封印の地にて
arc3後|2006.07.29
「やっぱりエルクだ!久しぶり〜」
そう言うやいなや、まっすぐエルクの元に。
久しぶりの全力疾走。
流石に息が上がって、エルクの正面で、ボクは大きく息を吐き呼吸を整える。
「おいおい、大丈夫かよ」
そっと近づく気配は苦笑いとともに、背中をさすってくれて、わー、やっぱりエルクだーと妙に嬉しくなる。
「落ち着いたか?」
「うん。えっと、久しぶりだねー」
「んーっと、1年半振りぐらいか?たしか、お前の初酒場デビューを聴いたのが最後だった気がするし…」
「酒場デビュー?うん、その通りかな?」
相変わらずのエルクに、ボクは笑いがこみ上げてくる。1年半振りだろうが変わらない態度、関係。すごく好きだなーと思う。
そうして視線をエルクより少し上。彼の右肩の少し上空に浮かぶ四角の箱に移した。
「ヂークもお久しぶりだねー」
「そうジャな。元気でやってオルヨウじゃノ。活躍ハ聞いてオルゾ」
「ありがとー。ヂークも元気そうでなによりだよ」
「ウム」
「うん。それで、エルク。それは何?」
ちょっと気になってたんだよねと呟くと、エルクはきょとんと目を瞬かせる。
苦笑して右手を軽く振ると、エルクも自身の右手を見下ろし、ああと納得する。
右手には白い大きな反り返った花弁の花と蒼い薔薇のブーケ。
言っちゃ悪いが、エルクがブーケ?と首を捻りたくなる。
それを自覚しているのだろう。軽くブーケを振って、エルクは苦笑混じりにボクを見た。
「ああ、珍しいだろ」
「うん、とっても」
「即答かい」
そうツッコミをいれてくるもんだから、ボクは思わず吹き出した。
くつくつ笑いを噛みしめていると、むっと拗ねたような視線を送られる。
そうして、笑いがおさまらないボクに聞こえるように、深く深く息を吐いた。
「…ここに来る前に、昔会ったことのある花売り2人組に遭遇してよ。強引に渡された」
「昔会った?」
「ああ。7年ぶりぐれーかな。あんときもコスモスを強引に押しつけられてよー。ほんっと元気な姉ちゃん達だぜ」
そう苦笑するエルクに、ボクは嬉しかったんだなーとなんとなく思う。
大災害前に出会った人ともう一度会うことの出来る確率の低さ。それをふまえれば当然なんだけど。
おめーも会ったら絶対渡される!何故かビシッと指さされ、ボクは思わず両手を上げた。
「にしても、蒼い薔薇なんてあったんだね〜」
「品種改良ジャと言ってオッタの」
「ああ。最近成功したらしくて、お裾分けだとさ」
「ふ〜ん…」
そっと薔薇の花弁に触れてみる。本当に綺麗な澄んだ蒼い色の花だと、ボクは感心した。
顔を上げて、目があったエルクにボクは尋ねる。
「で?これどうするの?」
「ん?」
返ってきたのは短い言葉と、にやっとした笑み。おお、これは何かを企んでいる目ですね、エルクさん。
「ヂーク解説」
指ぱっちん。
「蒼い薔薇ハ『不可能の象徴』、そシテ白い花、ダイヤモンドリリーの花言葉ハ」
「『また会う日を楽しみに』」
1人と1体が声を揃えたと同時。エルクの手からブーケが放たれる。
封印された湖。透明度は高いようなのに、底が見えない真っ青な湖。
弧を描いて、ブーケは湖に着水した。
「不可能の象徴を手放すってことにかけて、『また会うその日までに、不可能だと思われてたことを無くしてみせる』って決意表明。なかなかロマンチックだろ?ま、ヂークの意見なんだけど」
にっとエルクは笑い、ヂークもまた機嫌良さそうにプロペラをふるわせる。
「う〜ん、スケールが大きいねー。…ねえ、その花言葉、花売りさんが教えてくれたの?」
「もちろん、オレが知るわけねーだろ?ヂークも知らなかったみてーだしな」
「それもそうかー。あ、去年も、こんなのしたの?」
「まさか」
笑ってエルクは地面に腰を下ろした。
つられて、トランクを地面に下ろし、ポコもその隣に腰を下ろす。
そろって、湖を眺める。沈まない花びらが風に揺らいで、なんだか凄く幻想的だなーとのんびり考えてみる。
そう言うやいなや、まっすぐエルクの元に。
久しぶりの全力疾走。
流石に息が上がって、エルクの正面で、ボクは大きく息を吐き呼吸を整える。
「おいおい、大丈夫かよ」
そっと近づく気配は苦笑いとともに、背中をさすってくれて、わー、やっぱりエルクだーと妙に嬉しくなる。
「落ち着いたか?」
「うん。えっと、久しぶりだねー」
「んーっと、1年半振りぐらいか?たしか、お前の初酒場デビューを聴いたのが最後だった気がするし…」
「酒場デビュー?うん、その通りかな?」
相変わらずのエルクに、ボクは笑いがこみ上げてくる。1年半振りだろうが変わらない態度、関係。すごく好きだなーと思う。
そうして視線をエルクより少し上。彼の右肩の少し上空に浮かぶ四角の箱に移した。
「ヂークもお久しぶりだねー」
「そうジャな。元気でやってオルヨウじゃノ。活躍ハ聞いてオルゾ」
「ありがとー。ヂークも元気そうでなによりだよ」
「ウム」
「うん。それで、エルク。それは何?」
ちょっと気になってたんだよねと呟くと、エルクはきょとんと目を瞬かせる。
苦笑して右手を軽く振ると、エルクも自身の右手を見下ろし、ああと納得する。
右手には白い大きな反り返った花弁の花と蒼い薔薇のブーケ。
言っちゃ悪いが、エルクがブーケ?と首を捻りたくなる。
それを自覚しているのだろう。軽くブーケを振って、エルクは苦笑混じりにボクを見た。
「ああ、珍しいだろ」
「うん、とっても」
「即答かい」
そうツッコミをいれてくるもんだから、ボクは思わず吹き出した。
くつくつ笑いを噛みしめていると、むっと拗ねたような視線を送られる。
そうして、笑いがおさまらないボクに聞こえるように、深く深く息を吐いた。
「…ここに来る前に、昔会ったことのある花売り2人組に遭遇してよ。強引に渡された」
「昔会った?」
「ああ。7年ぶりぐれーかな。あんときもコスモスを強引に押しつけられてよー。ほんっと元気な姉ちゃん達だぜ」
そう苦笑するエルクに、ボクは嬉しかったんだなーとなんとなく思う。
大災害前に出会った人ともう一度会うことの出来る確率の低さ。それをふまえれば当然なんだけど。
おめーも会ったら絶対渡される!何故かビシッと指さされ、ボクは思わず両手を上げた。
「にしても、蒼い薔薇なんてあったんだね〜」
「品種改良ジャと言ってオッタの」
「ああ。最近成功したらしくて、お裾分けだとさ」
「ふ〜ん…」
そっと薔薇の花弁に触れてみる。本当に綺麗な澄んだ蒼い色の花だと、ボクは感心した。
顔を上げて、目があったエルクにボクは尋ねる。
「で?これどうするの?」
「ん?」
返ってきたのは短い言葉と、にやっとした笑み。おお、これは何かを企んでいる目ですね、エルクさん。
「ヂーク解説」
指ぱっちん。
「蒼い薔薇ハ『不可能の象徴』、そシテ白い花、ダイヤモンドリリーの花言葉ハ」
「『また会う日を楽しみに』」
1人と1体が声を揃えたと同時。エルクの手からブーケが放たれる。
封印された湖。透明度は高いようなのに、底が見えない真っ青な湖。
弧を描いて、ブーケは湖に着水した。
「不可能の象徴を手放すってことにかけて、『また会うその日までに、不可能だと思われてたことを無くしてみせる』って決意表明。なかなかロマンチックだろ?ま、ヂークの意見なんだけど」
にっとエルクは笑い、ヂークもまた機嫌良さそうにプロペラをふるわせる。
「う〜ん、スケールが大きいねー。…ねえ、その花言葉、花売りさんが教えてくれたの?」
「もちろん、オレが知るわけねーだろ?ヂークも知らなかったみてーだしな」
「それもそうかー。あ、去年も、こんなのしたの?」
「まさか」
笑ってエルクは地面に腰を下ろした。
つられて、トランクを地面に下ろし、ポコもその隣に腰を下ろす。
そろって、湖を眺める。沈まない花びらが風に揺らいで、なんだか凄く幻想的だなーとのんびり考えてみる。