っ込んだまま冷たく言い放ちました。
 「今のは一体なんなんだ」
 「ちょっと遊んでいただけじゃないか」
 ジョージは上目遣いでおどおどしながら言い訳していました。

 別のシーンでもポールがジョージに対して、容赦ない指摘をして険悪な雰囲気になりました。ジョンがポールを「いいかげんにしろよ」とたしなめて終わりましたけど。

 とにかくポール主導のバンドになっていて、他のメンバーとの間に人間的温かみが感じられませんでした。もはや一緒にやっていくのは無理だなって納得させられます。

 また、「The Long and Winding Road」のアレンジを巡って揉めたとも言われています。この件についてはポールに同情します。フィル・スペクターがオーケストラと女性コーラスを入れようとして、トラック数が足らなかったためにポールのボーカルトラックのひとつを勝手に消したんですね。後で了解を求められたとき、すでに他の3人がOKを出していたので受容せざるを得なかったんですね。ポールはオーケストラのレベルを下げさせて妥協しましたが、憤懣やる方なかったでしょう。ポールが得意としているピアノ主体のバラードの方が、絶対この曲には相応しいです。オーケストラも合唱も余計です。
 各種録音テイクが発掘されていて、次のリンクがオーケストラや女性コーラスのない生テイクです。いかがでしょうか、こちらの方が素敵でしょう。
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弐拾八    習近平政権が末期症状(2021/10/12)
 先週9日に北京で「辛亥革命110年記念大会」が開催されました。
 続く翌日には、台湾で「双十節(中華民国の建国記念日)」祝賀式典が開催されました。

 辛亥革命110年記念大会において、習近平国家主席が「台湾独立勢力は統一の最大の障害だ。祖国に背き国家を分裂させる者は、必ず人民に唾棄され歴史の審判を受ける」と蔡英文総統を指して牽制しました。

 台湾が中華民国なのに、辛亥革命を顕彰する場でそれを言うと聞こえが悪いです。辛亥革命は清朝を打倒して中華民国建国を宣したわけですから。なりふり構わぬ印象で、2期10年の国家主席任期を延長し、第3期目を狙う習氏の焦りも感じられます。

 その前日には、民間企業の報道事業禁止案を公表したそうで、この改革案からも習政権が窮している様子が窺われます。禁止案は概ね次のような内容です。

 民間企業が新聞やテレビ、ネットニュースを運営する組織に出資して経営することを認めず、実況中継なども許さない。
 民間企業に新聞、通信社、出版、テレビ、ネットニュースなどでの取材・編集を認めない。
 政治、経済、軍事、外交、重要な社会問題、文化、科学技術、衛生、教育、スポーツなどのほか、世論を導く実況中継を手がけることも許さない。

 辛亥革命記念日の近辺で発表するのも悪手かと思います。辛亥革命が謳う三民主義にそぐわないし、むしろ逆行する内容ですから明らかにミスマッチです。
 報道統制の強化を目指す背景として、現在取り組んでいる共同富裕を目指した経済構造見直しが上手くいきそうにない、いえ大失敗となりそうな状況から、情報を制限しないと持たないと看做しているものでしょう。

 地方政府の錬金術は土地開発を元にしていて、中国発展の根源でもあります。しかし、ついに行き止まりが見えてきました。大きなニュースになっている不動産事業破綻について、難しい対応が迫られます。
 恒大集団の負債総額30兆円以上とかいう経営危機は普通じゃありません。恒大集団だけでなく、同業他社にも似たような状況があるうえ、破綻の連鎖も起こるでしょうから。

 また、共同富裕政策が発表されると、巨大IT企業が中小企業の支援や雇用促進のためとして巨額の投資を発表しました。
 まず、IT大手のテンセント(騰訊控股)が8月中旬に約1兆7,000億円を投じると宣言しました。
 動画投稿アプリ「TikTok」を運営するバイトダンス(北京字節跳動科技)創業者で前CEOの張一鳴が、教育基金として個人で約85億円を寄付すると発表しました。
 9月初旬にアリババも約1兆7,000億円を投入する旨を公表しました。
 テンセントとアリババが投ずる金額は、テンセント社の今年上半期(1〜6月)の純利益、アリババ社が持つ流動資産の5分の1に相当する額だそうで、単なる寄付で済ませられないレベルの額です。

 今年4月、アリババグループに対して独占禁止法違反で約3,050億円の罰金を科した前例があり、政府の本気を疑う者はなく、大手各社は素早い対応を見せたものでしょう。ちなみにアリババへの罰金額は、2015年に米クアルコム社に対して同じく独禁法違反で科した過去最大の罰金額約1,100億円の3倍にもなります。

 さらに、セレブの象徴ともいえる芸能人も摘発のターゲットとされました。
 3年前、トップ女優の范冰冰(ファン・ビンビン)氏が約146億円の罰金・追徴税を科せられたのが衝撃的でした。彼女は当局に拘束され、その間の消息を誰も知ることができないという怖さでしたから。
 人気女優の趙薇(ビッキー・チャオ)氏は、8月に親日的と世間から批判を浴びたため、その名前が動画配信サイトから削除されました。これは自粛といわれています。
 同じく人気女優の鄭爽(ジェン・シュアン)は、テレビドラマの出演料を巡って脱税したとして、追徴課税など含め約51億円の罰金支払いを命じられたそうです。

 市場や投資家は、共同富裕が中国経済の先行きを曇らせているのでないかと懸念しています。習政権側もこの政策が引き金となり、経済にダメージを与えるであろうことを承知しているでしょう。
 民間企業の報道事業禁止案は、近い将来に起こるであろう混乱への対策ではないかと想像します。
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弐拾七    EV車が招くもの(2021/10/5)
 先週のCS放送「CATCH THE WORLD」から「中国で続々出現 EVの墓場}です。

 幾度か見かけた光景です。一昨年だったかにシェア自転車の巨大墓場が驚かせてくれました。規模が大きい中国ならではではあります。しかし、決して中国だけの景色でなく、先進国もひとごとではありません。

 今の先進国メーカーの車は、ボディ剛性が抜群で鋼板の防錆能力も高いため、10年落ち、あるいは走行15万キロ辺りだと消耗品メンテさえすれば現役バリバリです。当然のことEV車も長く乗ることができますし、車体下部にバッテリー収納区画を設けているので、むしろガソリン車より車体強度が高いくらいです。

 長く乗るためにはバッテリー交換が必要で、15〜20万キロで大きな出費が強いられます。負担額は容量(航続距離)次第で、50〜200万円といわれています。その高額負担を前にして、ユーザーなり車屋なりはどう対応するのでしょうか。バッテリーを交換するか買い替えるかで悩むでしょう。車屋にしても、高額のバッテリー交換はリスキーなので、むしろ要交換のまま格安で売るケースが多いそうです。

 今の車は車体そのもののが頑丈で劣化がなく、消耗品のメンテで蘇ります。EV車のバッテリー交換は、エンジン車に例えるとエンジンそのものの載せ替えに相当します。いえ、下手すればそれ以上の負担ともなります。
 電池のドラステックなコストダウンと環境負荷の小さい処分方法が実現しないうちは問題が大きすぎます。今のところ、状況を好転させる材料は見当たりません。技術革新によってエネルギー密度は高められるでしょう。リチウム電池は画期的な電池で、エネルギー密度がニッケル、アルカリ、鉛などに比べて2〜5倍も高められています。しかし、安定、安全に使用するため難しい設計が求められ、制御面でも精密なコントロールが求められます。コストが高くつくのも無理ありません。
 リチウムに代わる新しい電池が開発されても、やはり同様により高額になることが予想されます。また、需要拡大にともなって処理問題が無視できなくなります。今後、環境負荷が圧倒的に大きくなるのは間違いないです。

 エンジンだと、プラグやベルトの消耗品交換、スラグ除去、あるいはガスケット、オイルスイッチやOリングなどを交換すれば蘇ります。ところが、エンジン交換を迫られたら、さすがに修理してまで乗り続けるでしょうか。高級車ならいざ知らず、大衆車をわざわざ高額修理するなんて普通はしないでしょう。

 EV車普及を語るには、バッテリー問題が避けて通れません。今のところ、EV車は間違いなく反エコです。
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弐拾六    ニュースから美術関連に思いを致す(2021/9/28)
 先週のPRESIDENT Onlineの記事です。
 「論文ランク1位は中国」ノーベル賞常連の日本が貧乏研究者ばかりになってしまった根本原因

 企業業績が沈滞し、ものづくり第一線から大きく後退した状況なので、研究開発部門縮小と予算縮減は当然ともいえます。また、大学経営が独立行政法人化によってシビアな査定下にあります。すべて人口オーナス国家のあり方として致し方ないのでしょう。

 次の内容には些か首をかしげます。

 大学の中には「結局は東大や京大などにお金が回るだけで、ウチは関係ない」と冷めた見方も広がる。
 欧米の大学が寄付金などの自己収入によって大学ファンドを形成しているのに対し、日本は税金頼りでスタートする。


 上のように宣う大学の先生が、恵まれているとされるアメリカの環境を受忍できるでしょうか。
 外部から研究を受託すれば資金が大学に支払われ、受託できない先生は頸が寒くなるそうです。また、世間の名声を得れば、学生集客の価値があるので安泰だそうです。資金を潤沢に集める先生は、スタッフも充実でき、資材も充実しますから、さらに研究成果が上がります。
 そんな具合に、アメリカの大学の先生ってシビアな集金競争に晒されていて、口を開けて待ってるイメージと違うかと思います。多分、日本の大学の先生たちは、そういのを望まないかと想像します。

 これが美術系となると、東京藝大一強だそうです。たしかに予算が桁違いなんでしょう。大学が美術館を運営し、学生の自画像5000点近くを収蔵するとともに、卒業制作を始めとして在学中の優れた作品を買い上げたりで、他校からすると羨望極まりなしです。
 買い上げ作品の中でも、横山大観の「村童観猿翁」や青木繁の「黄泉比良坂」は、これが学生の作品なんかと驚かされます。買い上げにも納得です。

 実習棟には、ボストン美術館から寄贈された貴重な石彫像がずらりと展示されてるし、昔は狩野芳崖の「悲母観音」が普通に飾られていたそうです。「ぶらぶら美術・博物館」でゲスト解説の山下裕二先生が「学生時代に毎日見ていて飽きた」とか腹立つこと言ってましたもの。「非母観音」は好きな絵の一つです。未だ実見できおらず、山下先生の台詞には羨ましさしかありません。


 先週のYAHOO!JAPANニュースの記事です。
 論文指導をラブホで…美術評論界トップの上智大教授が肉体関係をもった教え子から訴えられていた

 美術評論家連盟会長の林道郎・上智大学国際教養学部教授(62歳)が、大学時代の教え子から性的関係を強いられたとして損害賠償請求訴訟を起こされていることがわかった。

 上智大学「本件については個人間のことと認識しておりますので、大学としてコメントは控えさせていただきます」


 上智大学のコメントは、まるで白痴かと思わせます。先生(指導教官)が生徒(院生)を公務(出張)に同伴させ、関係を結ぶことへの判断を示せない大学ってないわあ。上智大学って、業務所掌で生徒を嬢扱いするのを許容してるのかな。

 美術評論家といえば、瀬木真一氏が好きでした。もう亡くなってしまい、ポスト瀬木を誰が務めているかも知りませんでしたが、まさかのセクハラ男だったとは。美術批評家連盟会長とかの肩書はともかく、評論活動の実績については、トップというには些かショボく見えます。ポスト瀬木にはほど遠そうです。

 某恩師が瀬木氏と対談本を出したことがあり、同じ教え子の友人が買ったのを流し読みして笑っちゃいました。語るのは瀬木氏ばかりで、恩師は相槌を打つのみでした。対談の体を為していなかったものです。
 友人と、これは箔付けを狙った出版で、瀬木氏に結構な謝礼を払ったんだろうとか邪推しました。トップ評論家ともなれば、こういう余禄もあろうかと世の中の仕組みに気づかされました。などと、私たちの心が汚れているだけなんです。 
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弐拾五    最近の世相(2021/9/21)
 政府は品格を

 先週のニュースで、共産「暴力革命」変更なし 志位氏、デマ攻撃と非難 政府見解 が情けなかったです。

 加藤勝信官房長官は14日の記者会見で、共産党の「いわゆる敵の出方論」に立った暴力革命の方針について、「変更ないものと認識している」と改めて政府の立場を説明した。

 政府がこんな見解をわざわざ表明する必要がありますか。政府には公明正大さを保っていただきたいです。それがひいては国家への信頼に繋がります。為政者には、“国家の品格”を保持すべく努めてほしいです。

 なお、昭和50年頃のことでした。社会党左派の向坂逸郎氏に「諸君」がインタビューし、その発言が物議を醸しました。概ね次のような趣旨でした。

 社会主義政権では、政府が無謬なので反政府的な言論、政府批判は許されない
 社会主義政権が誕生すれば、軍備は当然のこと必要なものである

 当時の社会党の非武装中立論を木端微塵にする凄い受け答えでした。
 共産主義政権は労働者の前衛であり、労働者による独裁−プロレタリアート独裁なわけで、行動する人民の直接民主主義とされています。必然的に、そこには人民の批判が存在しないという理屈なのでしょう。
 向坂氏は己の主義主張に対して、実に忠実というか誠実な態度を貫いたわけです。ただ、世間からすると、「なんじゃそら」ですけど。

 総裁選は庶民のエンターテインメント

 自民党総裁選がお茶の間を楽しませてくれています。メディアは連日その帰趨を報じ、最高のネタ扱いしています。それもこれも、国民の側に大きな興味があるからでしょう。となると、野党は辛いでしょうね。世間の関心が与党にばかり集まり、その余波を引きずったまま衆議院選に突入するわけですから。

 その総裁選に4候補が出揃ったことから、個人的な感想を書きます。
 岸田氏は経験豊富でしっかりした方だと思いますが、喋りの拙さが残念です。「えっと」「え〜」「ん〜」が多すぎます。これを止めれば、まったく違った印象になるでしょう。昨年来、コロナがらみでTV出演することが多く、その際の喋りがこれでした。話していることはまともなのに、「えっと」「え〜」が鼻について聞き苦しいんです。
 先週からの岸田氏は、メディア対策として喋りを改めています。たまに「え〜」が挟まれるものの、大幅に歯切れ良くなっています。

 高市氏については、どうしても「セキュリティー(自存自衛)の為の戦争だったと思う」が引っかかります。一部の層には大受けでしょうけど。総理に選ばれることもないでしょうから心配していませんけど、首相が昭和史を曲解するなんて国の恥です。高市氏も承知の上で保守票への阿りと想像します。本当に理解していないなら、ただの馬鹿です。

 河野氏が首相になると、菅氏の官僚恫喝路線の継承になるのでしょう。人の話を聞かなさそうで、舵取りを任せたくないです。


 歴史に学ぶは嘘

 中国Z世代が傾倒する毛沢東 格差への怒り、政府も警戒

 懲りないんですね。もちろん文革や国づくりにおける悲劇は承知なのでしょう。承知の上で、社会をガラガラポンする渇望があるものと想像します。とはいえ、結局そういうのは悲劇に終わるしかありません。その途上、ごく一部の人間だけが権力を手にして美味しい思いをするだけです。

 毛沢東復活運動を最初に聞いたのは、薄熙来氏の件でした。
 重慶に独立王国ともいうべき権力基盤を築き、格差是正や平等・公平を訴求し、革命歌を歌わせて革命懐古ブームを巻き起こしたとか話題になりました。
 政敵を腐敗幹部として排除する手法は、文革を髣髴させるものでした。市場経済追求が平等・公平という社会主義の本質を失わせたと批判して毛沢東復古を訴えたりで、引用記事のまんまでした。もっとも、その薄熙来氏は一族こぞって凄まじい不正蓄財や殺人までやらかして、平等も糞もありませんでしたけど。

 毛沢東をかざしての批判には、政府も対応が難しいでしょう。五毛党を巧みに操って沈静化を図ったり、搦め手から圧力をかけたりの巧妙な手法で抑え込みを図ることと思います。さて、ことの帰結はどのような趨勢を辿るのでしょうか。
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弐拾四    ここまで経営者が劣化したのか(2021/9/13)
 サントリーHDの新浪剛史社長が経済同友会のセミナー(オンライン出席)で、ウィズコロナの時代に必要な経済社会変革について「45歳定年制を敷いて会社に頼らない姿勢が必要だ」と述べて物議を醸しているそうです。

 朝日新聞の記事「サントリー新浪社長「45歳定年制」を提言 定年延長にもの申す」を紹介しときます。

 新浪社長は人件費削減策について、まるで恩着せがましい変な言い回しをしています。その点が明確なのは、経済同友会が「みんなで描くみんなの未来プロジェクト」として、日経がお膳立てして発信している対談記事です。その最終回が幹事を務める新浪剛史氏で、新浪氏の考えが詳しく語られています。

 定年後も数十年の人生が待っているわけで、社員のセカンドキャリアをどう支援していくか、企業は早いうちから選択肢を用意すべきでしょう。50歳からでは遅すぎます。早くから第2の人生を考え始めれば、個人もスキルを磨いたり、交友を広げたりして、日々の生活や仕事への意欲が増す効果も期待できます。

 いやあ、すげえ内容です。ストレートに言うと「従業員の人生設計なんか知ったこっちゃない」でしょう。セカンドキャリアをいかに描くかは社員ひとりひとりが決定することなのに、社員を働き盛りで切り捨てる話を、まるでいい話かのように得々と語っています。こういうのを、おためごかしっていうんです。

 そんなに早くセカンドキャリアに移行しろとかいうなら、隗より始めよです。まずは、従業員に先んじて役員45歳定年制を実行すればいいんです。実施してみれば長短の評価が明らかになりますから、それに応じて社員全体への適用を検討すればいいんです。その手順なら説得力もありましょうけどね。

 さすがに世間の反発が強いとあって、新浪氏もいろいろ説明というか言い訳をしてるんですけど、これまた理解できる内容じゃありません。
 時事通信社の記事によると、「45歳定年制を敷いて会社に頼らない姿勢が必要だ」と前日に述べた発言の真意について、「首切りをするということでは全くない」そうです。

 その心は、新浪氏は「45歳は(人生の)節目」とした上で、「スタートアップ(への転職)とか、社会がいろいろな選択肢を提供できる仕組みが必要だ。場合によっては出戻りがあってもいい」と説明した。

 歴然とした首切りじゃないですか。出戻りがOKというなら、最初から勤続希望に応じればいいだけです。出戻りということは定年退職扱いなのに、言ってることが矛盾しています。一度退職した人間が、元の職場になにごともなく戻れるはずもありません。勤め人の気持ちを踏みにじる所業というべきで、新浪氏には人の上に立つ資格が窺われません。

 新浪氏の妄言−これが妄言止まりであれば従業員も救われるのですが−を聞くと、最近亡くなった富士通の元社長である秋草氏を想い起こします。20年ほど前に経済誌に掲載されたインタビュー記事が衝撃的でした。

 記者「就任以来ずっと下方修正が続いている。社長の責任をどう考えるのか」
 社長「くだらない質問だ。従業員が働かないからいけない。毎年、事業計画を立て、その通りやりますといって、やらないからおかしなことになる。計画を達成できなければビジネスユニットのトップを代えれば良い。それが成果主義というものだ」
 記者「従業員がやらないから、といえばそうだが、まとめた責任は社長にあるのではないか」
 社長「株主に対してはお金を預かり運営しているという責任があるが、従業員に対して責任はない。やれといって、(社長は従業員に)命令する。経営とはそういうものだ」


 あまりに有名なやり取りです。私もこれを聞いたとき、こんなのが社長じゃ社員が浮かばれないし、世間に通用しまいと思いました。ここまで世間が分っていないなら、世間に通用する事業展開ができるはずもありません。秋草氏は従業員に煮え湯を飲ませた一方で、自身は権力の座に執着し続ける醜悪さを晒し続けました。新浪氏はいかがなものでしょうか。
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弐拾参    異国情緒は観光資源(2021/9/4)
 3日前の日経新聞が報じた「中国の日本テーマ施設、営業停止 「文化侵略」批判で」です。
 昨日にもほぼ同じ内容の続報があり、そちらからポイントを引用します。

 京都の街並みを再現した複合商業施設はネット上の批判を受け、8月下旬の開業から10日余りで営業停止に追い込まれた。中国は今月3日を「抗日戦勝記念日」に定めるなど、8〜9月は特に反日感情が高まりやすい。タイミングの悪さへの指摘がある一方、日本企業からは余波が広がることに警戒感が高まる。

 営業停止となったのは、中国東北部の遼寧省大連市に開いた「盛唐・小京都」。日本の街並みや家屋を再現し、パナソニックなどの日本企業も出店している。地元の不動産会社が市政府の承認を受けて開発し、8月21日に試験開業が始まったばかりだった。「まるで京都みたい」といった声があがるなど地元での評判は上々だったが、9月1日に突如、商業エリアが封鎖された。


 中国は韓国と違って大人の風があったのに、市政府も難しい舵取りをしているものと想像します。中国でもネットの炎上騒ぎはご法度です。日本の終戦記念日の8月15日とか、9月18日の柳条湖事件などもセンシティブで、こういった騒ぎは鎮火を待つしかありません。中国俳優の張哲瀚氏が乃木神社で開かれた知人の結婚式に参加した映像や、靖国神社を訪れた写真で批判に晒されて謝罪に追い込まれました。加えて、飲料水メーカーからスポンサー契約を打ち切られたそうですし。

 また、日本政府が香港国家安全維持法の成立に「遺憾」を表明したり、今年4月に米国との共同声明で台湾の安定に言及した件も響いているものと想像します。
 ただ、今回の営業停止は事業中止でなく、取りあえずの停止でいずれ再開されるものと期待しています。

 本来、異国情緒を売り物にしたテーマパークは、何処でも観光に活用されています。文化侵略なんて言ってたら、外国の文物に親しむことができません。日本でも世界中の国々をモチーフにテーマパークが全国遍く営業しています。その昔に整理したことがあります。これ以外にもあったり、すでに廃業している施設もあるかと思います。

 デンマーク:岡山の倉敷チボリ公園(廃業)、千葉の船橋市にあるアンデルセン公園、愛知の安城市にあるデンパーク
 ドイツ:千葉の袖ヶ浦と徳島にあるドイツ村、滋賀の蒲生郡にあるブルーメの丘、佐賀の西松浦郡にあるポーセリンパーク、沖縄の宮古島市にあるドイツ文化村
 モンゴル:岐阜の恵那市にあるモンゴル村
 スペイン:三重の志摩市にあるスペイン村
 ニュージーランド:香川の仲多度郡にあったニュージーランド村(廃業)
 ブラジル:岡山の倉敷市にある鷲羽山ハイランド
 オランダ:長崎の西彼杵郡にあるオランダ村(ハウステンボス)
 カナダ:北海道の芦別にあるカナディアンワールド公園
 ハワイ:福島のいわき市にあるハワイアンズ
 オーストリア:長野の塩尻市にあるチロル村
 スイス:山梨の北杜市にあるハイジの村
 スコットランド:群馬の吾妻郡にあるロックハート城
 中国:鳥取の東伯郡にある燕趙園
 汎ヨーロッパ:和歌山市にあるポルトヨーロッパ
 中世ヨーロッパ:富士河口湖にあるオルゴールの森、江東区にあるVenusFort
 汎アジア:栃木の那須郡にあるアジアンオールドバザール
 汎世界:栃木の日光市にあるワールドスクェア

 こういうのは文化侵略でなく相互理解です。かつて日本人は上海に対する強い憧憬を持ったことがあります。日本含む欧米各国の租借地が上海にあったため、上海は西洋と東洋が同居した大都市だったのです。その文化融合ぶりは世界でも有数、いえ最大規模であったかと思います。戦前の日本人も強く惹きつけられたそうです。百九拾八 高畠華宵と中原淳一(2005/7/10) で紹介した高畠華宵にも、上海をモチーフにしたポスターが多数あり、当時の人々が思いを馳せるのに応じたものでしょう。
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弐拾弐    アフガン急迫の蹉跌(2021/8/28)
 昨日の YAHOO! Japan ニュース「なぜ空港外の人たちを退避させられないのか アフガニスタンへの自衛隊派遣について」から、いろいろ考えさせられます。問題は、なんといっても次の点です。
 退避を求める人たちが空港に着いておらず、退避希望者を運び出すことはできなかった
 相手国政権が瓦解している状況だと、自衛隊は手足を縛られた状態となり、在外邦人の保護ができないんですね。数年前の有事法制議論と同じです。日本の国防は「できること」を定めなければならず、他国が「してはいけないこと」を守る以外はフリーハンドなのと根本的に違っています。それもこれも、憲法9条の解釈運用の弊害です。

 空港内に在留邦人や現地の協力スタッフがいなかった件については、現地大使館がなにをして、なにをしなかったかを明らかにしなければいけません。外務省から時系列説明がないので、本当のところが分かりません。

 これがドイツだと詳細な動きが明示されているので、すでに各方面の責任が問われているそうです。聞きかじりの話を書きます。

 カブールのドイツ大使館「アフガン政権は早期に崩壊する」と本国に向けて警告
 ベルリンの外務省は現地からの警告を「素人の見解」と無視
 カブールが包囲されてから、ベルリンも事態の緊急性を理解
 カブール陥落から3日後の8月18日、ドイツ政府はドイツ軍派兵を閣議決定「国会での承認はあとから取る」
 空挺部隊と特殊部隊員600名がカブールに到着し、展開して米軍と共に空港と避難民の安全を確保
 機は避難民を載せ、隣国ウズベキスタンのタシケントで避難民を下ろし、避難民のピストン輸送
 ドイツ政府からビザを貰っている現地スタッフが米軍に止められて空港の中に入れない。米兵が「米国のビザを持っている者だけ空港に入れる」との命令を受けているので、ドイツのビザを持っていても空港に入れてもらえない。
 また、市内で隠れている現地スタッフは、タリバンが検問を敷いているので空港まで辿り着けない。検問で捕まり処刑されることを恐れ、パスポートなどの書類も破棄していて救助が難しい状況となる。
 ドイツ軍は2機のヘリを派遣し、空港に辿り着けない現地スタッフ、ドイツ人を市街地から救い出す計画ながら、機数が少ないので、いかほどの救出が可能か怪しい。韓国は空港入りバスに米兵を同乗させたそうで、これが正解だったようです。

 現地情勢を見誤った外務省「いや悪いのは諜報局だ」
 記者「個人的な責任を取る用意はあるのか」
 外務大臣「皆が過ちをおかした」
 メルケル首相「外務大臣を信頼している」

 ドイツにもグダグダの印象を持つところですが、日本の対応に比べたら立派なものです。外務省の怠慢と不作為があったものと想像しますが、なにぶん外務省がだんまりなので文句を言いたくても判然としないんですね。きっと、このまま有耶無耶で誤魔化しそうな気がします。

 欧州では、すでにアフガン難民に対する危惧が高まっているそうです。アフガン難民に強盗や暴力事件が多いものの、それは北アフリカ難民も同じで、アフガン難民が特に問題とされているのは、女性への性的暴行や殺人が多いことだそうです。欧州の各政府は毎月、重犯罪を犯したアフガン難民を強制送還していたものの、今後はできなくなるため懸念しているそうです。
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弐拾壱    千葉真一逝去(2021/8/21)
 千葉真一氏が新型コロナで肺炎を患って亡くなりました。健康への自信からでしょうか、ワクチンを接種していなかったそうですね。想像ですが、志村けん氏以上に社会的影響が大きいでしょう。ワクチン接種の重要性に誰もが気づかされるでしょうから。

 千葉氏こそが日本の演劇に革新をもたらしたと、すべての人間が同意するでしょう。『キイハンター』は、小林旭氏や石原裕次郎氏らの日活アクションから大きく飛躍させました。千葉氏の常識を超えたアクション、実はそれより前の『七色仮面』ですでに披露済みでした。例えば、予備動作なしでその場立ちからバク中を決めたシーンが記憶にあります。幼心にも、この俳優さんの運動神経は普通じゃないと驚きました。

 『仁義なき戦い』では、各役者がそれまでの極道映画を超えた演技を工夫していました。千葉氏は大友組組長役で、単に粗暴というのでなく、エネルギーが吹き出すような野性味を感じさせるものでした。残念ながら、後作ではスケジュールの都合から宍戸錠氏にバトンタッチしました。宍戸氏も千葉氏造形の大友像を繋いでいました。
 ちょうど韓国映画『悪人伝』主演のマ・ドンソク氏に通ずる話です。マ氏は暴力団のボス役で、武闘肉体派を演じています。世間を賑わすシリアルキラーに偶然遭遇し、ナイフでめった刺しにされるシーンに注目すべしです。ボスは内臓を抉られながらも、反撃して相手に痛手を与えます。普通だったらあり得ないんですけど、このマ氏はヘビー級の総合格闘技経験者で、分厚い筋肉をまとっています。また、冒頭で対抗組織のチンピラをサンドバックに詰め込んでミドルキックで痛めつけるシーンがあります。体重が乗った重くシャープな蹴りで、画面からも圧力が伝わってきました。頑健な巨体を有する暴力団員とあって、重症を負いながらも反撃するシーンにも説得力がありました。
 その『悪人伝』のマ氏には、大友組組長を演じる千葉氏に通じるものがあったかと思います。

 『魔界転生』ラストでの若山氏との殺陣は素晴らしかったです。ことチャンバラに関しては、若山氏がダントツですから見応えがありました。

 個人的には、『殺人拳』シリーズと『地獄拳』シリーズが好きでした。最初の頃は、ややとっちらかっていて、ブルース・リー氏みたく洗練された体捌きには及んでいませんでした。やがて、見せ方の研究を重ねたのでしょう。総決算ともいうべき『激殺! 邪道拳』の格闘シーンは、最上レベルにまで昇華されていました。本作では、筋肉への電気刺激で速い反応を得るトレーニング機器や超高速度カメラを駆使してホンマもんの凄味がありました。

 氏は極真空手の古株とあって本物の黒帯です。ハワイでの大会に出場して派手な空中技を披露しました。試合の中で跳び後ろ回し蹴りも繰り出し、当時のスポーツ誌で写真付きで報じられていました。
 千葉氏はこの試合を撮影していて、映画に活用したいと抱負を述べていましたが、結局お蔵入りしたようです。

 キアヌ・リーブ氏も空手アクション映画の熱烈なファンだったそうです。リーブ氏は千葉氏との対談で感激して、ノリノリで語っています。ハリウッドにまで影響を与えた日本人役者として、文句なし第一人者でしょう。

 なお、逝去を報じる記事で、初めてサニー千葉と知りました。昔はずっとソニー千葉だったので、長いこと勘違いしていました。
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