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八百四拾   最終作『フロスト始末』(2018/2/12)
八百参拾九  贅肉落としの難しさ(2018/2/4)
八百参拾八  『深夜のダメ恋図鑑』讃歌(2018/1/27)
八百参拾七  最近の世相(2018/1/20)
八百参拾六  駄作連発『エイリアン・コヴェナント』(2018/1/13)
八百参拾五  スレンダートーン使用開始(2018/1/5)
八百参拾四  年末恒例のボクシング祭り(2017/12/31)
八百参拾参  人生をリセットした年の瀬(2017/12/23)
八百参拾弐  自動運転の難しさ(2017/12/17)
八百参拾壱  世紀の一戦 ロマvsリゴ はミスマッチ(2017/12/10)
八百参拾   ソアラ化粧直し(2017/12/2)
八百弐拾九  運慶の強烈なオリジナリティ(2017/11/25)
八百弐拾八  断舎利再開U(2017/11/18)
八百弐拾七  断舎利再開(2017/11/11)
八百弐拾六  『君の名は。』あれこれ(2017/11/5)
八百弐拾五  椅子の選択は大切(2017/10/28)
八百弐拾四  空前絶後「国宝」展(2017/10/21)
八百弐拾参  ミステリーを読めない辛さ(2017/10/14)
八百弐拾弐  衆議院選挙公示(2017/10/7)
八百弐拾壱  連休映画二題(2017/10/1)




八百四拾   最終作『フロスト始末』(2018/2/12)
 どんなものにも最後が訪れます。小説であれば作者の逝去、あるいはストーリー展開によって主人公が最期を迎えるなどです。仮に人気シリーズだと、いつまでもズルズル続くものです。そんな人気シリーズであっても、作者の死ともなれば否応もなく終局を迎えます。

 2,007年、79歳になったR.D.ウィングフィールドは、前立腺癌で亡くなりました。死後、本作が遺作として発表されました。日本においては、昨年のことようやく刊行されたのです。なお、本作は「このミス2018海外編」で見事1位に輝きました。

 まことに残念です。もはやデントン署を舞台に傍若無人に振る舞うフロスト警部を見ることができないのです。人気投票でフロストに投票した方は、フロスト警部最後のご奉公を、親が子を見守るような心もちで推したのでしょう。

 フロスト警部シリーズは、刊行に長いインターバルを要しています。刊行年は次のとおりで、読者は翻訳を常に待ちわびてきました。
 『クリスマスのフロスト』(1,994年) 原作刊行年:1,984年
 『フロスト日和』(1,997年) 1,987年
 『夜のフロスト』(2,001年) 1,992年
 『フロスト気質』(2,008年) 1,995年
 『冬のフロスト』(2,013年) 1,999年
 『フロスト始末』(2,017年) 2,009年
 原作もまたインターバルが長く、最近作には10年弱も待たされています。なお、原作発表後、翻訳に時間がかかっているのは、翻訳の完成度が高いためです。読んでいただければ判りますが、イギリスの下層階級及び彼ら彼女らと係る警官を描くため、そのニュアンスの再現に苦労しているのです。凡百の翻訳ものとはわけが違います。特に某菊池氏のワンパターン翻訳の対極にあるかと思います。

 本作の内容もまた、相変わらずの寝る間もないハードワークの日々です。大事件が連続で出来し、人手不足のデントン署が大わらわに追われます。警官たちの眼はショボショボで、頭はぼんやり、腹は空っぽ、書類は山積み、超過勤務手当カットを強いられる中、事件だけが次々に襲ってきます。

 フロスト警部は持ち前のやけくそ根性で立ち向かうものの、署長と新たに赴任して来た主任警部とにデントン署追い出しを画策されます。難事件に苦闘する中、僻地への異動を迫られるフロスト警部に生き残りの方途はあるのか。

 ウィングフィールドによるフロストは結末を迎えました。しかし、出版社はタダでは起きません。若き日のフロストを主人公にした新シリーズを、他の作家に振り替えて開始しているそうです。私はあんまり食指が動きません。評判次第ではありますが、多分読まないでしょう。
 私の中でフロストは結末を迎えています。遺作のタイトルも“始末”となっていることですし。
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八百参拾九  贅肉落としの難しさ(2018/2/4)
 スレンダートーンを巻いての腹筋運動を始め、はや1か月が過ぎました。腹の筋繊維が相当強化されました。頭の後ろで腕を抱える厳しいやり方でありながら、連続100回を軽くこなせるまでに進歩しています。なんか、若い頃より無理が利いているかと思えるほどです。

 もちろん、そんなことがある筈もなく、スレンダートーンのおかげです。当初は刺激強度85くらいだったのを、無理を強いる中で、その無理を可能にすべく刺激を高めてゆき、最近は120にまで達しています。強度設定は150までありますから、心強いです。
 スレンダートーンがなければ、ここまでの腹筋回数は不可能です。若い頃でも連続100回なんてチャレンジはやっていません。スレンダートーンの支援あればこそです。この器具に対する毀誉褒貶は、実は使う側の人間こそが問題なんです。効果かないと訴えている方々、自分自身が汗をかこうとしないからです、そんなじゃ、なにも得られませんって。

 およそ20分間かけ、100回前後の腹筋を毎日欠かしません。でもね、見た目も掴んだ際に余る肉の量にも変化がありません。それでもきっと効果はある筈です。腹筋100回で効果がないとかありえません。ここから先は、ひたすら続けるしかないのでしょう。

 肺が死にかけなもので、激しい運動は無理です。そこで、居合のみの鍛練としています。すると、下半身のトレーニングが疎かです。そこで、手っ取り速い鍛練として、ヒンズースクワットを開始しました。
 若い頃にもやってました。たしか、連続200回くらいをこなし、それでもなんともなかったものです。で、3日前のこと30回くらいやったところ、翌日には脚がガクガク状態になりました。翌々日でも、階段の昇り降りに苦労するくらいダメージを負いました。

 今日は足腰も復活できたので、再度スクワットをやります。こうやって繰り返しながら強靭な下半身を獲得できることでしょう。ただ、なにぶん老人のやることですから高が知れています。ホント、若い方から見ればお笑い草ってなものでしょうね。
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八百参拾八  『深夜のダメ恋図鑑』讃歌(2018/1/27)
 以前紹介した八百参    ぶっ飛び漫画『Back Street Girls 〜ゴクドルズ〜』(2017/5/28) がTVアニメ化されるそうです。実は私、ここに書いている内容を、某ブログにおいても話題次第で書き込んでいます。で、そのブログは全国レベルで注目を集めるとあって、いろいろ影響力が大きいのです。

 『〜ゴクドルズ〜』アニメ化にも若干の影響があったのかとも考えています。また、表題の『深夜のダメ恋図鑑』についても、かなり前に書き込んだものです。その後、この女性向け漫画の案内広告が某少年漫画にまで掲載されるという異様な事態が起こりました。ひょっとすると、私の書き込みが関係したのかとも想像しているところです。

 作者は尾崎衣良(いら)氏です。少女漫画によくある絵柄で、下手すりゃ埋没しかねません。そうなっていないのは、アイデアの面白さと目のつけどころです。

 3人の25歳過ぎのOLが宅飲み女子会で体験談を語り合う内容です。恋バナというより、男に対するグチ話が中心となっています。

 一人はお馬鹿男と同棲し、あるある話で女性たちの共感を得ています。家事分担という男女間のテーマをネタにすると、そりゃいろいろあるものです。男が気づかない中で、女が溜め込んでいるあれやこれやを料理しているのです。

 もう一人は美形ヤンキー上がりで、女叩き男を逆に叩きのめしたり、不倫目当てで言い寄る同僚たちを蹴散らします。あるいは、結婚相手に求める水準について、己れが見えていない男に対して言い放ちます。
 「オマエ女に(体重)40キロ以下をキープしつつ、こども3人産んで子育て丸投げして、それでも仕事続けて子どもと1日中駆けずり回って、オレのメシも作れって言ってんの?」
 そして、きつい突っ込み「オマエとの結婚って地獄かよ

 もう一人の女性は幼く夢見がちで、白馬の王子様と現実の男との間で揺れています。前二者と毛色の違う種類の話でお茶うけの役割を果たしています。

 エピソードのひとつひとつが、読者の女性たちにとって“あるある”の連続の模様で、絶賛大人気です。男にしても、これを読んで作中の男は自分のことだと気づかされるのは有意義かと思います。特にネットに見られる女叩きに鼻息荒い連中こそが目を通すべきです。馬鹿男が自分を見つめ直す契機にさえできる漫画です。
 女性は共感と憂さ晴らしを、男性には自省を迫る画期的な漫画です。ご一読を。

平成30年1月29日追加
 この漫画の絵柄がありきたりながら、有象無象に埋没していない理由として、内容の面白さ以外にも特記すべき点があったのを忘れていました。

 少女漫画の第一のポイントとして、キャラデザインがあります。キャラデには流行り廃りがあろうかと思います。尾崎氏のキャラはといえば、実にありきたりながら、眼だけはユニークな表現になっています。リンク先の画像をご覧になってください。こんな眼、少女漫画どころか少年漫画、大人漫画にも前例がありません。

 多分、尾崎氏は自分なりの表現を模索して、ここに辿り着いたものと想像します。改めて見ると、異様ともいえる眼です。しかしながら、全体として眺めると実に魅力的な人物表現となっています。私、こんな風に独自性を追求する方が好きです。皆さんはいかがなものでしょうか。
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八百参拾七  最近の世相(2018/1/20)
トヨタがロータリーエンジン採用決定! マツダとの連携が驚きの形で表面化

 トヨタはe-Paletteとして、自動運転とEVを複数の米大手事業グループと協業で展開する予定です。やることが凄いというか、初期メンバーは、米アマゾン、米ライドシェアリング大手のウーバー、中国のライドシェアリング大手のディディ、そして大手ピザ宅配のピザハットなどです。

 そのEVモデルはシリーズHVで、その発電用としてロータリーエンジンを採用するそうです。車載発電用途となると、小排気量、小サイズ・省スペース(少気筒)、低振動が求められます。低燃費で劣るものの、ロータリーは上記必要要件を最も満たすエンジンです。特に振動騒音については、少気筒レシプロエンジンではとても太刀打ちできないでしょう。

 ロータリーエンジンの行き場があってよかったです。さすがに今般の省エネ世相だと、主エンジンとしては生き残れないでしょうから。


あおり運転からの殴る蹴る

 鹿児島市内で大学生の運転する軽自動車を強引に停車させ、運転者に暴行を加え、全治10日間の怪我を負わせたとして、解体作業員2名を傷害などの疑いで逮捕したそうです。
 停車した被害者車輛を襲い、暴行に至る経緯は無慈悲、非道なものです。世の中には、このように自制が利かない無法者が一定数存在しています。トラブルに遭ってから嘆くのでなく、そもそもトラブルに遭わないよう心がけるべきです。

 道路交通法に謂う「交通の安全と円滑を図る」が、半分しか尊重されていません。交通事故の多さから安全面が重視され、得てして交通の円滑な流れをつくることは表立って求められません。ここに諸悪の根源というか、問題の根っこがあるかと思います。

 実は、「交通の円滑な流れをつくる」ことを実践すれば、煽り運転を仕かけられることはまず以ってありません。
  • 発進時に後続車の邪魔にならないよう速やかに車速を上げること
  • 高速道路で追い越し車線に居座らず、速い後続車が現れたら速やかに車線を空けること
  • 片側1車線道路をノロノロ運転しないこと
  • 高速道路でなくても、速く行きたいクルマを見たら速やかに進路を譲ること
  • 交差する道路が優先道路だったら、その流れを止めない状況まで出ないこと
 加えて、今回の事例から
  • 不用意なパッシングは控えること
 同様に
  • ハイビームは対向車、前走車を眩惑しないよう限定的に使用すること
 運転歴が長ければ、上の項目は常識くらいのものでしょう。冗談抜きで、下手をすると喧嘩を吹っかけられます。また、自動運転が実現したところで、レベル5(ドライバー排除)でない限り、無法者の脅威は変わりません。


夏木陽介さん死去

代表作はTVドラマの「青春とはなんだ」でしょうか。思い出深い映画といえば、東宝の「なつかしき笛や太鼓」が忘れられません。

 赴任先でアパシータイプの生徒たちと出会い、彼ら、彼女らの生き方を変えるべく熱中指導する類の映画は数多く作られました。アメフト、高校野球、コーラス、ヴァイオリン、ロック、ダンス、文学創作、バスケなどなど。
 本作はバレーボールです。かつての邦画が輝いていた時期、東宝が35周年記念として制作した名作です。木下恵介監督が捲土重来を期した作品でもあります。

 瀬戸内の小手島が舞台で、実話を元にしています。モデルの先生については、いろいろ存じ上げていますが、差し障りがあるので書けません。私が高校で某教科を教えていただいた方です。また、9年ほど前、仕事である調整が必要になって面談したものの、他人の話に耳を傾けないというか、自分の都合をのみ徹底して通すという凄い方でした。あんまし係りたくない方です。
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八百参拾六  駄作連発『エイリアン・コヴェナント』(2018/1/13)
 昨日来、香川県の養鶏場で鳥インフルエンザが発生して対応に追われています。県職員と自衛隊員が夜通しで殺処分に追われてご苦労様です。私も昨年まで動員が割り当てられていて、研修も受け、その大変さは承知しています。途中でトイレへ行くとなると、消毒ポイントで防護服を脱いで消毒を受けたうえで外へ出ます。全身を覆う防護服は、脱いだらそのまま処分されます。用を足した後、新たな防護服を着用して入場する運びです。もし、下痢状態で動員されたら地獄を味わうことになるでしょう。

 2週間目に突入した腹筋運動は快調です。本日分は、つい今しがた終えたところです。腕を頭の後ろに置く負荷の高い姿勢で、なんと50回できました。毎日継続する強みですね。先週には20回が限度でしたから。
 それとスレンダートーンの威力です。もうこれ以上は無理というタイミングで振動強度を上げてやるんです。するとあら不思議、すんなりできてしまうのです。それでも50回が限度でした。それ以降は、腕を前方に出して軽い負荷で続けました。
 毎日20分間続け、およそ100回の腹筋運動です。これを続ければ、間違いなく腹を締めることができるでしょう。また、筋力さえ付けば、スレンダートーンの出番も不要になります。今後も定期的に成果を報告します。


 前作『プロメテウス』は残念な作品でした。詳細は、六百拾六    『プロメテウス』なんなの、これ(2013/8/4) に書いています。そのひどい代物を上回るのが新作『エイリアン・コヴェナント』です。これに比べたら散々な批判を受けた邦画の『テラフォーマーズ』でさえ良質のエンターテインメントに見えてきます。そんな錯覚さえ起こさせてくれます。

 映像は文句なしに凄いです。きっと金も掛かっているのでしょう。これで映像までチープだったら、典型的なB級映画でしょう。さしずめ『ジョーズ3』といい勝負かな。

 冒頭、大型宇宙船で移住する2,000人の冬眠乗客が描かれています。このシーンを見て『パッセンジャー』を思い浮かべました。『パッセンジャー』は、昨年の私一推し映画です。となると、ついつい比べてしまうのです。
 『パッセンジャー』に描かれた絶対的な孤独感、絶望感は半端なく、それ故に主人公が犯してしまった過ちにも説得力がありました。
 『コヴェナント』の陳腐というか、雑というか、出鱈目な展開とは比ぶべくもありません。もうね、ありえない判断の連続でしょう。多分、あちこちで指摘されているでしょうから、私は触れません。呆れるばかりのお話です。
 『プロメテウス』といい『コヴェナント』といい、このシナリオに駄目だしする関係者はいなかったのでしょうか。
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八百参拾五  スレンダートーン使用開始(2018/1/5)
 世の大半の方が、男女を問わず腹回りのだぶつきに頭を悩ませているでしょう。私も例に漏れません。私は痩せ型ほっそりタイプです。それでも腹に纏わりつく贅肉からは逃れられません。

 これまでの半生で、幾度か腹筋運動による腹の引き締めを行いました。連続50回の腹筋を3か月間続ければ、まず贅肉が取れ、引き締まった腹筋を取り戻すことができました。
 それが8年ほど前、だぶついた贅肉を締めようと腹筋に挑んだところ、20回しかできませんでした。それも時間をかけ、ヘロヘロ状態でです。結局、そのときは1か月ほど続けて諦めました。20回程度の腹筋で腹が締まるほど甘い話はありません。後知恵だと、それでも続けるべきでした。続けていれば、徐々に筋力がつき、やがては連続50回にも到達できたでしょうに。ただ、根気が足りませんでした。

 そこで登場するのが、以前から聞き知っていた SLENDERTONE ですよ。この筋肉系運動ツールについては、根本的に誤解があります。ネットでも効果なしの意見が圧倒的です。そりゃあそうです。頑固な贅肉が、振動を与えるだけでなくなるわけがありません。あくまで地道な腹筋運動、あるいはそれに相当する運動をやらないかぎり筋肉への転化はありえません。
 特に留意すべきは、強い負荷をかけないと駄目だということです。とすると、腹筋運動が一番お手軽で効果的です。上に書いたように、連続50回くらいやると引き締めが期待できます。そこにスレンダートーンが加わると、より効果的と想像したものです。

 昨秋から親類の葬式が続き、礼服を着たりスーツを着たりが続きました。で、ズボン着用が苦しくなっているのにショックを受けました。腹回りの贅肉がこれ以上増えたら、スーツやら礼服やらを新調しなければならなくなります。そこで、急遽スレンダートーンを注文し、暮れに届いたところです。

 巻くだけ → ウォーキングなどの軽い運動 → 腹筋運動併用の3タイプの使用方法があり、私は最初から上級の腹筋運動併用です。
 初日に器具を巻いて振動に合わせて腹筋をやろうとして愕然としました。なんと1回もできなかったのです。上体がどうしても起き上がらず、宙ぶらりん以上に起こすことができませんでした。それでも20分間続け、上体を起こせないなりに足掻いて腹に負荷を与え続けました。

 器具のスイッチを入れ、振動刺激強度を設定すると4秒ほどの間隔で5秒間ほど腹に刺激が加わります。そのタイミングで腹筋を行うのです。上級の腹筋運動の際には、短めの時間設定となっていますが、私は初級タイプの長時間で筋肉に負荷を与えました。

 そして翌日のチャレンジで驚きました。前日、どんだけ頑張ってもできなかった腹筋があっさりできたのです。初級タイプの20分間中、およそ10分間ほど続けることができました。回数としては50回ほどです。皆さん、俄かに信じられないでしょう。私自身、なんじゃこれとか思いましたもん。

 運動は就寝前です。就寝前に負荷が加えられた部位に対して、睡眠中に優先して活性化が行われるからです。筋トレのいろはですね。こうして1週間が過ぎ、腹筋連続50回を続けています。ここからの向上は一寸刻みです。
 腹筋の際の負荷強度は、手(腕)を頭の後ろにやるのが最も高くなります。手(腕)を身体の前にやると楽になります。今のところ、手を頭の後ろにやると20回程度で限界を迎えています。ですが、僅かずつ回数が増えています。

 力尽きた後は、脚の助けを借りて腹筋を続けます。左右の脚ごと交代で上体を左右に捻る腹筋運動を行います。左右に捻る腹筋運動はスポーツマン必須ともいうべきもので、へばったタイミングで取り入れています。
 それと面白いのは、これ以上は無理とか限界を感じたところで振動強度を上げると、やれてしまうのです。おかげで昨夜は振動レベルを85まで上げました。振動レベルは、0〜150まであるのでまだまだ先が楽しみです。なお、無理にレベルを上げ過ぎると、筋肉を傷めるなどの問題があるそうなので、体に慣らしながら徐々に高めてゆきます。困るのは、レベルを上げるとそれだけ電池の消耗が激しくなり、充電が必要になることです。

 まだ1週間なので腹がへこむ気配はないものの、1か月後にどうなるか楽しみです。過去の経験からすると、3か月後には締まって割れた腹筋が期待できるでしょう。

 スレンダートーンを使って効果がなかったとか言ってる方、本品をただ巻いているだけの方、巻いてウォーキング程度の軽い運動で済ませている方、そんなじゃ腹は引っ込みませんぜ。そりゃあ、メタボ体形で運動をしたことない方なら、ウォーキング程度でもダイエットとなるでしょう。あるいはストレッチ程度でも締まるでしょう。というか、そういう方々なら、本品なしでも運動の効果はてき面でしょう。
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八百参拾四  年末恒例のボクシング祭り(2017/12/31)
 昨夜は横浜での試合をフジTVが放映しました。結果は日本人選手がすべて圧倒的なTKO勝利を収めるという景気のよい内容でした。
 WBO世界S.フライ級王者 井上尚弥(大橋)vs 同級7位 ヨアン・ボワイヨ(フランス)
 WBC世界L.フライ級王者 拳四朗(BMB)vs 同級8位 ヒルベルト・ペドロサ(パナマ)
 東洋太平洋フェザー級王者 清水聡(大橋)vs 同級14位 エドワード・マンシト(フィリピン)
 しかし、鮮やかな勝利というより、相手が弱かっただけです。むしろ、ミスマッチと言うべきでしょう。フジTVも金をかけることができなかったのでしょうか。もっと強い対戦相手を用意してほしかったです。

 この秋、S.フライ級のトップ選手を集めて大成功を収めた「Superfly」の続編である「Superfly2」が来年2月に予定されていますが、井上選手の出場はなくなったようです。WBA王者のカリィ・ヤファイ選手との統一戦が期待されていたものの、実現しませんでした。これを受け、井上選手はバンタム級に上げるそうです。
 S.フライ級には多士済々の強豪がいるのに、結局誰とも対戦せずに通過するだけで終わりました。残念な話です。戴冠試合のオマール・ナルバエス戦が見事なだけに尻すぼみ感が拭えません。
 そんな井上選手が気の毒です。日本に引き籠っていちゃ、これ以上の展開は望めないんじゃないかな。

 今夜はTBSが世界戦3試合を放映しました。
 WBA&IBF世界L.フライ級王座統一戦 WBA王者 田口良一(ワタナベ)vs IBF王者 ミラン・メリンド(フィリピン)は、判定で田口選手が統一王者となりました。
 さすがに相手の力量が上がると苦戦せざるを得ません。メリンド選手も王者の意地で最後まで頑張りました。田口選手のパンチを潜る防御は見事です。ていうか、世界で闘うならあれがスタンダードであるべきでしょう。

 WBO世界フライ級王者 木村翔 (青木)vs 同級1位 五十嵐俊幸(帝拳)戦は、木村選手が9回TKO勝利です。
 両者の差は、五十嵐選手が近間のボクシングができない点です。身体が接する距離になると、五十嵐選手はなにもできないのです。五十嵐選手が近間のボクシングをできない理由は、所属する帝拳ジムにあるかと思います。山中選手や村田選手も帝拳ジム所属で、やはり近間のボクシングができていません。

 先日、アメリカでS.フェザー級王者になった尾川選手も帝拳所属です。あの試合での尾川選手、距離が詰まるとクリンチするだけでした。近間でのパンチが“無”だったのです。今夜の五十嵐選手も同じで、近間でなにもできないとあって木村選手は大助かりだったでしょう。

 IBF世界ミニマム級王者 京口紘人(ワタナベ)vs 同級3位 カルロス・ブイトラゴ戦は、京口選手が8RTKO勝利です。

 日本人王者が多いおかげで試合数が多彩です。しかし、マッチメイクがしょぼすぎました。熱くなれたのは、田口選手とメリンド選手の統一戦くらいでした。
 ただ、この試合でも田口選手のボクシングがはっきりとメリンド選手のボクシングを上回っていました。距離が長くて強いジャブで先制し、余裕でコントロールしていました。また、田口選手の左ボディフックは強烈です。ラウンド間のスロー再生を見ると、フォローたっぷりに捩じり込んでいました。

 決して弱くないメリンド選手の戦力を削ぎ、消耗させてゆく田口選手の冷徹さは、細身で丹精な顔に似つかわしくありません。彼は今後も長く王者として君臨するものと想像しています。

 さて、来年も楽しみなビッグマッチが控えています。ところが、そんな試合は日本人ボクサーには縁がないのです。日本のTV局、ジム関係者、ボクサー本人たちにはもっと上を目指していただきたいです。目先の儲けなどでなく、ファンが望むカードを組むことです。それがひいてはビッグマネーにも繋がるのですから。
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八百参拾参  人生をリセットした年の瀬(2017/12/23)
 定年退職を受けて40年弱の宮仕えを終了したことにより、時間をどのように使うかいろいろ試行錯誤した9か月間でした。

 本来であれば読書に勤しむところです。若い頃から老後の楽しみにと取っておいた本もあります。今秋に発売されたミステリーの愛読シリーズもたくさんあります。しかしながら、白内障手術で多焦点レンズを入れてはいるものの、近距離にピントが合わない現状があります。
 距離に合わせて2種の遠視用眼鏡で補正しています。それでも見づらいのです。ある一点でピントが合うわけですから、僅かでも外すとボケやら刺激やらを感じてしまいます。

 来年2月にレーシクで近距離への補正手術をする予定です。私の角膜は、すでに薄くなっているので不安もありますが、先生が良しとしているので信じるしかありません。

 それはともかく、遠くまで見通せるようになった感動は今も変わらず味わっています。道を走れば、今まで見えなかった風景に気づかされます。身近な風景でさえ、新たな発見ばかりなのです。ド近眼のまま五十数年間過ごしてきた人生、きっと惜しくも見逃してきたものがたくさんあるはずです。今後、少しずつ取り返していこうと楽しみにしています。

 もう一点、定年後の大きな変化は禁煙です。退職してすぐに禁煙したので、新たな人生期間=禁煙期間です。もう禁煙の苦しみからは完全に解放されています。もちろん喫いたい欲望は残っています。でも、感情を圧するほどの辛さは消えました。
 おかげで身の回りからタール臭も消えています。呼気からも感じられなくなりました。それでも肺から出てくる排気中にタールが含まれているのでしょう。喉の繊毛がタールを捉えているとみえ、痰がやたらからみ、その痰が茶色なのです。タールで塗りつぶされた肺ですから、きっと死ぬまでタール含有の痰から縁が切れないと思います。

 退職後、贅沢な鹿児島旅行を楽しみました。秋には京都と東京の国立博物館を訪ね、年明けにはブリューゲル展を観覧予定です。また、パスポートを取得済みで、年明けすぐの台湾旅行を申し込んでいます。憧れの故宮博物館を訪ねるのを楽しみにしています。

 このサイトも再構成し、5月半ばに「地方の消えゆく風景」をつくりました。新しいコンンテンツの意義や基本的な考え方を記したところで、来年あたりから実際の該当地方を踏査して紹介してゆきたいと考えています。
 また、今回から「ぬばたま撃剣帖」も削除しました。書きたいことがあれば、ここに書けば済むことです。もういらんわ。

 それと自宅の整理というか片づけにも追われています。これがとにかく大変で、来年前半を潰すくらいかかるかと予想しています。そっから先は、自宅敷地内の大リフォームです。そこまでいくのがおおごとですけど。
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八百参拾弐  自動運転の難しさ(2017/12/17)
 2018年からアメリカで自動運転タクシーが初めてサービスを開始するそうです。Googleが取り組んでいた自動運転カーの開発がAlphabetのもとでWaymo(ウェイモ)に引き継がれ、ついに自動運転サービスがアリゾナ州フェニックスで開始されます。ちなみにWaymoは、Googleの自動運転車の開発部門が分社化して誕生したものです。

 ドライバー不在ということは、レベル5ということになります。レベル5の難しさは半端なく、今回のサービスも特殊な条件下で実施されるものです。
 ・フェニックスには広く整備された道路が多い。
 ・ほとんど渋滞なし
 ・1年を通じて晴天に恵まれ、悪天候に見舞われることが少ない
 ・当初はとりわけ走行条件のよい、チャンドラー郊外の南東部に走行エリアを絞ってサービスを提供する
 なお、もっと交通事情の複雑なデトロイトでも実験走行を行っているそうです。

 日本でも日産のプロパイロットが先進的な取り組みを行っています。先月末、日産がジャーナリスト向けに同様の自動運転体験を実施しました。

 目的地を指定し、右左折、信号指示、停車・発進、高速乗り入れ、車線変更まですべて自動で行っています。ドライバーが控えているので、レベル4ということになります。ただし、戦略企画グループ部長の飯島徹也氏(電子技術・システム技術開発本部/AD&ADAS先行技術開発部 )は「どのレベルなのかはコミュニティが決めること。こちらからレベル○とか言うものではないと思う。それでも強いて言えば、(SAEの)レベル2でもかなり高度な部類に入る」と説明しています。レベル4を唱えるのをおこがましいと考えているものと想像します。

 センサー類の装備が凄まじいです。装備位置(高さ)を違えて12個のソナー、12個のカメラ、9個のミリ波レーダー、6個のレーザースキャナーだそうです。これだけ装備するコストは500〜600万円だそうです。
 テスト走行用道路情報は、道路標識類、白線などの指示線もすべてデータとして持っているそうです。もちろん、信号の読み取りや制限速度情報の読み取りには万全を期しているそうです。

 実際の複雑な交通の紛れへの対応には、精度を上げてもまだまだ難しいのでしょう。例に挙げているように、右折信号のない交差点で、直進車の合間を縫って右折するなどは現状では無理なのでしょうね。なにせ、人間でも難しくて、事故が多発しています。いえ、だからこそ自動運転が求められるのでしょう。
 また、歩車一体道なんかはまだまだ想定外なのでしょう。

 このレベルともなれば、運転の補助サポートとして利用するなら、大助かりでしょう。先は長いといえ、確実に進捗して心強い限りです。
 その他の機関でも、レベル5を目標にしたテストが実施されています。そのケースでは、速度15kmとかのノロノロ運転でしたっけ。

 日産のプロパイロット実験車輛は、絶対的な確実性と安全性を確保するため、センサー類をあり得ないほど贅沢な構成としています。まさか量産車輛でここまでのセンサー装備は無理でしょうから、個別センサーの性能アップが必須となります。さらに精度を高めることによって実用への道が開かれるのでしょう。時間がかかるにしろ、未来を迎える機器は着実に進歩しています。
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八百参拾壱  世紀の一戦 ロマvsリゴ はミスマッチ(2017/12/10)
 本日、ニューヨークにおいてボクシングファン待望のテクニカル・ファイトが行われました。WBO世界S.フェザー級王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)とWBA S.バンタム級スーパー王者ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)の一戦です。

 ロマチェンコ選手は北京五輪でフェザー級金メダルを獲得し、ロンドン五輪ではライト級で金メダルを獲得し、2大会連覇を果たしました。また、9年と11年の世界選手権でも優勝しています。アマチュアで397戦396勝1敗という空前絶後といっていい戦績を残しました。この1敗は7年の世界選手権決勝でロシアの選手に喫したもので、その後2度に渡って借りを返しました。
 リゴンドー選手はキューバの国内選手権で7度優勝し、シドニー五輪、アテネ五輪とバンタム級で連覇しました。また、世界選手権は1年、5年と連覇し、アマチュアで475戦463勝12敗とされています。最後に負けたのは3年であり、プロ転向後も含め14年間無敗を誇っています。

 両者ともに各クラスに敵なしの状態で、特にリゴンドー選手は試合枯れもあって2階級差を超えての対戦となりました。いくらなんでも無謀だろとの危惧は当然です。一方で、リゴンンドー選手のパンチを躱すスキルを以ってすれば、ロマチェンコ選手を空転させることも可能でないかと予想する向きもありました。

 結果はあまりな6回終了TKOでした。リゴンドー選手が棄権というがっかりな結末です。仕方ないといえば仕方ないです。もうまったく通用しないんですもの。ロマチェンコ選手が軽く当てるボクシングを開始した途端、もう一方的な展開になりました。
 リゴンドー選手のパンチは、2階級差とあって無視されるレベルでした。やはりミスマッチでしたね。リゴンドー選手はこれからどうするんでしょうか。対戦相手にも困り、藁にもすがる思いのロマチェンコ戦がここまでワンサイドの結果に終わり、もう自分の居場所がないんじゃないでしょうか。


 同日ラスベガスでは、IBF世界S.フェザー級王座決定戦が行われ、4位の尾川堅一(帝拳)が5位のテビン・ファーマー(米国)を破って戴冠しました。手数が少なく負けたとばかり思ったものの、2-1での判定勝利となりました。

 この試合の両者ともに、近い距離でのボクシングができていませんでした。特に尾川選手は距離が詰まるとクリンチするしかやりようがない状態で、世界戦を謳うには情けない試合でした。
 帝拳のボクサーって皆こうです。尾川選手も例に漏れず、ただでさえ手数が少ない中、距離が縮まるとパンチが打てないんです。
 この試合の後に行われた同級1位のオルランド・サリド(メキシコ)と5位のミゲル・ローマン(メキシコ)との対戦があまりに対照的でした。両者ともに、身体が接したところから激しい打ち合いが始まり、それがまた強いパンチなんです。
 なんか帝拳の選手って、今回の尾川選手に限らずみんなショートパンチが打てません。日本で最大の資金力を誇り、世界挑戦の機会に最も恵まれたジムの選手がこれですから勿体ないというか、残念です。
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八百参拾   ソアラ化粧直し(2017/12/2)
 愛車のソアラが30年選手となり、車検でこまごまとした交換修理が必要となりました。ここ10年でジェネレータなんかの電装関係を交換し、前回にはベルト類すべて交換しました。今回は、冷却系統、オイル系統、ハブベアリング、ハブシール、ハブナットまで交換し、更にタイヤも定評のあるハイグリップ・スポーツに新調しました。

 中身がリフレッシュできたのだから外見もと、全塗装を奢っています。5月半ばに申し込んだものの、作業は延びに延びて年末納品の予定です。7か月がかりの大手術で、もう待ちくたびれました。



 1987年(昭和62年)式の2代目ソアラ初期型です。珍しい不人気色のシルバーです。スーパーホワイトUやツートンパールが人気だったものを、渋いシルバーを探して手に入れました。1994年春のことです。

 さすがにシルバーを見飽きたので、スーパーホワイトUで依頼しました。しかし、全塗装するには30年式は遅すぎました。もはや部品がないのです。いえ、エンジンや保安関係ならどうとでもなります。どうしようもないのはモールやシール類です。これらは解体屋に当たっても無駄です。劣化でボロボロ崩れ落ちる具合なので、中古車や廃車に当たったところで再利用できないのです。

 仕方ないのでモール類は外さず、マスキングで処理することとしました。ですので、エッジを塗り残す中途半端な塗装となります。残念ですけど諦めるしかありません。

 塗装は近所の板金塗装屋さんにお願いしました。今はいずれの職種に限らず、ものづくり系に携わる人間が減っています。溶接・溶断関係、鉄筋・型枠関係は若者に敬遠され、人集めが困難な典型的職種です。その他の職種も若者の参入がなく、事業の継続にさえ困っています。塗装系も同じで、当方の周辺業者も多くが廃業しました。

 私がお願いした方はベテランさんで、十分信頼して任せることができます。弟さんが手伝って兄弟で頑張っています。なお、弟さんはNSXの後期型を所有しています。

 本日、工房を訪ねたところパーツがバラバラで、下地のサーフェッサー処理を済ませた状態です。これでは今年中の納車は無理じゃないのと尋ねると、なんとしても年内納品を完了しますと確約してくれました。その言葉を信じ、楽しみなのでここに書き記しました。
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八百弐拾九  運慶の強烈なオリジナリティ(2017/11/25)
 今週火曜日、東京国立博物館を訪ね、興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」を観覧しました。上野公園内に配された国立博物館の新しい平成館が会場です。京都国立博物館の平成館は、旧館がまったく機能しなくなったために新設されたもので、東京とは事情が違っています。

 東京の平成館は、本館とは別に造られたものなので、京都のように中心を担うのでないため、さほど大がかりではありません。ですから、運慶展のようなビッグ展をこなすには若干狭くて残念でした。

 博物館正面のチケット売り場そのものが大混雑で、グルグル廻しの長蛇の列でした。で、入場者の人の流れの大半が平成館に向いていて、覚悟していたといえ入場30分待ちでした。なお、私が帰る際には、人波が敷地から溢れる寸前にまで延びていて、ほぼ50分待ちの行列でした。

 運慶作品の素晴らしさについて、私が述べるべきことはありません。運慶の作品は国宝や重要文化財ばかりで、今回はそれらが一堂に会したとあって贅沢極まりないです。
 彫刻のことはよく分かりませんが、ミケランジェロや運慶クラスともなれば、その凄さはちゃんと伝わってきます。仏像という宗教に偏ったジャンルながら、運慶の作品には表現者としてのオリジナリティが強烈に備わっています。同時に、運慶は弟子たちに対しても、既成の型に嵌らないよう指導していたのでないかと想像します。例えば、狩野派が狩野派の型からはみ出ることを忌避したのと大違いです。

 実は、今回の作品中で最も感心したのは弟子の手になる「十二神将立像」でした。ひとつひとつの立像のポーズと表情が実に多彩であるとともに、現代的というか、仏像らしくもないモダンさが表現されていると感じたのです。なかにはコケティシュな表情とポーズの像もあり、よくもクライアントの寺が許したものだと驚きました。

 結局、師である運慶の指導法だったのでしょう。人真似をするな、自分の表現を見つけろなどと教え込んだと想像してしまうのです。そのような妄想にも説得力を与えてくれるのが、運慶とその弟子たちの作品群です。その心意気が作品から強烈に発せられるのです。


 帰りの飛行機に時間があったので、同じ上野の西洋美術館で開催されていた「北斎とジャポニズム」も観覧しました。
 北斎の浮世絵や北斎漫画は19世紀末から20世紀初頭の西ヨーロッパの作家たちに大きな影響を与えました。それら絵画や工芸作品と元ネタの北斎を並べて配した展覧会です。

 多大な影響を受けた作品群、あるいは北斎の絵をそのまま写した作品群の膨大な量に圧倒されるとともに、疑問符が浮かぶ作品群もありました。
 北斎の浮世絵に母子像があります。西洋画にも当然のように母子像があります。母が赤子を抱く図は、多くの画家がモチーフとして選択しました。で、この両者を並べ、北斎の影響を受けたとするのは、ずい分厚かましいんじゃないですか。その他にも、海浜、海岸、並木及び山の遠景なんかを北斎の絵と並べ、影響を受けたとする解釈も厚かましいでしょう。

 また、セザンヌは故郷のサント=ヴィクトワール山を飽かず描きました。これを北斎が飽かず描いた富士に触発されたかのように展示するのはどうかと思います。

 さすがに「神奈川沖浪裏」の波濤の構図や波のデザインを写した作品群ともなると、真似というか影響が極めて大きいと納得しますけど。

 久々の東京でした。五輪を迎えるとあって、これからさらに変貌するのでしょうね。次に東京を訪ねるのは、年が明けてからのブリューゲル展です。楽しみにしています。
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八百弐拾八  断舎利再開U(2017/11/18)
 絵画類をばらして分別のうえ、アルミ額のフレームを非鉄類回収業者に持ち込みました。別に期待していなかったものを1,500円ほどの実入りとなり、ランチ代に化けました。

 少し気が大きくなり、近くのエスニックレストランを訪ね、インドシナ料理に舌鼓を打ちました。つい最近オープンした店で、意外な場所に構えられていました。外観はシンプル、内部もシンプルな単純矩形の構造で、虚飾を排したイメージで好感が持てます。
 内壁にはオーナーの趣味であろう60年代アメリカンPOPカルチャーが飾られ、お洒落ながら、煩くもなく落ち着いた雰囲気です。中でも、ピーターマックスの広告ポスターが輝いていました。私、リアルタイムでピーターマックスの活躍を知っているだけに嬉しくなっちゃいました。

 メニューの中心は、ベトナムとタイ料理です。Webの店舗情報にフォーが載っていて、一度食べてみたかったのです。あと、日本には珍しい野菜類をふんだんに使ったサラダを注文しました。

 フォーには、よく煮込まれてとろけるような鶏肉とたっぷりのパクチーが加えられ、頬っぺたが落ちそうでした。出汁に加えられたヌクマムは甘めで、香草のピリ辛パクチーとが口中で混然となり絶品でした。
 初フォーは大成功でした。麺好きの私はいっぺんでファンになりました。これからちょくちょく食べようと思います。多分、当県でフォーを用意しているのはここだけでしょう。


 絵画類の始末に併せ、石膏像2体の処分も終えました。ジョルジュとモリエールです。誰か貰ってくれればいいのですが、今日び邪魔以外の何ものでもないでしょう。いざ捨てるとなると手間取るし、手間を省くなら金がかかります。30年以上も前の石膏像で、汚れもひどいとあって惜しくもありません。

 もう思い切ってぶっ壊しました。カケヤで割り、細かく砕いてゴミ袋に詰めました。こうやって少しづつ片づいています。しかし、先は長いなあ。
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八百弐拾七  断舎利再開(2017/11/11)
 一段落していた断舎利を再開しました。稲の収穫が済んで田圃が空くのを待っていたのです。長雨が続いて穫り入れが遅れに遅れ、10月末でやっと片づいたのです。
 ここからは本格的な整理を進めます。古い納屋、木屋、釜場、ひや(部屋のなまり)など、もはや必要もない建屋がたくさん残っています。これらすべての解体処分を予定していて、内部にあるガラクタ類の片づけにかかりました。

 まずは額装した絵の始末です。100号中心の大作が多く、場所を取って仕方なかったのです。広い納屋といえ、B1パネルまで含めるととんでもない数量で、邪魔この上なかったのです。

 卒業制作を始めとした学生時代に描いた作品なんか、もう懐かしくて作業の手が止まって仕方なかったです。さすがに別れ難いものがあり、しっかり撮影しておきました。正月に買ったコンデジは2,000万画素と画素数が多く、微細な記録が可能です。数十年間に積もった埃を払い、一作ごとにクリーニングしながらの撮影です。

 取り込んだデータをPhotoshopで整理していると、色合いに首をひねるものがありました。納得いかない作品は、翌日に撮り直しました。昼過ぎに撮影を開始しため、一部の遅い時刻に撮影したものに問題が起こったのです。太陽が南天にあればフラットバランスで正確な色再現ができていました。陽が傾くと光の周波数成分が偏り、色合いに不自然さが生じたのです。絵画の記録ですから、色再現に妥協したくありませんからね。

 額はアルミ製と木製があり、ネジをひとつひとつ丁寧に外しながら解体を進めました。新しい作品で20年前、古いものだと40年も経っているのでネジ釘が劣化しています。失敗しないよう気を遣いました。
 B1、B2のパネルはホチキスの針をしこしこ外すところからです。その後、額とパネルをカケヤ(でかい木槌)で解体し、多用されている釘を抜きました。

 とにかく気長に取り組みました。途中で何度も嫌気が差しながらも、気を取り直しては数日かけて作業を終えました。そして、昨日のことばらした木を田圃で燃やしました。これだけは田舎住みの長所です。街中だと、燃やせば片づくものでも、すべて資源ごみに出さなければいけませんね。

 最後の仕上げは灰のチェックです。キャンバスを木枠に展張している釘を取り除くのを忘れてはいけません。もし取り残しがあると、農作業で踏み抜いて大ごとになります。強力磁石で念入りに釘や金物を探し出しました。

 古い家屋解体に向けた内部の片づけは、気長に取り組む必要があります。絵だけでも大変だったのに、この先に待つあれこれを考えるとげんなりします。古い箪笥もいくつかあり、でかいし重いしで、気も重くなります。次はこれかな。
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八百弐拾六  『君の名は。』あれこれ(2017/11/5)
 昨夜、WOWOWで『君の名は。』が放映されました。以前に Blu-ray 版をレンタルで観ています。Blu-ray での再生とWOWOW側の業務用システムからの送り出しとの間にどれくらいの品質差があるか興味がありました。これまでの経験から、明確な差を認識していただけに評判のコンテンツで確認するのを楽しみにしていたのです。

 WOWOWはさすがのリッチな諧調でした。リッチ故、映像に奥行き感が生まれ、深みを感じさせるものでした。新海節ともいえる美麗な映像を、WOWOWが余すところなく映し出してくれました。

 内容については、世上でも散々突っ込まれていますから、あらためて書くこともないでしょう。そもそもタイムトラベルものというか、歴史修正ものはどうしても矛盾を抱えているものです。時間を遡上するのは物理的に不可能ですから、矛盾が生じるのは当然というか仕方ありません。

 しかも、『君の名は。』は「時間の遡及による修正」と「パラレルワールド」と「意識の交換」がごちゃ混ぜになっています。もう無茶苦茶なんですけど、物語においてその当たりの切り分けもないし、作り手側も自覚していないやに思われます。「時間の遡及による修正」と「パラレルワールド」を区別していないので、無理を重ねた物語展開となり、いろいろ指摘される要因になっているのでしょう。

 些細なことですけど、どうにも気になって我慢ならない点があります。入れ替わった二人が3年の時間差を認識していなかったことです。同い歳の高校生ながら、実は3歳の差があったわけです。それぞれ入れ替わった先の生活情報を調べていましたけど、なにより真っ先に確認するのは場所と時間でしょう。
 しかも、スマホのテキスト情報でやり取りをしていたとなると、日付の3年差に気づくでしょう。さらに、3年の時間差があれば、世上のあらゆる情報に齟齬が生じているはずです。首相の名、海外首脳の名、旬の芸能人、ヒット曲などの違いからも気づくはずです。

 でもね、文句を言っても仕方ないんです。タイムスリップ物語は、どうやっても矛盾から逃れられませんから。例えば、トム・クルーズ主演の『オール・ユー・ニード・イズ・キル』で、最後のタイム・リサイクルが意味不明だったでしょう。あそこでリプレイすると、エイリアンが健在な時点に還らなければならず、大団円とはならない筈です。

 また、スティーブン・キングの『11/22/63』でのケネディ暗殺阻止に伴う未来の改変は、地球全体の地殻変動を惹き起こすという異常事態を描いています。それまでの緻密な小説空間が、いきなり明後日方向にすっ飛んでしまい、説得力を失ってしまったやに思われます。

 いろいろ無理があるんですね。幸い、『君の名は。』は、美麗な映像と印象的なサウンドによって、あんまり不自然さを感じさせずに済んでいるかと思います。
 皆さんご存知の新海ワールドを改めて掲載しておきます。夜景から夜明けを迎え、朝日が差して太陽が南天に差しかかるまでを描いています。
 (C) 東宝 




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八百弐拾五  椅子の選択は大切(2017/10/28)
 机に向かう生活において、椅子の選択は極めて重要です。などと言いながら、高校時代に買った事務用チェアを30年近く愛用してきました。昔のプロダクトは、堅固というか愚直というか、とにかく故障の気振りさえありませんでした。おかげで貧乏性の私は、使えるうちは使うべしとばかり、30年もの年月が経ってしましました。
 一方で、昔の椅子は人間工学などといった、使用者に対する優しさが考慮不足です。特に、座面の座り心地や背受けの角度に不満がありました。

 座面のビニール破れがひどくなったのを機に、買い換えの運びとなりました。7年前、店舗を訪ねて調べるのが面倒だったので、ネットショップで購入したのがオフィスチェア C-505(17,700円)でした。ハイバックタイプのリクライニング機能が心地よい椅子でした。

 ただし、中国製の安価な商品なので多くを望めません。品質は最低だろうと覚悟していたところ、悪い意味で予想を裏切られませんでした。
 部材の組み合わせ、噛み合わせが微妙に合わない
 2年後からレザー表皮と謳っているビニールの劣化が始まり、数年後にはボロボロ
 数年後に支柱のシリンダー油圧が抜け始める
 見事に安かろう悪かろうの典型で、買い替えを余儀なくされました。

 昨年、近所のリサイクルショップでローバックタイプのものに買い換えました。リサイクル品を狙ったのは、品質優先としたためです。「できるだけよい品を安く買う」趣旨から、中古品を狙ったのです。また、ハイバックが欲しかったものの、ローバックしか置いていなかったのです。

 表皮のファブリック、構造材、機構のいずれもが高品質で文句はありませんでした。しかし、使っていると、やはりハイバックが欲しいというか、頸を休められるハイバックが必須と感じられました。

 で、先週買い換えたのが、ニトリのワークチェア(エルゴクエスト BK)です。ニトリの椅子コーナーにハイバックタイプが6脚ほどあり、じっくり座り比べて前記の椅子に決めました。

 3万円弱という中国製の安価な製品です。しかしながら、以前ネットで買った椅子みたいなひどい代物ではありません。組立ての際の噛み合わせも正確でした。
 表皮はポリエステルなので高級感はないものの、安物ビニルみたいな劣化は起こらないでしょう。ひとまず安心です。
 座面高、アームレスト高、座面の前後スライド、背凭れ角度、ヘッドレスト高と各部調節が利き、今は私に合ったベスト位置を指定しています。これまでの椅子は、ここまでの微調節が利かなかったので、中途半端な姿勢で我慢していたのです。

 やっと、自分の欲する姿勢が取れるようになり、これまでの数十年間にわたる我慢が馬鹿らしくなりました。ほんの3万円弱で得られる幸せなのです。本当に無駄な我慢でした。
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八百弐拾四  空前絶後「国宝」展(2017/10/21)
 京都国立博物館が「開館120周年記念 特別展覧会 国宝」を開催しています。普通であれば、国宝数点で展覧会の目玉になるところです。それを全展示物が国宝なのです。まさに、開館120年を飾るに相応しいビッグ展です。

 出品内訳を見ると、東京と京都の国立博物館所蔵品が2割ほどでしょうか。後は全国の神社仏閣、美術館等からの提供となっています。さすがに京都と奈良の神社仏閣が過半を占めていて、歴史の中心に位置していたことが実感されます。
 なお、一品だけ、近所の寺の所蔵品がありました。錫杖頭という金工です。他に比べると、ちょっとショボイかな。

 こんなビッグ展だと来館者も多く、混雑が凄まじいものになるだろうと危惧していました。で、これは杞憂に終わりました。旧館は耐震計画中で、新たに新館が建設されています。広々とした3階建てだけに、混雑するのは当然としても、かつての明治古都館のように、身動きさえままならないほどの狭隘さから解放されました。

 それでも全国から集まった人波は半端なく、作品鑑賞には苦労させられました。幸い背が高めなので、前にいる観覧者の頭越しに見ることができ、なんとかひととおり鑑賞することができました。背の低い女性たちは苦労していました。多分まともに鑑賞できていないかと思います。
 もちろん、最前列が特等席ながら、左右に流れる動きが鈍く、まともに見ることができないのです。職員がさかんに、「立ち止まらずに移動して、皆の邪魔にならないようご協力ください」とか訴えるものの、自分勝手な人間が多いのです。まして、中高年齢者が観覧の大半を占めていて、まあ皆さん我儘ですわ。若者がどうとかでなく、老人にこそ問題が多いんじゃないですかね。

 私が夢中になったのは、雪舟の「秋冬山水図」「四季山水図巻(山水長巻)」「破墨山水図」「慧可断臂図」「天橋立図」です。いずれも、これまで図版でしか見たことのない逸品です。
 また、「餓鬼草紙」「六道と地獄病草紙」「信貴山縁起絵巻」「一遍聖絵」「法然上人絵伝」などの絵巻物群も、こんな機会でもなければ終生縁のない国宝です。
 それと今期の目玉は、俵屋宗達の「風神雷神図屏風」であり、これぞ感動の逸品です。まさに日本芸術の頂点に君臨する絵画です。

 他にも、仏画、彫刻、金工、陶磁器、染色、漆工、書跡、考古等のこれまで図版でしか見たことのない国宝が全館に鎮座していました。また、中国から持ち込んだ逸品群は、当の中国ではすでに失われた書画であったりします。

 会期はT〜W期に分かれていて、作品が順次入れ替わります。私は今週第U期を狙いました。雪舟と宗達を見逃せなかったからです。
 後半の目玉である長谷川等伯の「松林図屏風」、尾形光琳の「燕子花図屏風」はすでに鑑賞済です。惜しむらくは肖像画が後半に配されていて、「源頼朝」を見ることができないのだけが残念です。

 京都国立博物館主催のビッグ展といえば、7年前の長谷川等伯展が凄かったものです。同じビッグ展でも、7年の経過に国際化の波を感じました。前回は超円高という為替事情もあって外人観光客が少なく、現今とは大違いです。駅から博物館までの道中といい、展覧会場内の人ごみの中といい、まあ外人さんだらけでした。

 芸術の秋とあって、見逃せない展覧会がいろいろ控えています。来月には東京国立博物館の興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」展を観覧しなくてはね。
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八百弐拾参  ミステリーを読めない辛さ(2017/10/14)
 今手元に未読のミステリーが積まれています。

 マイクル・コナリー『罪責の神々(上下)』 リンカーン弁護士シリーズ第5弾
 R.D.ウィングフィールド『フロスト始末(上下)』 フロスト警部シリーズ第6弾
 池井戸潤『花咲舞が黙ってない』 花咲舞シリーズ第3弾
 大鐘稔彦『孤高のメス 完結編』 シリーズ第5弾
 ジェイムズ・エルロイ『背信の都(上下)』 LA4部作の前章
 ピエール・ルメトール『悲しみのイレーヌ』

 いずれも読んで後悔なしの作品です。しかし、眼の焦点が近距離に合い辛いとあって、本格的な読書を控えています。で、溜め込んでしまったのです。眼内レンズが落ち着くまでの辛抱と、秋の夜長を耐えています。

 その代り、連休に続いてレンタル映画で鬱憤を晴らしています。新作群がなんともしょむない作品ばかりで、いきおい過去の名作に手を伸ばしました。

『関の彌太ッぺ』
 これは名作以上の評価が妥当です。もう傑作と呼ぶに相応しいものと考えます。長谷川伸の代表作で、原作の素晴らしさをどこまでスクリーンで再現できるかです。で、見事に成功しています。
 中村錦之介全盛時の輝きを見て取ることができます。本当に素晴らしい役者です。オーラが感じられますね。

 前半で威勢の良い渡世人を演じ、後半では殺人を重ねて笑みを失くした兇状旅人を演じています。岡場所に売られた妹を救うため、50両を懐にして尋ね歩く彌太郎が、ひょんなことから天涯孤独の身の上となった小夜坊を依頼先に届けます。
 受け入れに難色を示されるなか、父を慕う小夜の歌に心が潰された彌太郎は、虎の子の50両を受け入れのための宿賃として渡します。

 廻り廻りの小仏さまは 何故せい(背)が低いな
 親の日にとと(魚)食べて それでせいが低いな

 日暮れどき、父が死んだと知らないまま、辻に立って母が歌ってくれた歌を歌えば、父の耳にも届くだろと歌い続ける小夜がいじらしいんですよ。
 妹を救う50両を失くしたまま尋ね当てた先で、すでに死んだことを聞かされた際の錦之介の無残さは迫真の演技です。カメラワークも凄いものです。
 そして、10年後のラスト前、彌太郎は成長した小夜(十朱幸代)と名乗らぬまま再会し、ふとした独白で彌太郎と気づかれるシーンがまた泣かせます。

 この娑婆にゃあ、悲しいこと辛えことがたくさんある
 だが、忘れるこった
 忘れて日が暮れりゃあ明日になる
 ああ、明日も天気か

 このシーンは、彌太郎と小夜が花咲くムクゲを挟んで演じられます。名場面続出の本作中でも、息を止めて見つめてしまいます。
 ラストは低いアングルのカメラで、敵対する渡世人群にひとりで近づいてゆく彌太郎の後ろ姿を長回しで映しつづけ、エンドクレジットが重なっての終劇となります。

 人情股旅物として最高傑作の誉れ高い長谷川伸の傑作で、何度も劇化されています。いずれも泣きの名作なのですが、山下耕作監督による錦之介バージョンが他を凌いでいるでしょう。私も歳を食って新たに観ると、素晴らしさに改めて気づかされました。

 なお、『瞼の母』もまた錦之介バージョンが最上かと思います。母を恋うる番場の忠太郎の切々とした情が伝わってきます。
 時代劇のピークは50〜60年前あたりでしょう。風景も十分カメラに入れられる景観でしたし、役者たちが和装を日常の中で着こなしていたりで、今の大河ドラマの無様さとは大違いです。
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八百弐拾弐  衆議院選挙公示(2017/10/7)
 先月末のこと、急転直下の衆議院解散となりました。以後の10日間というもの、総選挙狂想曲が賑やかに列島を騒がせています。

 当地の地方紙に田勢康弘氏が週一でコラムを書いています。先日のコラムが総選挙ネタで、面白いフレーズが記されていました。
 「政治の舞台に立つ全ての人たちが打算で動いた → 誤算がぶつかり合い → 破算に終わるのか」
 上手いでしょう。自民党(安倍首相)も、希望の党(小池知事)も、離散民進グループたちも、すべて上のフレーズに当てはまるでしょう。ただ、最後の“破算”を蒙るのは誰なのか、投票結果が見ものです。

 騒がしさの中心にいるのは小池都知事です。ニュースの焦点も希望の党に絞られ、選挙に求められる話題性はピカイチです。しかし、注目を集めるのは諸刃の剣でもあります。党にとって、有利なことも不都合なことも同じく注目されてしまいます。
 選挙公示を前にして、都民ファーストの会にとって、小池氏と糟糠の妻ともいうべき都議の音喜多氏らが離党したのは痛かったですね。
 音喜多氏は幹事長時期にマスコミ対応で困っていました。豊洲問題で結論へのプロセスが不透明との批判を受けた際、都知事は都議会を不透明と批判していたくせ、同じことをやってるじゃないかと責められましたね。あのとき、「承りました。知事にも反省すべき点がある」旨の真っ当な返答をしました。あんとき、そんな反省の弁を述べたら小池知事は怒るんじゃねとか心配しました。多分、以後は冷や飯喰い一直線だったんじゃないかと邪推しています。

 民進党は辛いところですね。今回の離散解党ドラマはあまりに哀れなものでした。かといって、民進党のままで選挙を戦っても苦戦するのは確定的でしたから仕方ないのでしょう。

 以前はこの衆議院選で橋下氏が政界復帰するものと考えていましたが、ないそうですね。多分、次回衆院選を狙っているのでしょう。次回というと、東京五輪終了後の秋以降でしょう。仮に安倍氏が首相を続けていても、次回で身を引くでしょう。
 その機を捉え、維新が再ブーストするのは間違いないでしょう。小池旋風も萎んでいるでしょうし、民進党分派たちの賞味も完全に切れているでしょう。また、国民の間に自民党に飽いた空気も蔓延しているのではないでしょうか。
 3年後、五輪終了後に解散があれば、そのとき橋下旋風が席巻することを予言しときます。
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八百弐拾壱  連休映画二題(2017/10/1)
 連休に観劇した映画2題を追加で記します。

『It Follows』
 WOWOWの情報番組である「週刊 Hollywood Express」のラストに放映される「全米映画 TOP10」を毎週楽しみにしています。毎週のランキングや全米興業収入を告知していただける優れものの番組です。
 昨年だったか、『It Follows』がランク入りし、話題になっているとか報じられました。得体のしれない人間が徐々に近づく映像も紹介され、興味を持っていました。で、ついに観ることができました。

 ちょっと変わった趣向の映画です。緊迫した恐怖感を煽るタイプのホラーではありません。殺人者が迫る速度が極めて遅く、狙われた人間は余裕をもって逃げることができます。ただし、油断はできません。殺人者は永遠に付け狙い、終わりがないのです。狙われるのは感染者です。SEXによって感染し、感染することによって殺人ターゲットが転移します。転移者が殺されると、前の感染者がターゲットとして復活します。

 『ファイナル・デスティネーション』と似たプロットです。ただ、違う点が二つあります。
 ・死が絶対的な宿命であるか、死への道筋を他者に転移して避けることができるかどうか。
 ・死亡の原因やきっかけがまったく予測できない。片や殺人者が徐々に近づいてくる。
 どっちも嫌だけど、『It Follows』の方がSEXで逃げられるだけましです。どんどん転移してゆけばいいんです。やがて遠い話になって、寿命で死ぬのが先になるでしょう。

『コーマ』
 1978年に制作された映画です。原作はロビン・クックの『コーマ -昏睡-(1977年)』です。ロビン・クックは医者であり、医学サスペンスを得意とする名手です。『アウトブレイク』も氏の作品です。他にも映画化されているだけでなく、TVドラマ化されてアメリカのお茶の間を賑わせています。

 監督はマイケル・クライトンであり、マイケル・ダグラスが脇を固めるという陣容ですから期待も高まります。この頃のアメリカ映画はレベルが高かったかと思います。
 本作は社会派ミステリであり、同時代の『チャイナ・シンドローム』と似た作品です。百八拾参 名画 (2005/3/27)でも触れています。

 映画を観ながら、原作を完全に忘れていることに気づきました。ストーリー展開がまったく読めませんでした。それもあって、十分に楽しめました。この時期のアメリカ映画は、ニューシネマの洗礼を受けたので新しさがあります。一方で従来の映画づくりのノウハウが生きていて、今観ても見応え十分です。
 なんていうか、昔の映画は状況を丹念に描くことを重視しています。今はストーリー展開優先で、とにかく描写を端折ります。仮にも医療サスペンスであるなら、本作のように手術のプロセスに丹念に当たらないと嘘でしょう。今は展開を急ぎ過ぎなんですよ。制作関係者も立ち戻ってほしいな。
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