封印の地にて
arc3後|2006.07.29
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「?ううん、ここにあるよ?」
 ごぞごぞと秘密のポッケからトランペットを取り出してみせると、エルクはあんぐりと口を開け、額に手をあてた。
「あー、そう。健在なわけ」
「うん、普段使ってるのじゃなくて、戦闘用なんだ〜」
「や、うん、それもあるけど」
「?なに?」
「…四次元ジャのう」
 ぼそっと呟かれたヂークの言葉に、ボクはやっと思い当たって、企業秘密だよーと指でペケ印を作った。
 あ、企業じゃなくて正確には私営だけどね。
 そうして、エルクがトランクを引っ込める前に、慌てて取っ手をつかむ。ペケ印を作ったせいで、手を離しちゃってた。
 ち、ばれたか。そう呟かれて、ボクは笑った。
「お、じゃあ腕落ちてないんだな?ここらのモンスターはそこそこ強いと思うし?」
「ソコソコの」
 そう言ってのけるのは、さすがはこの年でレジェンドハンターを名乗るだけはあるというところか。
 漁師さんはとても酷く真剣に忠告してくれたのですが。
「うーん、それが…全く遭遇しなくて」
 そうおどけて言うと、エルクが目を大きく開いた。
「うっそだろ!それはそれでスゲー」
「あはは…だから、腕は当然落ちてると思うよ?こればっかりはねー。修行する暇あったら練習すべし、だからね」
「ま、そりゃそうだな」
 エルクの隣のヂークは、時々妙な光線を出して、草を掻き分けていく。相変わらず、便利な機神だ。
 そのヂークが、エルクに囁く。
「それナラバ、エルク」
「ん。ポコ」
「ん?」
「オレが護衛してやろーか?有名音楽家さんは危険な場所にも行くんだろ?」
 にっと笑って、振り返ったエルクに、ボクは目を瞬かせた。
 そうして、勝手に頬がゆるむのを感じる。
「うん。なら、そうしてもらおうかな?あ、もちろん、ずっとじゃなくていいよー」
「おう、でけぇ事件あったらそっちに飛んでく。ま、そんときは別のハンターに頼めよ?最近物騒だし」
「うーん、ま、そうだね。じゃあ、それで」
 報酬はどれくらいがいい?と尋ねようとしたら、エルクがストップと手を翳す。
「もちろん、格安で請け負ってやるって」
「へ?えっと…格安?ケチだなー」
「こっちも商売なんでね」
 とか何とか言っちゃって、すんごい笑顔ですよ、エルクさん。
「つか、どーせタダでやってやるって言ったって、悪いよ〜とかなんとか言ってくるんだろ?」
 にまっと笑うエルクに、ボクは大きく目を見開いて、吹き出した。
 なるほど。たしかに、自分ならそうするだろうな。
「だから、先回り?」
「ったりめー」
 うーん、一本取られたなー。
 ボクは笑って、よろしくお願いしますとだけ頷いた。
「ま、安心しろ。あの決意表明を実行するっつー、オレが、護衛してやんだからさ。不可能なんてございません」
「はは、言うねー。じゃあ手始めに、ここから港までお願いします」
「おう」
 頷いたゴッドハンターの隣にまた並んで。
 青い空の下、黒い草の上を歩く。
 今日も世界は平和です。
 そっと空を見上げて、呟いた。
ということで、お題「2周年」でした〜。
墓参りではないってところがポイントなのです。明るい、明るいよ、この2人+ヂーク。
本当はもうちょっと思い出にふけっていただいてもよかったのですが…無理だったか。
何故か唐突に花言葉を使いたくなって、ブーケをだしたのですが…いらなかったかな?ま、でも、捧げたかったので、うん。
あ、ちなみに花売り2人組は「春コスモス」にでてきた素敵なお2人です(笑)いけいけ宣伝だー。
とにもかくにも、ありがとう2年目を込めて。

一応フリーにはしておきます。
無断持ち帰り、転載どーぞw