壁 -後日談-
arc3後|2007.02.22
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 アークは、当然と言うかその表情には全く出ないけれど、それでもエルクのあの無自覚な仕種を見て、内心ではついつい鼻の下を伸ばしているだろうし。
 アレクは、こちらは素直に照れた様子を表に出して、照れ隠しに頬を掻きながら目線を外している。
「…天然たらし」
「えっ!? な、何でそこにそれが出るんだよっ!?」
「べっつにー? ただ、うちの男共は、いざって時に君にはてんで甘くて弱いって事かなあ」
「ポ、ポコ…」
 きゅーんと耳を垂れる子犬。しかも、迷子になった子犬さながらのその表情に、仕方ないなあ、とポコが二人を見遣る。
「君たち。今、内心で可愛いとか思ったでしょ」
「そっ、それはっ…」
「思わないほうが無理だな」
「やっぱりね…。やっぱり最強の称号はエルクに決定だね」
「な、何でだっ!?」
「うん、それが分かるようになったら僕の口から教えてあげるから」
「な、なあ、アーク、アレク、どういう意味だよっ?」
「教えちゃ駄目だよ、アレク」
「えっ? あ、は、はいっ」
 何で僕限定に言うんですかと突っ込みかけて、それでもエルクの問い質すような鋭い眼差しにアレクが一瞬怯みかけると。
「教えたら、速攻で僕の演奏をプレゼントするからね?」
「うっ…!!」
 またしても言葉尻にハートマークを付けたような言い回しに、アレクは心の底からこの人は鬼だと認識した。
「だが、分かったからと言って、それで俺たちに変化がある訳でもないだろうに」
 そう呟いたアークにポコが、
「僕としてはね、幾ら自覚無しの天然たらしだからって、狼の群れの中に子羊を投げ込みたくはないんだよね」
 そう、何でもない事のように反論した。
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