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六百四拾   東京都知事選って変(2014/2/2)
六百参拾九  芸術志望者必見『かくかくしかじか』(2014/1/26)
六百参拾八  新PCセットアップ完了(2014/1/19)
六百参拾七  新PC悪戦苦闘(2014/1/12)
六百参拾六  辺野古承認(2014/1/1)
六百参拾五  今年のミステリー総括(2013/12/29)
六百参拾四  『11/22/63』感想(2013/12/21)
六百参拾参  微妙な『11/22/63』(2013/12/14)
六百参拾弐  防空識別圏知らず(2013/12/1)
六百参拾壱  悪事、成らず(2013/11/24)
六百参拾   AVキャプチャは終末でっせ(2013/11/17)
六百弐拾九  1Gbps環境完成(2013/11/9)
六百弐拾八  新PC購入大失敗(2013/11/3)
六百弐拾七  こんなのありえない(2013/10/26)
六百弐拾六  モネ 追憶と惜別の旅路(2013/10/14)
六百弐拾五  『11/22/63』(2013/10/6)
六百弐拾四  最強金属敗れる(2013/9/28)
六百弐拾参  ウィリアム・モリス登場(2013/9/22)
六百弐拾弐  『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』賛歌(2013/9/15)
六百弐拾壱  You Tube のおかげです(2013/9/7)




六百四拾   東京都知事選って変(2014/2/2)/TD>
 2月9日投票の都知事選が白けたことになっています。私はあまりニュースを見ないし、首都圏の空気なんて全然知らないので、単なる無責任な印象です。

 当確間違いなしといわれている舛添要一氏って、国会議員として不定見な行動をした方でしょう。泥船の自民党からバックれたわけだし、その結果、より立場を悪くして居場所を無くした、人心を読むのに暗い方ですね。普通だったら、恥ずかしくて表へ出にくいでしょうに。いえ、こういった厚顔だからこそ、政治家向きなのかもしれません。

 あげくに養育費をけちって男を下げていますね。金がないから払えないとかほざきながら、豪邸、別荘と景気のいい暮らしぶりです。意訳すると、自分が贅沢な暮らしをすると、後に残る金がないということなのでしょう。以前から恥知らずとは聞いていましたが、見事な屑っぷりです。
 これで演説をして、応援コールが沸くというのも理解不能です。


 細川氏は場違いもいいとこでしょう。そもそも東京に住んでなく、熊本で隠居暮らしをしていながら、いきなり東京都の治世をなんちゃらといっても、まったく説得力がありません。
 反原発の施策を進めるのなら、緻密なプランを示すべきです。ところが、なんにもないんじゃ話になりませんわ。後ろ盾の小泉氏は即廃止論者だけに迷惑な後援者になりかねません。脱原発には賛成です。東京都は最大の電気消費自治体です。言いかえると、最大の顧客ゆえに発言力もまた最大です。しかも、東電の大株主ですから、脱原発を唱えるにはベストポジションでしょう。

 湾岸でGCCTの高効率火力プラントもすでに進捗中です。その経験は今後さらに拡散してゆくでしょう。独自電源を持てば、力を背景にした発言も可能でしょう。脱原発には期待するところ大なだけに、実現への方途に確実を期していただきたいのです。


 それ以外の候補は色ものばかりでしょう。田母神氏にしても、まっとうな人間じゃないですよ。例の論文はひどかったですもん。くだらない内容だったもので、途中で読むのをやめました。張作霖爆殺事件を語るにコミンテルの陰謀だとか、筋の悪い話を持ち出していて、読むのが嫌になりました。なんといっても、巻末の参考文献一覧を見て笑っちゃいました。一般向け読み物ばかりじゃないですか。
 知人主催の公募で受賞しようなんて、公務員としてまともな感覚じゃないです。組織の幹部にあり、部下の服務に目を配る立場でようもやれるものです。田母神氏もまた、ある意味政治家向きなのかも知れません。厚顔というのが、政治家の資質に掲げられるというのは、哀しい話です。

 それ以外の候補者は、もうまったく意味不明の方々ばかりですね。これじゃあ、選ぶ人間がいない選挙になっちまいます。東京の方にとっては、選ぶべき人間がいるのでしょうか。
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六百参拾九  芸術志望者必見『かくかくしかじか』(2014/1/26)
 漫画家の東村アキコ氏の自叙伝『かくかくしかじか』が人気の模様です。いえ、ヒットしているかどうかは知りません。ただ、私の中で絶賛ヒット中なのです。

 宮崎県生まれの東村氏は、漫画家を志し、その実現のために美術大への進学を希望します。本格的なデッサン経験のない氏は、同級生の通う画塾へ入塾します。そこでの先生を始めとした生徒たちとの交歓や人間模様も興味深いものです。そしてなんといっても、先生のひたすら「描け!」には共感します。絵を志すなら、形はどうあれ、ひたすら描くことが大切です。

 私もガキの頃から絵が好きで、消し炭で以って、セメントの床にひたらすら描いていました、描いては消しを繰り返し、飽きることがありませんでした。就学前ともなれば、時間はたっぷりあります。朝から晩までよく飽きなかったものです。今の子どもなら、ゲームやらTVやらが隣にあるものだから、そういう仕儀にはなりようもないでしょう。なにもない時代だったからこそ、むしろ幸せだったのかもしれません。
 高校時代には、趣味で毎夜絵を描いていました。墨と筆だけで、リアルな絵を追求し、独自のテクニックも編み出しました。後に漫画家の小島剛石氏が、『子連れ狼』などで表現していたのと同じ技法です。私ゃ、決して真似したものではありません。

 第2巻では、金沢大学に入学した東村氏が学生生活をエンジョイする話です。学生なら絵の描き放題だろうって思うでしょう。ところが、そうじゃないんですね。もちろん絵も描きます。仲間がいて、彼らに引っ張られるってとこもあるし、仲間たちと展覧会を開くことが多々あります。そういったスケジュールに追われて絵を描かざるを得ませんから。
 でもね、それだけなんです。それ以上のことができないんですね。ついつい、学生生活をエンジョイ、いえ、ぶっちゃけ遊んじゃうんです。東村氏も遊び呆けます。そのあたりの心情が、もう手に取るように理解できます。結局、本来の目的であるマンガは一切書かずに終わります。

 で、刊行されたばかりの第3巻を読みました。卒業、ニート、アルバイト、就職、そして多忙の中でマンガ誌への投稿に至ります。この辺りの経緯もまた痛いほど納得です。私自身、多忙の中でこそ、むしろ絵を描いたり、小説を書いたりに集中できました。私に才能は皆無でしたが、東村氏には溢れるほどの才能とセンスがあったのでしょう。初投稿で編集者のお眼鏡に適いました。

 ここから、プロへの助走が始まります。OLをしながらの漫画家修行、この辺りは『ひまわり』にも描かれていますね。今後、どのような展開になるのか、楽しみな限りです。
 この第3巻では、芸術志向の人間のタイプが論じられていて、これは大正解です。紹介されている「脳内お花畑のピーターパン度」は次のとおりです。
油絵科>彫刻科>日本画科>工芸科>ビジュアルデザイン科>工業デザイン科>環境デザイン科
 納得でしょう。
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六百参拾八  新PCセットアップ完了(2014/1/19)
 新しいPCのセットアップが完了しました。今回のアップも、新環境からの書き込みです。

 色管理で苦労しました。昨秋、購入したときから違和感を覚えてはいたのです。i1でモニタ・プロファイルを作成し、指定しても正しい色が反映しなかったのです。主環境にするには、このままではいけません。

 i1の情報を調べると、どうもIntel統合チップで問題が起こるようです。Intelのビデオチップ管理プログラムが邪魔をするとのことなので、関係ファイルを「スタートアップ」から外しました。それでも、再起動すると、指定プロファイルがうまく反映しません。
 次に、i1提供の「DisplayProfile」プログラムをディスクトップに置き、これを使用すると見事に反映するようになりました。このプログラム上で該当プロファイルを指定すると確定するのです。起動のたびに指定しなければいけませんが、大した手間でもありませんん。

 一昨年から職場で使用しているHPのノートもIntel統合チップセットです。これも色合いに納得がいっていなかったので、同様にIntel関連ファイルを外すと満足のいく色再現が可能になりました。


 ビデオ・キャプチャを実現するため、32ビット仕様としています。そのため、OSが使用できるメモリ容量は3.45GBに留まります。統合チップセットのおかげで、ビデオに占有される容量が少な目で収まっています。3Dゲームをするわけでもないので、統合チップセットを選択したのは正解でした。3.45GBもあれば、メモリ不足の事態は起こらないでしょう。今のところ快適な状況です。

 思うようにいかないのはメール環境です。古くは、「Outlook Express」を利用していたものの、Windows Vista からなくなって、「Win Mail」に変更されました。これへのメール環境移行は簡単だったのですが、Windows7 からはそれもなくなり、「Windows Live Mail」に変わっています。アドレス帳の移行は問題ないものの、メールデータをうまく反映できません。移行そのものは成功しているのですが、live Mail側での設定が分かりません。
 きっと、やりようはあるかと思いますので、ぼちぼち調べてみます。「Outlook」は高機能すぎて使う気になりません。スケジュール管理なんて、いちいちPCでやる話でもないでしょう。こんなものにかかずらっていると、むしろ効率が悪くなります。Microsoftの云う「笑って お仕事」どころか、むしろ笑えなくなりますから。

 あと、設定に時間をかけたのは、デスクトップの表示関係です。文字サイズ、アイコンサイズなどのインターフェイスに凝りました。いえ、古いWindowsのシンプルな表示なのですが、読みやすさや美しさのバランスを追求しているのです。今後、長年月使用するものなので、使いやすさを追求するのは当然です。
 で、うまくいきません。Vista まではコントロールできていたことが、7 では融通が利かなくなっています。どうにもアイコンが小さくできないのです。画面が高解像度なので、必然的に文字サイズを大きくする必要があります。それに伴ってアイコンもでかくなり、そこから小さくしようにも、縮小方向には制限があるのです。設定を考えたMSのデザイナーは馬鹿ですね。MSらしいといえば、らしいのですけどね。
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六百参拾七  新PC悪戦苦闘(2014/1/12)
 家族が交通事故に遭い、入院したりで書き込みをさぼりました。サイト開始以来、3度目のサボリです。

 新しいPCにキャプチャ環境を導入するために、いろいろ苦心しました。で、すべて駄目で、道は塞がれた状態でした。
 そこで、旧キャプチャ・カードを利用するために、PCIポートを備えたマザーボードを本日入手しました。某ショップを訪問し、昨年秋に購入したPCのマザー交換を説明すると、ケースに適合し、該当チップセット搭載のマザーを紹介してくれました。予めWebで調べていた製品は在庫がなく、メーカーに注文すると1週間かかると言うので、店頭にあった高目のAsusuのH87M-PLUSを購入しました。
 早速、パーツを移行しましたが、多分どこかに不都合あるみたいです。組み上がって電源を入れても起動しません。ファンは回っているし、ボード上の電源ランプは点灯しています。

 どこが問題なのか見当もつきません。まず、CPUが動作していない可能性があります。実はグリスの手配を忘れ、省略しているのです。ソケットへの嵌め込みは上手くいってるはずですから。

 あと、怪しいのはボードの破損です。コネクタ類を抜き差しするのに、結構力を加えています。マザーが湾曲するくらい押さえたりしました。

 原因が分からないので、もう一度マザーを取り出して、最初から接続をやり直そうと思います。細かい仕事なので、がさつな私には向かない作業です。鬱陶しいけど、やらないわけにはいきません。あ〜、面倒くせえ。

 駄目だったら、販売店に相談し、有料でもいいからチェックしてもらいます。


1.13追加

 すべて解決しました。CPUかメモリが怪しいかと。まずメモリ・モジュールを何度も抜き差したところ、BIOS(EFI)が起動しました。そこで、CPUファンエラーが出ており、CPU温度が140℃とかのとんでもないことになっていました。
 すぐに販売店を訪ねグリスを購入し、ファンのセットアップをやり直したところ、あっさりWindowsが立ち上がりました。
 次に例のアクティベーションが“偽造Windows”だとぬかしやがります。電話サポートで再アクティベーションを行って無事使用できるようになりました。

 そこから、いろいろ再セットアップを進めているところで、キャプチャも動作し始めました。で、ここで著作権の高い壁に阻まれているところです。旧PCのAVデータを引越ししても、再生できないのです。
 まったくふざけた仕様です。同じPC環境内(内部ストレージ間)であれば、コピーは可能であり、AVデータの整理もできます。しかし、新PCで録り溜めデータを再整理しようにも不可なのです。正規ユーザによる、まっとうな利用環境でさえ、コピーを許さないというのは、いくならんでもひどいじゃないですか。

 仕方ないので、旧環境のデータは旧PCで視聴し、新たな録画は新PCで視聴します。新PCには、2TBのHDDを準備しているので、当面どころか、PC破棄まで持つでしょう。問題はHDDがいつまで保つかです。
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六百参拾六  辺野古承認(2014/1/1)
 2014年を迎え、皆様おめでとうございます。今年の景気は順調に推移するものの、消費税0.8%導入によって水をかけられることになるかと思います。
 景気はともかく、消費税アップによる物価上昇は一概に悪いともいえません。賃金上昇を伴うなら、むしろ歓迎してもよいかと思います。建築・建設業界の人手不足は深刻です。給排水、電気工事などの周辺業界もまた同様で、仕事はあるものの受注できないとの悲鳴、要望を数多耳にしました。昨年秋、12業種の業界幹部を招いて会合を持ったところ、全業種で深刻な人手不足の様相を聞かされました。

 当方は人材供給を任ずる業務ゆえ、有り難い話ではあったのですが、賃金面での好転が実現しないと難しい話なのです。

 福島の件は、当地の鉄鋼関係にも影響をもたらしています。今後、いかように物事が推移するのか、素人には判じ難い難しさがあります。


 外交、国防については、年末に絶望的な展開がありました。
 仲井真知事が辺野古への新基地建設を承認しました。この件に関する知事の説明はグダグダでしたね。ああまで夜郎自大っぷりを晒して責められないのは、沖縄ならではでしょう。他県であれば到底許されません。

 普天間基地の辺野古への移設とか、相も変わらず国防が利権に左右される状況が情けないです。と同時に、日本の国防が変わりようもないことへの諦観もあります。

 ニュースで苦節17年とか伝えていましたが、無理編を選択したからこその17年でしょう。嘉手納での合同管制は可能との評価があったものを、利権狙いの基地新設とか国民を舐めています。
 辺野古ビーチを埋め立てて本当にいいのですか。基地で潤う地域にするのでなく、観光資源として活用する方が健全な沖縄振興だと思います。

 基地建設費だけでなく、地元対策として費やした振興経費も余計です。巨額の建設費と無駄な交付金、そして巨大な環境破壊、すべては嘉手納統合をご破算にして始められたものです。日本にまともな国防議論はないのですね。いえ、今さらですけど。

 尖閣や島嶼防衛を睨んでの大綱のいいかげんさ、海兵隊を沖縄に置くことに関する防衛省の作文は、ほとんど痴呆が入ってるんじゃないかと思わせるものです。
 官僚が施策に対する整合性を持たせるため、辻褄併せの作文をすることは理解できます。しかし、防衛省のそれは、根拠も示さないし、整合性も取れていません。防衛省が二流官庁といわれる所以ですね。

 そんなものを元に税金が投入されることに異議を唱えることもできません。国会の外交防衛委員会なんて機能していませんから。アメリカ議会なんか、根拠が明確でない、評価が甘いなどの理由で予算を凍結しますからね。ちょっとアメリカ議会が羨ましいです。
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六百参拾五  今年のミステリー総括(2013/12/29)
第1位 『冬のフロスト』R・D・ウィングフィールド(創元社推理文庫)

 とにかく待たされました。フロスト・シリーズの刊行時期は次のとおりです。
 『クリスマスのフロスト』(1,994年)
 『フロスト日和』(1,997年)
 『夜のフロスト』(2,001年)
 『フロスト気質』(2,008年)
 『冬のフロスト』(2,013年)
 5年越しのラブコールだったわけです。翻訳に長年月がかかるのも頷けます。ウィット、皮肉、侮言、下ネタなどが満載で、イギリス下層階級の下卑た台詞をうまく再現しています。翻訳は大変だったことでしょう。芹澤恵氏の腕が光っています。
 本当に待った甲斐がありました。期待はまったく裏切られません。今までにない新しい設定が活きています。
 これまでのフロスト・シリーズは、有能な部下が配され、出鱈目な上司に愛想を尽かしながら、最後にフロストの正義とものごとの本質に迫る能力に敬服するパターンでした。今回は逆をいってるわけです。マレット署長のええ格好しいのおかげで、デントン署はかつてない人員不足に陥ります。そんな中での難事件、使えない部下、フロストはこの苦境にいかに立ち向かうか。

 不思議なのは、『このミステリーがすごい2,014』において、本作が3位に終わっていることです。残念です。

第2位 『-クリフトン年代記 第1部-時のみぞ知る』『-クリフトン年代記 第2部-死もまた我等なり』
ジェフリー・アーチャー(新潮文庫)

 アーチャー久々のサーガです。70歳になったアーチャーが、『ケインとアベル』の再来として下版したものです、イギリスではすでに大ベストセラーになっています。それもそのはずの面白さです。
 複雑な人間関係、込み入った経歴、綾なす事件の連続など、まったく飽きさせません。アーチャーは老いることをしりません。

 さすがに、『ケインとアベル』の数奇な運命のもたらす感動には敵いません。むしろ、『チェルシーテラスへの道』に似た趣でしょうか。
 これまた不思議なのですが、『このミステリーがすごい2,014』において、本作は22位以内にも入っていません。それどころか53位までにさえ入っていないのです。これって、なんなのでしょうか。

第3位 『宰領』今野敏(新潮社)

 これまた27位という下位に甘んじています。なんででしょうか。第2位の『教場』なんて、言っちゃ悪いけど小説としての叙述がよろしくないかと思います。

 快調に版を重ねる“隠蔽捜査シリーズ”第5弾です。例によっての竜崎節満載で、今回は警視庁と神奈川県警合同捜査の両指揮をさえ執ります。
 タイトルに相応しい宰領ぶりを発揮し、読者の溜飲を下げるとともに、心地よいカタルシスを与えてくれます。不満点は、事件の真相を炙り出す役割を強行犯係の戸高に与えていただきたかったことです。彼が真相に気づくのであれば、その優秀さゆえ自然な流れを生み出していたかと思います。

第4位 『11/22/63』スティーブン・キング(文藝春秋)

 先週のコラムに書いたとおりです。私には4位どまりです。


 今年も期待に違わぬ力作を堪能しました。その一方で、せっかく購入しながらも、がっかりさせられた本もありました。
その一 『人質』佐々木譲(角川春樹事務所)

 私の好きな“北海道警シリーズ”第6弾です。今回は飲食店立て籠もり事件という小粒さがもの足りなかったです。

その二 『スケアクロウ』マイクル・コナリー(講談社文庫)

 いえ、十分に面白かったのですが、ボッシュやハラーのキャラ立ちに比べて物足りなさを覚えます。

その三 『騙し絵の囚人』ロバート・ゴダード(講談社文庫)

 もう、ゴダードにはなにも期待していません。ここ10年間のゴダードの低調ぶりからすると、本作はむしろ及第点といってもよいかもしれません。
 しかしねえ、初期3部作を堪能するとともに、ゴダード・ショックを味わった身としては得心がいきません。本当の復活を祈っています。

 ミステリー作家諸氏、来年も楽しませていただきます。よろしくお願いします。 
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六百参拾四  『11/22/63』感想(2013/12/21)
 本作はタイムトラベルものです。タイムトラベルには常に矛盾がつきまといます。本作もまた、違和感を抱えたまま紡がれています。
 さらに、J.F.ケネディ暗殺阻止という、タイムトラベル定番の題材だけに余計に難しくしています。キングは本作のタイムルールを次のように記しています。

 過去が強情で改変を拒むのは、亀の甲羅が硬くて変形しにくいのとおなじ理由による、ということだ ― どちらの場合にも、内側の生きている肉の部分は柔らかく、かつ無防備なのだ。

 これに続けて、日々の暮らしにも様々な選択と可能性があり、ギターの弦が紡ぎだす音も弦を増やすことによって、音が無限に増えてゆくとしています。

 整理すると、過去の改変は困難である。しかし、不可能ではないとしています。そして、バタフライ効果によって未来もまた変更されるというものです。
 その辺りの匙加減は絶妙なのですが、やはり違和感を感じさせます。例えば、ケネディ暗殺阻止に伴う未来の変化は、いきなりハルマゲドン級のカタストロフィーをもたらしています。いくらなんでも、それはないんじゃない、です。それも、人知を超えた地球全体の地殻変動を惹き起こすともなると異様です。それまで緻密な展開を見せていた小説空間がいきなり説得力を失ってしまいます。


 タイムトラベルものでケネディ暗殺を扱った小説といえば、『リプレィ』があります。『リプレイ』については、捕物帖で評しています。
 『リプレィ』では暗殺阻止に失敗します。オズワルドの排除に成功したものの、別の不明な人物によって射殺されます。失敗の原因は、過去が改変を拒んだのでなく、大掛かりな暗殺プロジェクトがリカバリー策を講じていたためとしていて、こちらの方が説得力がありますね。
 『リプレィ』でも過去はどんどん改変されます。幾度目かの過去の旅において、世界が戦争とテロで崩壊の危機に瀕するケースさえ描いていますから。

 『リプレィ』の小説空間は整合性が取れているのに対し、『11/22/63』は乱れています。もともと過去へ遡及するのは物理的に不可能です。それをグダグダ説明しようとすると無理や矛盾が噴出してしまいます。『リプレィ』では時間のサイクルの狭間に巻き込まれ、主人公自身は為すすべもありません。このように諦観のなかで淡々とストーリーを展開させるのが正解でしょう。
 下手にキングのように説明を加えようとすると余計に具合が悪くなります。その上、時空の管理を担う謎の人物を登場させたりするものだから、整合性の欠片もなくなります。あれは余計というか、邪魔なキャラクタでした。

 一方で、キングは過去の生活を丹念に描き出し、50年代から60年代初頭までの古きよきアメリカを再体験させてくれます。この辺りがアメリカ読者の共感を呼ぶ所以なのでしょう。
 文句なく面白い小説ではありますが、“このミス'2014”で第1位ってのは褒めすぎでしょう。むしろ第3位の『冬のフロスト』こそがトップではないかと個人的には思っています。
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六百参拾参  微妙な『11/22/63』(2013/12/14)
 今秋の読書はしんどかったです。なにせ、大作が目白押しで読むのに苦労しました。嬉しい苦労ではありましたが。
 スティーブン・キングの『11/22/63』、ジェフリー・アーチャーの『-クリフトン年代記 第2部-死もまた我等なり』、キングの『アンダー・ザ・ドーム』の文庫化と積読状態が長く続きました。積読の原因は、キングの新作本を探していて、ジェームズ・エルロイの『アンダーワールド USA』を見つけたためです。2年前に出版されたことを知らなかったのです。
 Under Word USA(現代アメリカ裏面史)3部作は、『アメリカン・タブロイド』、『アメリカン・デス・トリップ』そして本作です。前作が刊行されたのが2,001年で、ずっと完結編を待ちわびてました。見つけたときは、驚きとともに狂喜しました。12年目にして読むことができたわけです。

 これを読むのに1か月以上かかりました。とにかく大冊で、しかも登場人物が多く、紛らわしい名前の同系人物が複数いたりで把握し辛いのです。
 間が空くと細部を忘れてしまいます。仕方なく旧頁を読み返すこと頻りで、遅々として進まなかったものです。

 アンダーワールドUSA3部作については、『ビッグ・ノーウェア』で触れています。書評の中で、本作の内容を予想しています。

 完結編は来年の刊行でしょうか。ニクソン政権時代を背景に、「アメリカン・デス・トリップ」の主人公の一人であるウェインがニクソンの裏仕事をこなすのでしょう。激化するベトナム戦争、激化する反戦運動、そしてパリ和平。マフィアの中南米への浸透、これを支援するように深みにはまっていくアメリカの中南米政策。民主党盗聴と暴露、そしてニクソン失脚。このような背景のもとで、個性的な登場人物がアメリカの暗部とともに破滅してゆくのでしょうね。

 この予想は大きく外れました。中南米への浸透の件は前半でテーマになっていましたが、後半はまったく違っていました。ウェインはFBIと関係なく、もっぱらマフィアやヒューズの下働きを務めます。そして、現地人の人権を蹂躙するマフィアに対して反旗を翻すという自殺行為に及びます。

 後半のテーマは、赤化に対する異常な恐怖心を持つフーバーが、国内の黒人組織「黒人種族同盟」「マウマウ解放戦線」などの解体を目指し、ドワイトが裏仕事を一手に引き受けるというものです。予想していたニクソンの裏仕事はやるものの、民主党盗聴案件はCIAに譲ります。ですから、ニクソンがらみの話は少な目です。

 また、ジミー・フォッファも獄中のままで、出獄後の例の失踪事件は採用されていません。個人的には期待していました。エルロイがフォッファ事件をいかように料理するか楽しみにしていたのですが。

 ドワイトもまた、ウェインと同じく破滅の道を辿り、J.F.ケネディ暗殺への道程から始まったエルロイ版の現代アメリカ裏面史は幕を閉じました。誰にも薦められる小説ではないにしろ、読めばフィクショではあれ、その圧倒的な圧力に脳が麻痺状態に追い込まれます。こんな芸当ができるのは、エルロイただ一人でしょう。


 さて、エルロイじゃなく、キングを語る予定でした。これもまた大作で、2週間以上かかりました。ケネディ暗殺を、キングはどう料理したのか、本作については次週に書き留めます。
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六百参拾弐  防空識別圏知らず(2013/12/1)
 映像キャプチャは諦めていません。HDCP対応可能なカードを探しています。購入者のレビューを参考にしながら、心積もりをしているところです。

 先週の大きなニュースといえば、中国による防空識別権圏設定ですね。別に中国が独自に設定するのは勝手でしょう。ただ、空域を設定する際に、周辺国と擦り合わせをしておけばよいのです。それを考えもなし、管理能力もなしに適当に設定するから恥をかくのです。

 防空識別圏の意義としては、単に領空を護るためのものというだけでなく、空域管理という責任が生じるものです。今の中国に、広範囲の空域を管理する能力も運用実績もありません。さっそく、米軍機の運航をトレースしていたとか、スクランブルをかけたとかの発表をしたものの、そんな事実はないと反論されて恥晒しとなりました。

 中国の野郎自大っぷりに対して、やたら危機感を煽る向きがありますが、大した問題でないと冷静な対応をしましょう。こういう行為によって、むしろ中国への国際的な信頼とか信用とかが失墜するわけですから。
 日中間の領土係争について、中国側の信憑性を毀損するわけですから、むしろ鷹揚に構えましょう。


 尖閣や離島をネタにして、陸海空の装備増や新編成が景気よく語られています。しかし、どうなんでしょう。むしろ日本側は海保主体で、粛々と領海警備と警察権行使を務めるのが正しい領土保全のあり様だと思います。
 ですから、自衛隊増強より、海保11管区の大幅機能強化を図っていただきたいです。できうるなら、常時尖閣周辺を遊弋するくらいの活動ができたら、より明確に実効支配を訴求できるかと思います。いえ、尖閣に施設を設置して活動するのが正解ではありましょう。気象観測施設とか、救難施設とかね。

 現今の状況に対して、外務省には責任を以って対処していただきたいです。東京都による購入を妨げ、国有化という領土主張構図を鮮明にしたのは、他ならぬ外務省なのですから。主張するならするでよいのですが、、相も変わらず上陸禁止措置を採っています。日本人が上陸もできない状況では、強固な実効支配も成立させ難い」ところです。

 外務省は、なぜか本質的な領土保全路線に踏み出していただけません。あくまで、見ザル、言わザル、聞かザルで、将来での帰趨がどうなろうと知ったこっちゃないという態度に見えます。
 日中国交回復以来のややこしい事情もあり、外務省に同情すべき点もあります。しかし、それを理由に現行の対応方法を正当化できるものでもないでしょう。外務省の覚醒を望んで止みません。
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六百参拾壱  悪事、成らず(2013/11/24)
 期待のHDMI分配器は、残念な結果に終わりました。購入したのは、Y-アダプタ 1080p FullHD1.3bです。
 レビューに書かれているとおり、この製品には博打の趣があります。EU製なのでしょうか。電源コネクタがEU仕様のものが送られてくる可能性がかなりあるそうです。幸い、私は日本仕様でした。
 購入ユーザーの苦情に応え、EU仕様に適合するアダプタの紹介と、購入費用の払い戻しの案内が同梱されていました。

 それと肝心の点です。HDCP保護プログラムをなんちゃらする機能があるかどうか、製品固有の当り外れがあるみたいです。で、私のものは駄目でした。HDMI経由の信号は検出するものの、映像信号として認識してくれません。
 MONSTER X2は定評のあるカードみたいです。HDCP未対応のこのカードで数多のユーザが、著作権保護信号の取り込みにチャレンジしています。今回購入の分配器で以って、PS3映像入力に成功しているユーザがいます。成功者のサイトを見ると、極めて高精細な映像取り込みを実現しています。それだけに期待も大きかったのですが、残念な結果となりました。

 HD映像のキャプチャは、とにかく分からないことだらけです。今回の分配器も失敗なのかどうか確定的なことは言えません。ひょっとすると、HDCPなんちゃらには成功しているのに、他の著作権保護プログラムに阻まれているのかもしれません。

 例えば、以前のI・Oデータ製のアナログ・キャプチャでも、コンポジット入力ゆえ録画は問題ありません。しかし、録画データは一切の加工はできません。また、PC内蔵HDD内での移動やコピーは可能ですが、それ以外の場所に置くと一切再生できません。
 その際、著作権保護のため不可のメッセージが出ます。この保護にHDCPは関係ありません。アナログ経由のSD映像ですからね。

 録画を諦めるわけにはいきません。今後さらに、いろいろ試したいと考えています。
 今さら、PCと別にAV環境を構築する気はありません。7年前にPCとAVを統合し、その利便性とスペース効率に慣れた身としては、今さら不便で場所を取る旧環境には戻れましぇん。

 私を始めとして、全国のHDキャプチャに挑んでいる有志たちは、決して悪事に手を染めたくてやっているのではありません。当然、金を惜しんでいるのでもありません。それどころか、むしろ積極的に投資しているのです。すべては、ユーザに迷惑をかけることをなんとも思わず、データ保存を無意味なものとしようとする一部の業界関係者の被害者ともいえるでしょう。
 何度も言います。デジタル・データは保存性が最悪です。アナログ・データこそが、利便性が高く、永続性が高く、最も有効なデータ活用方法です。
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六百参拾   AVキャプチャは終末でっせ(2013/11/17)
 I・Oデータの旧キャプチャカードをPCI Express→PCI変換カードで利用するのは無理でした。PC側がデバイスを見つけているのは間違いないのですが、正常な認識が為されていません。ドライバのインストールが完了できないのです。覚悟していたとはいえ、力が抜けました

 そこで、いろいろ調べると悩ましい話ばかりでした。もともとHDCP対応キャプチャカードは、数が少なかったかと思います。今ではほぼ全滅に近い状態でしょう。
 そもそも、所有しているI・Oデータのカードもアナログ・キャプチャです。HDMIからのHDキャプチャは、不可なのでしょう。今年1月の法改正で、HDCP対応キャプチャは不可になったとの話も聞きます。とにかく、よく分からない世界です。

 今後のキャプチャ手法として、遊んでいるというか、購入したものの使えないMONSTER X2を再利用しようと考えています。これはHDMIとD入力が可能です。ただし、HDCP対応でないので、HDMIからのTV入力は当然のこと不可です。D端子からは入力できるものの、録画はできません。DであればHDCPはクリアできますが、放送側が仕込んでいる著作権保護機能に阻害される模様です。それもあって、成算はないのですが、もう一度足掻いてみます。

 海外製のHDMI分配器に面白い製品があるそうです。うまくいくかどうかは、やってみなければ分かりません。失敗したところで、安価な製品ですから惜しくありません。すでにリストアップは終えています。該当商品が入荷し、受付開始を待っているところです。

 結果については一切報告できません。基本的には違法商品ですからね。違法なんだから、“基本的に違法”っていう言い方はおかしいとのご指摘もありましょう。しかし、HDCPそのものが相当な問題を孕んだシロモノじゃないですか。
 こいつのお陰で、データがデータとしての役割を果たせないのです。私の保存しているデータも、PCを買い換えると利用できないのです。大切な保存データがデータとして扱えないのですよ。そんなのおかしいでしょう。
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六百弐拾九  1Gbps環境完成(2013/11/9)
 ビデオ・キャプチャは、やはり旧カードを活用することにします。新マシンに新しいカードを入れると、既存のMP2ライブラリを見る際に、旧マシンを別途起動しなくてはなりません。さすがに使い勝手が悪いかと思います。
 そこで、PCI ExpressとPCIの変換スロットを注文しました。うまく動作するかどうかは、なにぶんやってみなきゃ分からないでしょうね。両者の動作速度がまったく異なっているので、同期はうまくいくものでしょうか。今は製作者であるガレージメーカーを信じるばかりです。

 先週、大量のデータをネットワーク越しにコピーしたところ、6時間ほどかかりました。100Mbpsでは致し方ありません。実質、11MB/秒強の転送速度でしたから。

 本日、バッファローの「BHR-4GRV」を購入しました。515Mbpsの最大スループットとなっています。光ケーブルの方は、すでに昨年から1Gbpsを契約しています。インターネットのダウンロード速度については、以前の100Mbpsで不満はなかったし、1Gbpsに拡張しても実利はないでしょうね。なにせ、アクセス先の各サーバへの経路が遅すぎますから。

 また、LANケーブルもカテゴリー6Aのものに買い換えました。久しぶりにパーツを見て廻りましたが、ずいぶん安くなっています。ケーブルにしても、帯域拡大に合わせてシールドに気を使った設計になっているはずです。それでも、十数年前に比べたら数分の一の低価格です。メーカーは儲けなんてほとんど無いでしょうね。ちなみにELECOMの「LD-GFAT」です。某量販店での購入で、Web掲載価格のほぼ半額でした。

 スイッチング・ハブや新ケーブルの実力を測ることはできないでしょう。なにせ、HDDの読み出しや書き込み速度を上回っています、HDDそのものの速度がネックでしょう。


 新マシンと新ネットワーク環境に触れていると感慨深いものがあります。20年前、パソコンを利用始めた頃と今とをついつい比べてしまいます。CPU性能は単純計算で120倍、メモリ量は140倍、ディスク容量は8,000倍にもなります。ただ、HDDのアクセス速度だけは、10数倍ってとこでしょうか。もっとも、今はCドライブにSSDを装備しますから30倍くらいはいってますね。

 17年ほど前、3Dに取り組んだことがあります。データをつくり込んで複雑になると、CPUパワーが圧倒的に不足し、やってられなくなりました。3Dのお勉強はその時点で打ち切りました。そのとき現行マシンが手元にあれば、なんの不満もなく続けていたことでしょう。尤も、私自身がもうまったくやる気を失くしています。とかく、世の中はうまくいかないものです。
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六百弐拾八  新PC購入大失敗(2013/11/3)
 10月19日にWindows7の生産終了が報じられました。現在市場に出回っているWndows7が無くなれば、Windows7は終了となります。なお、Windows7のサポート期限は「2020年1月14日」まで延長されているそうですね。
 この報を受け、新PCの購入を検討しました。現行マシンに不満はありません。しかし、近い将来での故障や不具合で新しい機器が必要となるのは明白です。現行マシンの寿命は、6年8か月を数えました。前のAthlonマシンを6年半使用したことを考えると、いい時分ではありましょう。
 前マシンのOSは、Windows Vistaでした。所謂、NT6.0ですね。その後の7も8も、すべてNT6.0ですから、OS側の負荷は大して変わらないのです。機器買い替えの必要性が低い理由です。ただ、今のうちにWindows7マシンを買っておかないと、いざというときにWindows8を買う羽目になったら目も当てられません。

 買い替えの際に問題なるのは、TV映像をいかに取り込んで録画環境を構築するかです。前回購入の際にもこれに悩まされました。
 いろいろ考えた結論は、現行録画環境をそのまま持ち込むことです。なにせ、著作権ゴリゴリのデジタル世界では、データを読めるかどうかが最優先事項ですから。逆説的に言うと、デジタルでは互換性を諦めてかかるべきなのでしょう。ただ、今回は互換性優先としました。

 すると、求められるのはWindows7の32ビット版一択となります。使用しているキャプチャ・カードは、I・Oデータ社製のGV-MVP/GX2です。すでに録り溜めしているボクシング・ライブラリがたくさんあり、捨てることはできません。

 Windows7 Pro 32ビット版
 CPU‥‥i7(3.1-3.9GHz)
 メモリ‥‥4GB
 SSD256GB
 HDD2TB
 B-rayリード
 これを統合チップセットのミニタワーで、昨日購入しました。

 で、大失敗しました。前回は手違いがあってはならないと、慎重に調べに調べました。しかし、今回は舐めていました。
 前のマシンからキャプチャ・カードを外した際に嫌な予感がしました。ソケットがPCIだったのです。忘れていました。なにせ、普段は見えないものですから油断していました。新規マシンにPCIソケットは装備されていません。泣きましたよ。
 カードは元に戻し、旧マシン主体の使用を続けます。俺って、本当に馬鹿。
 仕方ありません。新マシン用のカードを別途探します。新しいマシンは流石です。8スレッドの威力を囲碁ゲームで体感しています。思考を始めた途端、全スレッドがフル活動を始めます。思考時間は前マシンの1/4くらいでしょうか。このパワーを活用しない手ははありません、なんとか新しい録画環境を構築したいと考えています。

 もう一点、嬉しかったのはメモリ使用量です。本来であれば、3.25GBのはずが、3.48GBが対象となっています。この辺の仕様がどうにも理解できません。

 あと、システム全体でのパフォーマンス不足の部分が気になり始めました。まず、ルータの速度不足です。光通信の下りは1Gbbsを契約しています。なのにルータは100Mbbsのままです。そのため、LANの通信速度まで抑え込まれています。今回、旧環境のデータを新環境にコピーしたところ、6時間ほどかかりました。これでは動画主体の大容量データの扱いに不都合があります。新調しなくてはね。
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六百弐拾七  こんなのありえない(2013/10/26)
 「瀬戸内国際芸術祭2013」の関連イベントとして、トンデモなデコレーションが登場しています。

朝日新聞DIGITAL(3月12日18時11分)より

 真家の荒木経惟(のぶよし)さんの作品を車体に描いた「アラーキー列車」が12日、香川県内のJR線で運行を始めた。20日開幕する瀬戸内国際芸術祭の作品の一つ。

 妖艶(ようえん)な花々や赤ちゃんの人形などが車体全面を埋める。荒木さんの作品に共通する「エロス(性、生)とタナトス(死)」を表現したという。

 予讃線や土讃線の快速列車などに使われ、JR四国の泉雅文社長も「われわれ鉄道屋の常識を完全に超えた」と脱帽。同祭最終日の11月4日まで楽しめる。


 私は荒木経惟氏のファンです。氏が世間的には無名の頃から知っていましたし。40年近く前にセルフ出版から出版されたサブ・カルチャー雑誌『ヘブン』、後継の映画雑誌『ウィークエンド・スーパー』に末井編集長が採用して以来、楽しませていただきました。『ウィークエンド・スーパー』もまた、映画雑誌といいながら、実態はサブ・カルチャーというかアングラ雑誌でした。映画の記事なんて1頁から数頁くらいのものでした。あとは只管、訳の分からないというか、脈絡のない構成でした。詳細は過去の四拾四  NETの猥雑さの原点は『ウィークエンド・スーパー』をご覧ください。

 専ら卑猥な写真ばかり掲載していました。「荒木経惟の写真日記」とかいう連載でした。しかし、この雑誌で荒木氏に人気が出たのは、その作風がメジャー向けでなく、むしろアングラ、あるいは反社会的な趣があったからです。
 それなのに、こういう公共交通機関の装飾として採用されることを容れたのには納得がいきません。かつて俺たちが応援した荒木氏は、むしろこういう陽の当たる場所に似つかわしくない、人の顰蹙を買うことを恐れなかったからです。

 荒木氏よ、あんたも年降りて精神が堕落したんだなあ、の感想です。しかし、問題なのは荒木氏でなく実行委員会側の見識です。公共の美観とか、外装が見る者にもたらせる影響とかに思いが至らなかったのでしょうか。
 私なんか、この列車を見た感想は、ひとこと“無惨”です。エロス(性、生)もタナトス(死)も、列車にはいりません。刺激的ではありましょうが、不快感を醸成するばかりです。
 推進した人間は、アンケートなどの感想から、都合のよい部分だけを切り出して自賛するのでしょうね。
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六百弐拾六  モネ 追憶と惜別の旅路(2013/10/14)
 先日、TV朝日系「世界の名画」で「モネ 追憶と惜別の旅路」が放映されました。5年ほど前にもTBS系「かくて名画は生まれた」でもモネが採り上げられました。前回のは『印象 日の出』を中心に据え、モネが絵画に革新をもたらした点にスポットを当てていました。

 今回は、モネの人生の歩みと生活拠点を辿りながら、妻のカミーユや息子のジャンとの交歓など、家族の絆やモネの人間にスポットを当て、そのときどきにあって、モネがどんな絵を描き残したかに焦点を当てていました。

 糟糠の妻のカミーユです。モネは間違いなく天才です。人物画が本当に素晴らしいのです。えてして風景画が持て囃されますけど、私は人物画が好きです。

(C) TV朝日


カミーユと息子のジャンが庭で寛いでいる断片を切り取っています。陽光に浮き立たされたまさに印象派の絵ですね。


 ひなげしの野を行くカミーユとジャンです。手前と奥、母子を繰り返し配置しています。


 サン=ラザール駅です。当時の新しい素材であるガラスを天井に用いている関係で、陽光が降り注いでいます。モネの求める絵にぴったりのモチーフだったのでしょう。


 ルーアン大聖堂は数限りなく描いています。ときにはキャンパスを3枚同時に並べ、朝、昼、夕方の移り変わりを捉えたそうです。こんな芸当は余人には不可能でしょう。


 トゥルービル海岸の風景です。夏の日差し、抜ける空、海から吹きつける強い風が余すところなく表現されています。


 後年描かれた『日傘の女』です。後妻の娘をモデルにしたそうです。実は、番組で興味深いことが紹介されました。若い頃、カミーユをモデルにして同じ構図の絵を描いていたのです。そちらでは人物の顔も描いていました。
 腹のあたりに飾られた赤いものはひなげしだそうです。顔を描いていないこととひなげしの装飾から、カミーユへの想いを込めているのではないでしょうか。


 モネといえば、睡蓮が有名だし、ライフワークではありましょう。しかし、私はこの『日傘の女』が一番好きです。3年前、東京で現物を鑑賞できたことはよい思い出になっています。
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六百弐拾五  『11/22/63』(2013/10/6)
 つい昨日、某週刊誌の書評で知りました。スティーブン・キングの新作『11/22/63』が刊行されていたのです。この日付はケネディ元大統領が暗殺された日です。
 で、キング本ですから超常現象を背景にしているわけで、本作はタイムトラベルものだそうです。ここまで聞くと、もう堪りませんね。きっと、壮大な時間の縛りと人間の意志とのせめぎ合いがテーマとなっているのでしょう。書評によると、過去の60年代の生活が丹念に描かれ、ノスタルジックな社会描写が絶品だそうです。

 これはキング本の特徴ですね。リアルな日常を丹念に描くことによって超常事象との対比が際立ち、人間の営為や悩ましさ、愚かしさ、人知の及ばぬもどかしさなどが迫ってくるわけです。
 しかも、ケネディ暗殺ものときちゃいましたね。贅沢の極みですわ。早く読みたいのですが、上下巻併せて4,400円は厳しいです。やっぱ、文庫化まで待とうかしらと悩んでいるところです。

 同じようなタイムトラベルものでケネディ暗殺阻止を企図した小説として、ケン・グリムウッドの『リプレイ』があります。こちらも傑作SFの誉れ高い物語です。『リプレイ』同様に『11/22/63』も、暗殺阻止は叶わないはずです。結果が分かっていても、面白さにはなんの関係もないでしょう。きっと、素晴らしい読書体験を提供してくれることを確信しています。

 一方で、暗殺阻止を期待させるSFものとは別に、ケネディ暗殺の謎に迫るタイプの小説もあります。その代表格がジェ−ムズ・エルロイ作『アメリカン・タブロイド』です。“アンダーUSA3部作”の記念すべき第1作目です。エルロイの緻密な取材と圧倒的な描写は別格で、まさに「アメリカのトルストイ」と称するに相応しいです。
 ところで、ついでに調べてみると完結巻である『アンダーワールドUSA(上下)』が文藝春秋から発売されていました。それも2年前にでした。いやあ知らなかった。
 キングには申し訳ないけど、エルロイ本を優先させていただきます。それも、文庫がどうとかでなく、エルロイならハードカバーを買わせて頂きまっせ。
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六百弐拾四  最強金属敗れる(2013/9/28)
 『ほこ×たて』名物、最強金属対決に動きがありました。無敵を誇っていた金属側がついに敗れました。

 勝ったドリルを製作したのは、愛知県のイワタツールです。従業員40数名の小さな会社です。ここの社長が強力ドリルのアイデアを暖め、同じような中小企業に声をかけて完成させた逸品です。

 ドリル製作には多様な技術が必要です。その周辺技術として、蒸着技術、メッキ技術、測定技術、素材技術、加工技術などあらゆるものが求められます。これまで挑戦してきた不二越やOSGなんかは、かなりの部分を内製でこなせます。しかしながら、中小ドリル会社では外部の協力がなければなにも始まらないでしょう。

 ここで、番組が隠していた事実があからさまになりました。日本タングステンが提示している金属ってのが、実はセラミックスだってことがサンプル製作を依頼した会社名で明らかになりました。協力会社として、トリオセラミックス社が紹介されました。しかも念を入れて看板まで映されました。

 完成したのが下図です。ダイヤモンド砥粒の量を前回の不二越製より5倍に増やしているそうです。内部にまで接着しています。
(C)フジTV


 トリオセラミックス社製のセラミックス板でテストしたところ、完全に貫通しました。


 一方の日本タングステンは担当を中川内氏から後輩の松原氏に変更しました。松原氏は、組成や焼成具合を硬度優先で仕上げました。果たしてこれが吉とでるか。NBSからMBSへの名称変更は製作チーフである松原氏の頭文字を取ったものでしょう。




 対決開始です。ドリル側は従来の水平面での作業でなく、垂直面での研削で挑みました。これは正解でしょう。ドリルにとって、研削時の最大の敵は熱です。廃熱と冷却こそが肝なのです。縦にすることによって、排水がスムースになります。


 見事に穿孔しました。


 砥粒はまだ残っています。とはいえ、研削面の余力はあと僅かですね。


 対決後の図です。またもや各職種の業界紙が数多取材に訪れています。今や『ほこ×たて』を超えたイベントとなっている模様です。


 日本タングステンさんが用意したセラミックスは、番組史上最高硬度のものでした。普通なら、穴は開かんだろうという逸物でした。いえ、ひょっとすると硬度志向は拙いのかもしれません。むしろ、中川内式の硬度を抑えたなかで、粘りとかの特性が重要なのかもしれません。
 前回の不二越社は20mのプレートの8mを残しました。前々回のOSG社は残3mでした。不二越にしてもOSGにしても、セラミックスプレートのテスト穿孔に成功しています。それらの硬度は日本タングステン製のものに比しても引けをとっていませんでした。でありながら、本番での穿孔に失敗したわけです。やはりそこは、日本タングステン、いえ、中川内氏のノウハウなのでしょう。

 最強金属対決は今後どうなるのでしょうか。なかなか展開が難しいですね。ところで、最後にもういっぺん言わせてください。セラミックス焼成物とダイヤモンドの対決の、一体どこが金属対決やねん。
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六百弐拾参  ウィリアム・モリス登場(2013/9/22)
 TV東京系『美の巨人たち』が、ついにウィリアム・モリスを採り上げました。いつかはやってくれるだろうと待ちわびていました。今回、番組中で例示として採用された作品は、「レッド・ハウス」でした。

 モリスと友人たちが協力して造り上げた新婚用居宅です。美術史に燦然と輝く金字塔ですね。金持ちの道楽じゃないので、質素といえば質素です。その代わり、職人の手作り、それもモリスやバーン・ジョーンズという当代随一の作家による表現の塊です。

 これが「レッド・ハウス」の外観です。レンガ造りの伝統的な構造です。ただ、シンプルで無駄な装飾がなく、郊外の自然に溶け込む落ち着きが心地よいところです。
(C)TV東京


 下図は、母校であるオックスフォード・ユニオン学生討議室の内装です。「アーサー王の死」をテーマにした10面の壁画が見えるでしょう。友人であり、モリスに絵を教えたロセッティが取ってきた仕事です。ただし、ロセッティは途中でバッくれるし、他の面々もサボりがちでした。モリスのみが真面目にコツコツと仕上げました。
 しかも担当部分を早々と終えたモリスは天井裏の装飾を一人で仕上げました。


 これが装飾のアップです。後年、モリスがものした植物をテーマにした見事なデザインです。


 妻のジェインです。美人の評価だそうですが、なんだかなあです。モリスの審美眼は信じますけど、この件だけは腑に落ちません。
 友人のロセッティとジェインは不倫関係となり、モリスのその後を煩わせました。番組では触れませんでしたけど。


 見事な「レッド・ハウス」ですが、仕事の都合で5年しか住めませんでした。モリス自身断腸の思いであった模様です。この家を見るのが辛いといって、二度と訪れることがありませんでした。

 番組は「レッド・ハウス」に焦点を当てていたため、その後のモリスの業績を採り上げませんでした。「“アーツ・アンド・クラフト・ムーブメント”が世界に広まった」とナレーションが語っただけでした。

 “アーツ・アンド・クラフト・ムーブメント”はイギリス中を巻き込み、やがてヨーロッパ本土にも波及して多大な影響を与えました。これが世紀末を舞台にした新しい造形活動である“アール・ヌーボー”なわけです。

 間違いなく、モリスが時代を切り拓いたのです。番組は必ずしもモリスの功績を伝えていません。ただ、「レッド・ハウス」に込められた若き芸術家の志だけは強く伝えていました。
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六百弐拾弐  『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』賛歌(2013/9/15)
 昨夜、WOWOWで待望の『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』が放映されました。素晴らしい2時間でした。これまでにも地上波で2回放映されましたが、それらはSD映像でした。今回のはフルHD映像ですから、もう堪りません。

 ミンメイのコンサートシーンも凝っています。ホログラムと光線で舞台効果を演出している風です。こういうアイデアを30年ほど前に考えた方がいるのですから大したものです。
 セルを最大で10枚使用したそうです。おかげで立体感満点です。

(C) 東宝 ビッグウェスト 竜の子プロ


 SDでは気づかなかった背景の細密具合に釘づけになりました。下図では分かりにくいと思いますが、星々も数え切れないくらい描きこんでいます。


 下図2点は、マクロスの代名詞にもなった全方位ミサイル発射シーンです。板野サーカスとして有名で、海外のSF表現にも多大な影響を与えました。




 肌の質感は3〜4諧調で、クローズアップでは5階調という無茶ぶりでした。しかも、顔の動きや背景の光線具合によって、色調を微妙に転換させるという無謀な彩色をやってます。作画、動画スタッフは地獄の日々だったことでしょう。


 手作業でよくもここまで描き込んだものです。この映画の高密度描写はアニメの限界を極めたとさえ言われています。見慣れた映像ではあるものの、フルHDで鑑賞できて、私ゃ、もう満足感でなんか放心状態です。
 なお、例の頚の切断シーンはフラッシュで誤魔化して、再撮影しています。作画として参加していた板野一郎氏には、けっこう残酷描写があったのです。
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六百弐拾壱  You Tube のおかげです  (2013/9/7)
 懐かしく思い出される映像や音楽を確認したくなることがあります。そんなときに重宝するのがYou Tubeです。アメリカTVドラマ史上最高の視聴率を誇った『DALLAS』については、以前にも九拾六  伝説のDALLAS (2003/8/31)で書いています。その際に、テーマ曲を着メロに利用している方が多いと聞いて、懐かしく思い出されたのです。

 最近のこと、You Tubeで検索したところありました。懐かしい『DALLAS INTROSEASON 1(1978)』です。 若い方は『DALLAS』がどれほどの人気番組であったかをご存じないでしょうね。私が書いた過去の文章を読んでください。その凄さの一端が伝わるかと思います。
 年配の方でこのドラマに夢中になった方々は、オープニング・クレジットを見て懐かしさがこみ上げたのではないでしょうか。耳に残る特徴的なサウンドに胸熱です。

 ついでに他の番組も検索しました。NHKで放映されたTV史上最高のドキュメンタリである『映像の世紀』と『世紀を越えて』です。

 『映像の世紀』のテーマは加古隆氏による「パリは燃えているか」です。このドキュメンタリは20世紀末にNHKが総力を結集して制作した番組です。うろ覚えですが、これまでに3度放映されました。20世紀末、21世紀に入ってすぐ、さらに数年して後と3度であったかと思います。で、私は3度とも見ました。何度見ても胸を圧してきます。あまりに圧倒的な映像集です。若い方にも是非にも見ていただきたいです。NHKからDVDで発売されているはずです。

 なかでも一番好きなのは、『第9集 ベトナムの衝撃 アメリカ社会が揺らぎ始めた』です。リアルタイムで眺めたアメリカの苦悩と変化を一本にまとめています。60年代公民権運動と反戦運動に揺れる状況には釘づけになること請け合いです。ケネディ暗殺、キング牧師暗殺、ブラックパンサー結成、ワシントン大行進、ウォーターゲート等々。キング牧師の演説中の「I Have a Dream」は、世の中を変える力があったかと思います。かつては、言葉に世の中を変革する力があったのです。

 『世紀を越えて』もまた、20世紀の秘蔵映像集でした。テーマ曲はアディエマスで、その抽象的なボーカルが今以って耳から離れません。ご記憶の方も多いでしょう。ちなみにこれらの曲の掲載は、著作権違反です。すぐに削除されることでしょう。

 いかがですか。懐かしい、あるいは初めて聴いた方は新鮮だったでしょう。いずれも間違いなく名曲ですから。
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