ヒトツキ遅れのバースデー
arc2|2006.11.09
「その…っ…リーザには、関係ねーよ…」
ぼそぼそと顔を背けながら。
呟かれた言葉に、一瞬頭は真っ白になった。
ショックだったわけじゃない。裏切られたと怒ったわけでもない。そんな自分勝手で自意識過剰なんかじゃない。
ただ。
自己中心な想いだと知っている、解っているけど。
ただ、私は。
「リーザの誕生日が先月だった?」
イスに腰掛け、ヂークベックをいじっていた手を止めて、エルクは首だけ振り返る。
「そうよ」
答えたのは、青い髪をもつ歌姫。彼女は腕を組み、エルクとは違って椅子にもたれ掛かっているので、若干見上げる形だ。正直首がキツいです、シャンテさんとエルクは思ったが勿論口にはしない。
ここはシルバーノア作戦室。メンバー全員が座れる椅子が設置された講堂のようなもの。
日頃はなんだかんだと誰かがいるものだが、今は都合のいいことに2人きりだ。
「先月つったら…」
少し考えて、右手にもつマイナスドライバをくるくる回しながらエルクは、確認するようにシャンテをもう一度見上げた。それに深く深く歌姫は頷いて肯定する。
「ちょうど、ホルンの村の復興作業が始まったころね」
「だよ、な…。……で?オレは何をすればいい?」
そう返すと、シャンテはその美しい容貌にある種相応しく、口元をニヤリとつり上げた。
「話が早いわね。理解の早い子は嫌いじゃないわ」
「お、おい?」
「冗談よ」
「へ?あ、おお、焦った」
そういうエルクは、少し残念そうだ。まあ年頃の男の子ですから。
それを正確に読みとったシャンテは、小さく笑って口元に人差し指を当てた。目を細めて、内緒話よと言う。
「材料はあるから、あなたにあるものを作ってプレゼントとして渡してもらいたいのよ」
「あるもの?」
「そう。それは後で説明するわ」
「…あんたでは、作れねえのか?」
そう尋ねると、シャンテはにまりと妖艶に笑った。ゾクリと背中に何かが走る。
(た、タブーかよ!!)
冷や汗をかいたエルクは、オレはもう全くもって訊く気は、もとい尋ねた記憶もございませんの意志を込めて、唇を噛む。この弱さはアーク一味男性陣共通の事柄である。余談だ。
「ふふふ、やっぱり冗談っていうのを訂正しようかしら」
「はい?!」
「もちろん冗談よ」
「…」
エルクはグレそうである。
流石に遊びすぎたかと、シャンテはほんの少し一ミクロンぐらい罪悪感を感じつつ、椅子から手を離して体を起こす。
「さあ、ついてきなさい」
「わーったよ」
エルクも重い腰を上げて、シャンテに従った。
「え〜っと…その…えっと…」
エルクはどういえばいいやらと言葉を濁しながら頬をかいた。
その隣でシャンテは、彼女らしくなく目をおもいっきりそらして遠くを見ている。
そんなシャンテの顔をちらっと顔を伺い、そして。
「…シャンテって、不器用だったんだな。料理は出来んのに」
微妙に学習能力というか経験値のないエルクはストレートに言ってしまった。
それに案の定、シャンテは頬をひきつらせ、エルクは自分の失言に気付く。
「や、いいんじゃね?か、完璧ってのもいいけど、妙なとこ抜けてるのがいいんだろ?」
…あんたに言われたくない。
シャンテは思い、溜息をついた。
2人の前にあるものは、白いタオルの固まり。大きさとしては、ぎゅっと抱きしめられる程度。
ただ、本当に"固まり"で。ところどころに見える縫い目だとか、ほつれきった糸だとか…目だと思われる紙一重のセンスとか。
多分………人形を目指された…固まりだった。
そして、作り出した、否むしろ創りだしたのは当然シャンテであったりするわけだ。
「…オレが作ればいいんだよな?」
ぼそぼそと顔を背けながら。
呟かれた言葉に、一瞬頭は真っ白になった。
ショックだったわけじゃない。裏切られたと怒ったわけでもない。そんな自分勝手で自意識過剰なんかじゃない。
ただ。
自己中心な想いだと知っている、解っているけど。
ただ、私は。
「リーザの誕生日が先月だった?」
イスに腰掛け、ヂークベックをいじっていた手を止めて、エルクは首だけ振り返る。
「そうよ」
答えたのは、青い髪をもつ歌姫。彼女は腕を組み、エルクとは違って椅子にもたれ掛かっているので、若干見上げる形だ。正直首がキツいです、シャンテさんとエルクは思ったが勿論口にはしない。
ここはシルバーノア作戦室。メンバー全員が座れる椅子が設置された講堂のようなもの。
日頃はなんだかんだと誰かがいるものだが、今は都合のいいことに2人きりだ。
「先月つったら…」
少し考えて、右手にもつマイナスドライバをくるくる回しながらエルクは、確認するようにシャンテをもう一度見上げた。それに深く深く歌姫は頷いて肯定する。
「ちょうど、ホルンの村の復興作業が始まったころね」
「だよ、な…。……で?オレは何をすればいい?」
そう返すと、シャンテはその美しい容貌にある種相応しく、口元をニヤリとつり上げた。
「話が早いわね。理解の早い子は嫌いじゃないわ」
「お、おい?」
「冗談よ」
「へ?あ、おお、焦った」
そういうエルクは、少し残念そうだ。まあ年頃の男の子ですから。
それを正確に読みとったシャンテは、小さく笑って口元に人差し指を当てた。目を細めて、内緒話よと言う。
「材料はあるから、あなたにあるものを作ってプレゼントとして渡してもらいたいのよ」
「あるもの?」
「そう。それは後で説明するわ」
「…あんたでは、作れねえのか?」
そう尋ねると、シャンテはにまりと妖艶に笑った。ゾクリと背中に何かが走る。
(た、タブーかよ!!)
冷や汗をかいたエルクは、オレはもう全くもって訊く気は、もとい尋ねた記憶もございませんの意志を込めて、唇を噛む。この弱さはアーク一味男性陣共通の事柄である。余談だ。
「ふふふ、やっぱり冗談っていうのを訂正しようかしら」
「はい?!」
「もちろん冗談よ」
「…」
エルクはグレそうである。
流石に遊びすぎたかと、シャンテはほんの少し一ミクロンぐらい罪悪感を感じつつ、椅子から手を離して体を起こす。
「さあ、ついてきなさい」
「わーったよ」
エルクも重い腰を上げて、シャンテに従った。
「え〜っと…その…えっと…」
エルクはどういえばいいやらと言葉を濁しながら頬をかいた。
その隣でシャンテは、彼女らしくなく目をおもいっきりそらして遠くを見ている。
そんなシャンテの顔をちらっと顔を伺い、そして。
「…シャンテって、不器用だったんだな。料理は出来んのに」
微妙に学習能力というか経験値のないエルクはストレートに言ってしまった。
それに案の定、シャンテは頬をひきつらせ、エルクは自分の失言に気付く。
「や、いいんじゃね?か、完璧ってのもいいけど、妙なとこ抜けてるのがいいんだろ?」
…あんたに言われたくない。
シャンテは思い、溜息をついた。
2人の前にあるものは、白いタオルの固まり。大きさとしては、ぎゅっと抱きしめられる程度。
ただ、本当に"固まり"で。ところどころに見える縫い目だとか、ほつれきった糸だとか…目だと思われる紙一重のセンスとか。
多分………人形を目指された…固まりだった。
そして、作り出した、否むしろ創りだしたのは当然シャンテであったりするわけだ。
「…オレが作ればいいんだよな?」