封印の地にて
arc3後|2006.07.29
あの町が沈んでるんだと思うと、感慨深い。
「……2年経つねー。去年も、キミ達以外に誰かここに来た?」
「いや、オレらだけ。他のヤツらは、それぞれの場所で身動きとれねーもんな。オレはその点根無し草だし。だから今日お前が来たのに、びっくりしたぜ?」
「ははは、本当は、去年も来たかったんだけどね」
そう含ませて言うと、案の定クエスチョンマークを頭の上に浮かべて首を傾げるエルクに、ちょっと待ってとことわってから、トランクに手をかける。
開けて、中から黒い機械を取りだす。なんだと不思議そうに見ているエルクに、それを手渡した。
「ん?お。集音機?」
あらゆる角度から眺めて、エルクがそう言うと、同じように見ていたヂークが小さく付け足す。
「…ダケじゃないノ」
「お、分かるかな?ヂーク。えっとね、去年は式典に参加していてね」
「式典?」
「うん、被災者に祈りを捧げる式典。で、ボクがその演奏を任されてるんだよね」
「え、マジ?おめー有名になったなー……って、ここにいていいのかよ!任されてるって、今年もだよな!?な、何時からだ!?」
「んー、1時からだから、あと10分もないかなってところ」
そう答えると、エルクは目を見開き、何か言おうとしてから、視線をさまよわせること数秒。あ、と口を開くと、納得したのか体を沈ませる。
「な〜る…何でそんな落ち着いてんのかと思ったら、その集音機、通信機もかねてて、その式典会場につながってるんだな?」
「そのとーり。会場に来てくださいって頼まれたんだけど、ちょっと我が儘きいていただきました」
「お偉いさんかよ…」
「えへへ。アークとククルに、ボクの成長した演奏聴いてもらいたくって」
「ふ〜ん…で、これ本当につながってんのか?って、あー、アカデミーとかいう組織が建物作ってたな…問題なさそう」
「ウム、電波がチャント流れてオルゾ」
「予想通りで一安心」
そっとトランクからラジオを取り出し、アンテナを伸ばしてスイッチを入れる。
ざざっと音がして、聞こえてくるのは澄んだ声。式典はちょうど始まったばかりのようだ。
声を聞いて、エルクが嬉しそうに身を乗り出してきた。
「なあ、シャンテの声だよな?」
「そのとーり。シャンテが司会とってくれてるんだ〜。あ、集音機オトヒロエル君、貸してくれる?」
「…すごい安直なネーミングだな」
ちなみにオトがファミリーネームで、ヒロエルがファーストネームなんだよと付け加えると、聞いてない聞いてないと首を振られた。
残念。
仕方なく、渡されたオトヒロエル君にもスイッチを入れ、口をよせて小声で呼びかける。
「こちらポコ、ポコでーす。聞こえますかー」
『……ポコか、無事着いたのだな?』
「うん、エルクも居るよー。あ、で、音どう?」
『問題ない。それでは合図を送ったらよろしく頼む』
「了解」
敬礼してみせ、スイッチを入れたまま、ボクはそれを地面に置いた。
黙って聞いていたエルクが、顎に手をおき、むむっと唸ってボクに首を傾けてみせる。
「なあ、今のもしかしてシュウか?」
「うん、会場運営だよー」
「げ。お、オレ何も聞いてねーぞ!なあ、ヂーク!」
「ウム、ワシにもそのヨウナ記録は残ッテおらん」
「ああ、それならきっと、君にはここに居て欲しかったんだって」
「…そういうもんか?」
「うん。さて準備準備」
今度はトランクからクラリネットを取り出して、慎重に組み立て始める。
すると、考え込んでいたエルクが、ふと思いついたように声をかけてきた。
「そういや…」
「うん?」
「ククルって、お前の演奏聴いたことあるのか?」
「うーん、ない、かも。エルク達が来てからもそうだったけど、忙しかったし…野宿だったからねー」
「あー、そりゃ無理だ」
うむうむ納得するエルクの膝に、ヂークが下りてくる。そうして、多分体があったなら同じように頷いた。
下りてきたヂークを捕まえて、エルクは頬を掻いた。
「……2年経つねー。去年も、キミ達以外に誰かここに来た?」
「いや、オレらだけ。他のヤツらは、それぞれの場所で身動きとれねーもんな。オレはその点根無し草だし。だから今日お前が来たのに、びっくりしたぜ?」
「ははは、本当は、去年も来たかったんだけどね」
そう含ませて言うと、案の定クエスチョンマークを頭の上に浮かべて首を傾げるエルクに、ちょっと待ってとことわってから、トランクに手をかける。
開けて、中から黒い機械を取りだす。なんだと不思議そうに見ているエルクに、それを手渡した。
「ん?お。集音機?」
あらゆる角度から眺めて、エルクがそう言うと、同じように見ていたヂークが小さく付け足す。
「…ダケじゃないノ」
「お、分かるかな?ヂーク。えっとね、去年は式典に参加していてね」
「式典?」
「うん、被災者に祈りを捧げる式典。で、ボクがその演奏を任されてるんだよね」
「え、マジ?おめー有名になったなー……って、ここにいていいのかよ!任されてるって、今年もだよな!?な、何時からだ!?」
「んー、1時からだから、あと10分もないかなってところ」
そう答えると、エルクは目を見開き、何か言おうとしてから、視線をさまよわせること数秒。あ、と口を開くと、納得したのか体を沈ませる。
「な〜る…何でそんな落ち着いてんのかと思ったら、その集音機、通信機もかねてて、その式典会場につながってるんだな?」
「そのとーり。会場に来てくださいって頼まれたんだけど、ちょっと我が儘きいていただきました」
「お偉いさんかよ…」
「えへへ。アークとククルに、ボクの成長した演奏聴いてもらいたくって」
「ふ〜ん…で、これ本当につながってんのか?って、あー、アカデミーとかいう組織が建物作ってたな…問題なさそう」
「ウム、電波がチャント流れてオルゾ」
「予想通りで一安心」
そっとトランクからラジオを取り出し、アンテナを伸ばしてスイッチを入れる。
ざざっと音がして、聞こえてくるのは澄んだ声。式典はちょうど始まったばかりのようだ。
声を聞いて、エルクが嬉しそうに身を乗り出してきた。
「なあ、シャンテの声だよな?」
「そのとーり。シャンテが司会とってくれてるんだ〜。あ、集音機オトヒロエル君、貸してくれる?」
「…すごい安直なネーミングだな」
ちなみにオトがファミリーネームで、ヒロエルがファーストネームなんだよと付け加えると、聞いてない聞いてないと首を振られた。
残念。
仕方なく、渡されたオトヒロエル君にもスイッチを入れ、口をよせて小声で呼びかける。
「こちらポコ、ポコでーす。聞こえますかー」
『……ポコか、無事着いたのだな?』
「うん、エルクも居るよー。あ、で、音どう?」
『問題ない。それでは合図を送ったらよろしく頼む』
「了解」
敬礼してみせ、スイッチを入れたまま、ボクはそれを地面に置いた。
黙って聞いていたエルクが、顎に手をおき、むむっと唸ってボクに首を傾けてみせる。
「なあ、今のもしかしてシュウか?」
「うん、会場運営だよー」
「げ。お、オレ何も聞いてねーぞ!なあ、ヂーク!」
「ウム、ワシにもそのヨウナ記録は残ッテおらん」
「ああ、それならきっと、君にはここに居て欲しかったんだって」
「…そういうもんか?」
「うん。さて準備準備」
今度はトランクからクラリネットを取り出して、慎重に組み立て始める。
すると、考え込んでいたエルクが、ふと思いついたように声をかけてきた。
「そういや…」
「うん?」
「ククルって、お前の演奏聴いたことあるのか?」
「うーん、ない、かも。エルク達が来てからもそうだったけど、忙しかったし…野宿だったからねー」
「あー、そりゃ無理だ」
うむうむ納得するエルクの膝に、ヂークが下りてくる。そうして、多分体があったなら同じように頷いた。
下りてきたヂークを捕まえて、エルクは頬を掻いた。