君と願いを
arc2|2007.10.08
なかなかまっすぐ引けない線に苦戦しながら書いたその願いは、ポコの眉間にしわをよせた。
『ポコの身長が伸びますように』
「………なにそれ、さっきまでの話聞いてた?」
分かりにくかろうが、一生懸命話したのだ。そりゃあまあ自分の背が伸びるのを祈ってくれるのはとても嬉しいことだ。でも今話したのはそういうことじゃない。自分1人が伸びることに意味はない。それならば今のままでいいと本気で思うのに。
憤慨ですとむしろ哀しいですと詰め寄ると、エルクは動じることなく、いつものお調子者な雰囲気をとりもどしてニッと笑った。
「おーちーつけって。ちゃんと聞いてるに決まってんだろ」
「じゃあなんで」
「だから」
ポムッとポコの頭に手を置いて、
「おめーが伸びればオレも伸びるんだろ?」
それはそれは爽やかに言ってのけたのだった。
「………………っ、そうくるか〜」
本日2度目の降参のポーズをとって、ポコは視線を斜め下にやる。
yesを超えた肯定、承知は、彼に出逢ってから何度目だろうか。
考えて数え上げてみると、その多さになぜだか笑いがこみ上げてきて、ポコはクツクツと笑った。
そして、そんな自分を見て、エルクは気分を害すどころか満足げに頷くのだから、もっと笑えてしまう。
ひとしきり笑って、目尻に浮かんだ涙を指で拭った。
「あー、笑った笑ったー。さてお互いにラスト1枚ですが、いかがいたしましょう?」
「んー…そりゃまあお前」
二人きりなのに、そっとエルクはポコに耳打ちした。
顔を見合わせてどうよ?と首を傾ける。
「ふふふ、王道行くね」
「そうか?」
苦笑を交えたエルクに頷いて、そのまま視線を窓の外にむけたポコは顔をしかめた。
「ありゃ雨降ってきた」
先程から雲が覆ってきたなと思っていたら。残念だなーと窓の近くへ寄っていくと、後ろから今のポコとは正反対の声が聞こえた。
「お、今がチャンスじゃん」
その弾んだ声と内容に、ポコは振り向く。
「?…なんで?」
通常七夕で願いを叶えてくれるのは彦星と織姫だ。年に一度しか会えないとされる2人が、何が楽しくて他人の願いを叶えてやるのか、甚だ疑問ではあるが、そういう話である。
それで雨なんて降ってしまったら、彼等は2年間出会えないわけで。叶えるどころか、むしろやつあたりをしてきてもおかしくないのでは。
そう素直に言うとエルクは笑う。
「オレはそう考えないんだよな」
「うん?」
「彦星と織姫って、"わし座のアルタイル"と"こと座のベガ"のことだろ?ぼーっと夜空見上げたって2人の距離が縮まってないよな」
うわー、なんかエルクの口から星座がでてくると面白いなー。とどうでもいいことを言いたくなったけれど、それよりもまず。
「………それ言っちゃ駄目でしょ」
それは幼子にサンタクロースについて話すときのような、触れてはならないところだと思うのだ。
ポコの言葉を理解したのか、エルクは困ったように笑う。まあ聞けって、そう前置きした。
「オレは、自分で見たことしか信じないんだ」
一瞬にして頭がクエスチョンマークで埋め尽くされた。
(う、えええええ?なにを唐突に…!)
そして当然エルクはそんなこと知ったことではなく、容量オーバーなポコに話を続ける。
「でも、見えないからってそれが真実じゃないわけじゃない。そういうことだ」
「……ごめん、ボク今頭弱い…」
プシューと、いい音をたてて壊れてしまいそうだ、某機神のように。
『ポコの身長が伸びますように』
「………なにそれ、さっきまでの話聞いてた?」
分かりにくかろうが、一生懸命話したのだ。そりゃあまあ自分の背が伸びるのを祈ってくれるのはとても嬉しいことだ。でも今話したのはそういうことじゃない。自分1人が伸びることに意味はない。それならば今のままでいいと本気で思うのに。
憤慨ですとむしろ哀しいですと詰め寄ると、エルクは動じることなく、いつものお調子者な雰囲気をとりもどしてニッと笑った。
「おーちーつけって。ちゃんと聞いてるに決まってんだろ」
「じゃあなんで」
「だから」
ポムッとポコの頭に手を置いて、
「おめーが伸びればオレも伸びるんだろ?」
それはそれは爽やかに言ってのけたのだった。
「………………っ、そうくるか〜」
本日2度目の降参のポーズをとって、ポコは視線を斜め下にやる。
yesを超えた肯定、承知は、彼に出逢ってから何度目だろうか。
考えて数え上げてみると、その多さになぜだか笑いがこみ上げてきて、ポコはクツクツと笑った。
そして、そんな自分を見て、エルクは気分を害すどころか満足げに頷くのだから、もっと笑えてしまう。
ひとしきり笑って、目尻に浮かんだ涙を指で拭った。
「あー、笑った笑ったー。さてお互いにラスト1枚ですが、いかがいたしましょう?」
「んー…そりゃまあお前」
二人きりなのに、そっとエルクはポコに耳打ちした。
顔を見合わせてどうよ?と首を傾ける。
「ふふふ、王道行くね」
「そうか?」
苦笑を交えたエルクに頷いて、そのまま視線を窓の外にむけたポコは顔をしかめた。
「ありゃ雨降ってきた」
先程から雲が覆ってきたなと思っていたら。残念だなーと窓の近くへ寄っていくと、後ろから今のポコとは正反対の声が聞こえた。
「お、今がチャンスじゃん」
その弾んだ声と内容に、ポコは振り向く。
「?…なんで?」
通常七夕で願いを叶えてくれるのは彦星と織姫だ。年に一度しか会えないとされる2人が、何が楽しくて他人の願いを叶えてやるのか、甚だ疑問ではあるが、そういう話である。
それで雨なんて降ってしまったら、彼等は2年間出会えないわけで。叶えるどころか、むしろやつあたりをしてきてもおかしくないのでは。
そう素直に言うとエルクは笑う。
「オレはそう考えないんだよな」
「うん?」
「彦星と織姫って、"わし座のアルタイル"と"こと座のベガ"のことだろ?ぼーっと夜空見上げたって2人の距離が縮まってないよな」
うわー、なんかエルクの口から星座がでてくると面白いなー。とどうでもいいことを言いたくなったけれど、それよりもまず。
「………それ言っちゃ駄目でしょ」
それは幼子にサンタクロースについて話すときのような、触れてはならないところだと思うのだ。
ポコの言葉を理解したのか、エルクは困ったように笑う。まあ聞けって、そう前置きした。
「オレは、自分で見たことしか信じないんだ」
一瞬にして頭がクエスチョンマークで埋め尽くされた。
(う、えええええ?なにを唐突に…!)
そして当然エルクはそんなこと知ったことではなく、容量オーバーなポコに話を続ける。
「でも、見えないからってそれが真実じゃないわけじゃない。そういうことだ」
「……ごめん、ボク今頭弱い…」
プシューと、いい音をたてて壊れてしまいそうだ、某機神のように。