足りないもの
arc2|2007.02.12
「……………はぁ!?」
その素っ頓狂な声に、アークとトッシュは堪えきれないとばかりに爆笑し、ククルまでもくすくす笑い出す始末。エルクは自分の失態に顔を赤く染めた。
「え、う、」
なんとかしていいわけしないと!と焦っているのが丸わかりに、端的な言葉を紡いであたふたしているエルクを最初に可哀想だと思ったのは意外や意外トッシュだったようだ。
「まあ、俺様は10のころから飲んでたけどな」
彼なりの救いの一手に、エルクはキッと睨むことで答えた。むくわれない、むくわれないよ、親分。
「それで、どう?エルクも、いかが?」
次に立ち直ったククルは、にっこりと笑ったまま、彼女の横に置いてあった空のグラスをつきだしてきた。
それをジト目で見て、はぁぁぁと深い深い溜息をついたエルクは、3人が座る段差の手前まで歩く。
そしてグラスを受け取り、どすっと座り込む。
「ほら、いれろよ」
ふるように、一段上に座るトッシュへとグラスをかかげた尊大な態度。それでこそエルク、そう最後に復活したアークは内心で拍手喝采をし、トッシュは引きつった顔でそれでも言われたとおりに注いでやる。
8分目まで入れられて、エルクはなんとはなしにコップを揺すって、中の液体を回した。
「そういえば、エルクって酒飲めるのか?」
その様子を楽しそうに見ていたアークが切り出す。
「んー、匂いは平気なんだけどな。酒場によくいたし。でもコップ一杯ぐらいしか飲めねー」
「えーっと、大丈夫なのかしら?」
ことりと首を傾げて、ククルは尋ねる。明日も一味は世界平和活動を予定中だ。飲めないのに飲んでも大丈夫なのかと、差し障りはないのかとククルは訊いている。
エルクは全部酌み取って、小さく笑って頷く。
「へーき。寝付きやすくもなるしな」
「お、認めやがった」
「…なにをだよ、なにを」
弾んだ声に、エルクは嫌そうな表情を変えることなくトッシュを見上げる。
そんな、哀しいかな見慣れた表情にトッシュがしりごむはずがなく、むしろ笑いを崩さない。
「眠れなかったんだろ。やっぱガキだねー、エル君は」
トッシュはにやにや笑いながら、避けきれなかったエルクの頭をくしゃくしゃする。
が、それもほんの数コンマ。容赦ない蹴りを受けることになったトッシュは、痛さで体を沈めることになる。
「てめぇ……っ」
「は、自業自得だっ!人が気にしてることをサラリと言ってんじゃねーよ」
ふんっと鼻を鳴らし、その勢いのままグラスの中身を流し込んだ。
豪快な飲みっぷりにアークは制止させようと手を伸ばすが後の祭り。ぐいっと口元を拭って、エルクは顔をしかめる。
「まず…っ」
「あのなぁ、俺様につげさせておいて、よくもまあんな口をたたけるもんだな」
「んなこと言ったって、美味くねーし!」
なあ!と同意を求めるため、後ろに控える1、2歳年上の2人を勢い込んで見上げた。
もちろん、先程からコップを傾けている2人は苦笑するだけで、同意とは少し遠い反応だ。
「オメーの舌が悪い。それか、やっぱりガキんちょだからだな」
勝ったと言わんばかりに腕を組み、ふんぞり返って言うトッシュはとてもこの中で最年長と見えないから笑える。
とまあ、余裕があればエルクは思ったが、実際はピクッと片眉を器用にあげてみせると、そのまま何も言わずに俯いてしまった。
それに驚いたのは、美味しい派の3人全員だった。お互いに顔を見合わせあって、もう一度エルクを見る。
「どうした、エルク」
「トッシュ、あなたさっきからしつこいのよ」
「はあ!!?俺のせーかよ!!?」
大げさなほど驚くトッシュに、無言を貫いていたエルクが顔を上げて3人を振り返る。
その顔は、ほどよく朱に染まっていたり、目元が若干潤んでいたりしていて。
(((わー、酔ってる)))
そう思わせるには十分すぎた。
じーっと、それこそ穴の開くほどに3人を順番に眺めていったエルクは、小さく溜息をつく。
「どーせ、オレは子どもだよ。つげ」
さすがは弱酔っぱらい、なんの脈絡もない要求の出し方である。まあ、平素からこんな感じであるような気がしないでもないが。
コップを突き出され、少々罪悪感を持っていたトッシュは、彼にしてはとても珍しいことに、困ったようにククルとアークを見た。
それに2人は、示し合わせたかのように首を振り、エルクへと身を乗り出す。
その素っ頓狂な声に、アークとトッシュは堪えきれないとばかりに爆笑し、ククルまでもくすくす笑い出す始末。エルクは自分の失態に顔を赤く染めた。
「え、う、」
なんとかしていいわけしないと!と焦っているのが丸わかりに、端的な言葉を紡いであたふたしているエルクを最初に可哀想だと思ったのは意外や意外トッシュだったようだ。
「まあ、俺様は10のころから飲んでたけどな」
彼なりの救いの一手に、エルクはキッと睨むことで答えた。むくわれない、むくわれないよ、親分。
「それで、どう?エルクも、いかが?」
次に立ち直ったククルは、にっこりと笑ったまま、彼女の横に置いてあった空のグラスをつきだしてきた。
それをジト目で見て、はぁぁぁと深い深い溜息をついたエルクは、3人が座る段差の手前まで歩く。
そしてグラスを受け取り、どすっと座り込む。
「ほら、いれろよ」
ふるように、一段上に座るトッシュへとグラスをかかげた尊大な態度。それでこそエルク、そう最後に復活したアークは内心で拍手喝采をし、トッシュは引きつった顔でそれでも言われたとおりに注いでやる。
8分目まで入れられて、エルクはなんとはなしにコップを揺すって、中の液体を回した。
「そういえば、エルクって酒飲めるのか?」
その様子を楽しそうに見ていたアークが切り出す。
「んー、匂いは平気なんだけどな。酒場によくいたし。でもコップ一杯ぐらいしか飲めねー」
「えーっと、大丈夫なのかしら?」
ことりと首を傾げて、ククルは尋ねる。明日も一味は世界平和活動を予定中だ。飲めないのに飲んでも大丈夫なのかと、差し障りはないのかとククルは訊いている。
エルクは全部酌み取って、小さく笑って頷く。
「へーき。寝付きやすくもなるしな」
「お、認めやがった」
「…なにをだよ、なにを」
弾んだ声に、エルクは嫌そうな表情を変えることなくトッシュを見上げる。
そんな、哀しいかな見慣れた表情にトッシュがしりごむはずがなく、むしろ笑いを崩さない。
「眠れなかったんだろ。やっぱガキだねー、エル君は」
トッシュはにやにや笑いながら、避けきれなかったエルクの頭をくしゃくしゃする。
が、それもほんの数コンマ。容赦ない蹴りを受けることになったトッシュは、痛さで体を沈めることになる。
「てめぇ……っ」
「は、自業自得だっ!人が気にしてることをサラリと言ってんじゃねーよ」
ふんっと鼻を鳴らし、その勢いのままグラスの中身を流し込んだ。
豪快な飲みっぷりにアークは制止させようと手を伸ばすが後の祭り。ぐいっと口元を拭って、エルクは顔をしかめる。
「まず…っ」
「あのなぁ、俺様につげさせておいて、よくもまあんな口をたたけるもんだな」
「んなこと言ったって、美味くねーし!」
なあ!と同意を求めるため、後ろに控える1、2歳年上の2人を勢い込んで見上げた。
もちろん、先程からコップを傾けている2人は苦笑するだけで、同意とは少し遠い反応だ。
「オメーの舌が悪い。それか、やっぱりガキんちょだからだな」
勝ったと言わんばかりに腕を組み、ふんぞり返って言うトッシュはとてもこの中で最年長と見えないから笑える。
とまあ、余裕があればエルクは思ったが、実際はピクッと片眉を器用にあげてみせると、そのまま何も言わずに俯いてしまった。
それに驚いたのは、美味しい派の3人全員だった。お互いに顔を見合わせあって、もう一度エルクを見る。
「どうした、エルク」
「トッシュ、あなたさっきからしつこいのよ」
「はあ!!?俺のせーかよ!!?」
大げさなほど驚くトッシュに、無言を貫いていたエルクが顔を上げて3人を振り返る。
その顔は、ほどよく朱に染まっていたり、目元が若干潤んでいたりしていて。
(((わー、酔ってる)))
そう思わせるには十分すぎた。
じーっと、それこそ穴の開くほどに3人を順番に眺めていったエルクは、小さく溜息をつく。
「どーせ、オレは子どもだよ。つげ」
さすがは弱酔っぱらい、なんの脈絡もない要求の出し方である。まあ、平素からこんな感じであるような気がしないでもないが。
コップを突き出され、少々罪悪感を持っていたトッシュは、彼にしてはとても珍しいことに、困ったようにククルとアークを見た。
それに2人は、示し合わせたかのように首を振り、エルクへと身を乗り出す。