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八拾     勇み足の「帝国の興亡」(2022/10/9)
七拾九    アントニオ猪木氏死去(2022/10/3)
七拾八    WiFi ルータ導入(2022/9/25)
七拾七    今秋のあれこれ(2022/9/18)
七拾六    エリザベス女王薨去(2022/9/11)
七拾五    最近の世相(2022/9/4)
七拾四    iOS のシステムデータ領域問題(2022/8/28)
七拾参    iOS 最初で最後のアップデート(2022/8/21)
七拾弐    『星を継ぐもの』シリーズ読了(2022/8/17)
七拾壱    ソアラのエアコン不調(2022/8/11)
七拾     フェルメールの真実とベラスケスの俊髦ぶり(2022/8/3)
六拾九    井岡選手、檜舞台に上がるか引き籠るか(2022/7/27)
六拾八    『ヒトラーの戦い』読了(2022/7/21)
六拾七    最近の世相(2022/7/13)
六拾六    節電要請にどう応えるか(2022/7/6)
六拾五    ネット記事は玉石混交(2022/6/30)
六拾四    ウクライナ戦は泥仕合の様相(2022/6/22)
六拾参    蓄電システムの本命−超伝導フライホイール(2022/6/15)
六拾弐    井上選手は裏切らない(2022/6/8)
六拾壱    小栗忠順は再評価されるべき(2022/6/1)




八拾     勇み足の「帝国の興亡」(2022/10/9)
 iPhone の電池消耗度がさらに好転しました。OS アップデート前に均して-13%/日だったのが、アップデート後に日を措いて-18%/日に収まりました。電池使用量の低減を目指して各種設定を徹底的になぶったことに加え、ストレージの空きを増やすべくアプリを多数削除したので、現在は-15%/日 にまで持ち直しました。多分、世界で一番電池消耗の少ないiPhone だと確信しています。

 WindowsPC やMacintosh の使用リソース低減についても、昔から徹底して手を加えてきました。重くなる一方のOS をいかに快適に使用するかの大命題です。サクサク動作すると気持ちいいし、仕事の効率もアップします。大昔に職場配布PC の業務設定で、委託業者が全マシンの設定を行った際、私が使用しているPC を触った業者さんが驚いていました。なんで、このPC だけこんな扱いやすいのと。


 WirelessWire News に掲載された「帝国の興亡」が物議を醸しました。

 「貧富の差が年々激しくなっていて、この流れはもう止めることができない」
 これを友人の言葉として紹介しています。その友人はビッグテックで上級管理職として働く勝ち組だそうです。アメリカの産業構造と賃金構造が都市生活者下々に多大な影響を与え、格差社会を街の景観から気づかされるとしています。

 上の清水氏に対して、サンフランシスコ在住の「みすこそ」氏が記事の不備を具体的に指摘しています。
 「TwitterのTLに流れてきたサンフランシスコに関する記事と動画を見てみました。

 みすこそ氏の視点は、みんなが心得るべきことです。他国での見聞は有用だし、いろいろ参考にもなりましょう。ただ、見聞きした事実を提示してくれれば、それで十分なのに、ついつい勇み足をやらかすのでしょう。

 文化論の類で、昔からよくある話です。七      できの悪い文化論はもうたくさん(2021/5/5)や拾壱     こういうのができの悪い文化論です(2021/5/30)に書いたとおりです。なかでも、七拾五  国民性?(2003/4/13)には、具体的に書名を挙げて内容にも触れています。
 その林望氏のイギリス滞在記なんか典型ですね。向こうの大学関係者あたりと交流し、イギリスは紳士の国だとアピールしていました。マークス寿子氏が林氏の視野の狭さを批判していました。そのマークス氏もまた、一面を切り取って日英比較をやってます。「大人の国イギリスと子どもの国日本」ったって、イギリスにも子供じみた面があるし、日本にも奥深い面があるのにね。

 上の清水氏は、一部を切り取ったというだけでなく、アメリカの暗部を活写しようとするあまり、意図的な操作を行っているだけに言い訳ができませんね。それで記事を書いて飯のタネにしようというのは、たちが悪いです。

 繰り返しますが、一部だけ見て全体に敷衍する手法は、我田引水が過ぎます。昔から恣意的思考を窘めることわざがあるじゃないですか。「木を見て森を見ず」とか「群盲像を撫でる」とかね。まさにこれです。
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七拾九    アントニオ猪木氏死去(2022/10/3)
 先月末のYAHOO!ニュースです。
 プーチンがロシア軍人に直接指示の異常事態 専門家は「これで正確な情報はさらに入らなくなる」プーチンがロシア軍人に直接指示の異常事態

 五拾九    『孫子』とウクライナ侵攻(2022/5/18)で、ウクライナ戦争を望見して『孫子』に当てはまる状況をピックアップしました。上の記事が、まさに引用した第三篇「謀攻」の戒めそのものです。


 コロナ後遺症例報告が多いとあって、ニュースや報道番組で盛んに報じられています。しかし、“後遺症”という言葉が適切なのか疑問です。
 陰性で以って寛解したと判定されても、ウィルスが体内に残っているそうです。そのウィルスによる作用、あるいはその作用で自然免疫が低下したことによる影響と考えるべきだそうです。宿主内持続感染とかいうそうで、変わらずウィルスの影響なんですね。

 ウィルスや感染症の専門家の知見より、専門外の医者の臨床報告の声が大きいため、後遺症と捉える空気に染まっているやに見えます。“持続感染”と称するべきで、そうすることによって個々人あるいは会社など周囲が状況に対して適切な対応ができるものと考えます。後遺症だと、あくまで終わった話で、取り返せないイメージなってしまいます。


 アントニオ猪木さんが亡くなりました。馬場氏が23年前に亡くなったことと併せ、昭和のプロレスが消え去った印象です。

 猪木氏は闘魂とストロングスタイルを売りにしていたので、晩年はキツそうでした。その点、歳を取った馬場氏は自ら色モノ路線に転換し、平和なリング終活を送りました。永源遥氏をロープに抑え込んでの唾とばしは、汚いながらお客さんに大受けでした。

 猪木氏は40過ぎて衰えてからも興業上の理由から、若手にポジションを譲らなかったので厳しかったですね。もう無理をしなくていいのにと同情した試合がありました。
 スティーブ・ウィリアムズ選手との試合で、開始いきなりウィリアムズ選手がパワースラムで叩きつけてフォールに行きました。猪木選手がノビっちゃったものだから、慌ててカウント2で髪を掴んで引き起こしました。身体が痺れてまともに動けない猪木選手をなんとかコントロールして試合を続行しようと涙ぐましい努力をしていました。あれは完全な放送事故でした。
 ブルーザー・ブローディ選手を引き抜いてすぐの試合も痛々しかったです。ブローディー選手のブーツを剥ぎ取ったところ、ブローディ選手が本気で怒っちゃって、プロレスも糞もなくボコリ始め、猪木選手はびびって縮こまっちゃいました。

 プロレスはプロレスなんだから、そんなイキらなくてもいいのにね。いえ、イキるのはいいんだけど、それで以ってライバル団体を貶めるのは余計でした。

 そんな具合に、私はプロレスを冷めた目で見ていましたが、「第一回世界オープンタッグ選手権」決勝戦だけは熱狂しました。
 ブッチャー選手がテリー選手の腕をフォークでメッタ刺しして血塗れにしました。ドリー選手が孤軍奮闘するも二人掛かりでボコボコにされる危急を、テリー選手が包帯グルグルで再登場してパンチ連打で救うんですね。もう、我を忘れて応援し、試合後も興奮が収まりませんでした。
 あざといシナリオながら、4人のレスラーすべてが満点で魅せました。フォールを取られたブッチャー選手に対し、シーク選手が怒って火焔攻撃をしかけ、ブッチャー選手が悲鳴を上げて逃げるというオスカーばりの演出でした。あの試合がマイベストです。
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七拾八    WiFi ルータ導入(2022/9/25)
 秋祭り頭屋のお努めも午前中で終わりました。獅子舞、神輿、浦安の舞など大幅に省略されたので助かりました。ただ、前々日の準備、前日の降神式、当日の後片づけに駆り出されたりと、大変でした。



 セキュリティアップデートであるiOS15.7 の通知が届いて実行したものの、予想どおり空き容量不足で実行不可でした。そこで、不要App の削除に勤しみました。

 以下のアプリをバッサリ削除しました。「取り除く」でなく「完全削除」です。
 「ホーム」「ウォレット」「リマインダー」「計測機」「計測」「ミュージック」「ブック」「FaceTime」「Podcast」
 これらは、まず使いません。トップ画面が実にすっきりしました。とはいえ、ストレージの空きは0.5GBも増えていません。アップデートはまだまだ無理です。

 GoogleMap やGoogle 翻訳、あるいはAdBlock Pro あたりを消さないと無理でしょう。セキュリティアップデートをどうするか悩ましいところで、未だ結論を見出せません。


 9年前に交換したルータが不調気味だったので、思い切ってI‐O DATE のWN-DX2033GR に交換しました。今や店頭にあるのはWiFi ルータばかりなのと、iOS のアップデートがらみもあって、WiFi ルータ導入の運びとなりました。

 春先くらいから、ときどきネットが切れるようになりました。接続業者の障害情報に該当案件がなく、ルータの不調を疑っていました。切れても時間を措くか電源再投入で繋がるとあって放置していました。最近のこと、数日ごと切れるようになり、我慢できずに買い替えました。Windows7対応を要するので3年前の製品ながら、最新機器と比べてもさしたる違いはないみたいです。

 メインのデスクトップは有線のまま、ノートのみ無線接続しています。スマホ接続も問題なしで、上のiOS セキュリティアップデートを試したのも、接続実験を兼ねてのことでした。で、空き容量不足で更新できなかった次第です。

 速度については、以前と変わるところがありません。サイトのアクセス速度に限界があるし、LANケーブルの速度限界もあるしで、向上は期待していませんでした。カテゴリー5e のケーブル1本が同梱されていまして、私が9年前から使用している6A より遅いんです。つまり、私のネットワーク環境は、9年前から十分すぎるレベルに達していたんですね。安心しました。
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七拾七    今秋のあれこれ(2022/9/18)
 4年前に社日頭元が当たりました。八百七拾参  社日のお祀り(2018/9/23)に書いたとおり、簡単な役回りで、なにごともなく終えました。それ以後はコロナ禍への対処から、イベント縮小の倣いで祭祀関係も主祭事のみで済まされました。
 今年も同様で、我が自治会に秋祭り頭元が回ってきたものの、主殿内のみの神事に限定されます。近所の家が頭元で、我々はお手伝いということになります。それでも、境内清掃は当然なので、今から憂鬱です。春祭り以後、半年間の下草や繁茂した枝伐採ともなると大仕事なんです。例年、身体がガタガタになりますもの。

 それと、幟を立てるのが大変なんです。太くて長い柱を数人がかりで運んで徐々に起こしてゆきます。一つ間違えば大怪我必至です。石柱にボルト止めして完成となります。もうね、勘弁してほしいんです。


 コロナで海外旅行が不便とあって、その鬱憤をどう晴らそうかと考えました。地元旅行代理店のツアープランを「学び・鑑賞」テーマで検索すると、兵庫県立美術館の「ボストン美術館所蔵THE HEROES 刀剣×浮世絵−武者たちの物語」と山王美術館鑑賞旅行が予定されていました。喜び勇んで申し込んだものの、受付が中止と表示されました。問い合わせたところ、希望者がいなくて中止だそうで、脱力しました。

 他にないかと探すと、「第74回 正倉院展」がリストアップされていて、すかさず申し込みました。日程は混雑を避けて平日とし、11月頭の連休直前を押さえました。
 奈良国立博物館を訪ねるのは40数年ぶりです。前回は学生時代にマイカーで訪ねました。もはや、長駆車を運転するなんて耐えられません。これが歳を取るということなんですね。

 前回は国立博物館に加え、法隆寺、興福寺、東大寺などじっくり楽しませてもらいました。たしか、奈良公園の駐車場で車中泊をしたはずです。初春とあって夜間の冷え込みが厳しく、エンジンを掛けて暖を取ったのも良い思い出です。
 貧乏学生にとってはホテル代が高すぎました。2泊目を高野山の宿坊にする予定だったので、財布が限界だったのです。

 書いてて思い出しました。大学の早い春休みを利用し、河岸でハマチ出荷のバイトで旅行代を稼いだんですね。キツイ作業でした。特に金曜夜から翌朝にかけての作業が文字どおり地獄でした。日曜の河岸が閉まるため、前日に2日分の出荷量をこなすんです。しかも、生ものですから時間を2倍かけるわけにはいきません。ペースを速めて2倍の作業量をこなさなければいけません。
 最初に体験したその日、学校の階段を立って登れませんでした。スポ根漫画で階段を這って登るシーンがありますが、あのとおりでした。翌週からは体力が備わってきたらしく、なにごともなく過せました。

 今夏の草抜きには苦労しました。しょっちゅう雨が降るものだから、草の活性具合が半端じゃありませんでした。抜くより生える方が早いんだもの。
 もう頭にきました。この秋に徹底的に草退治した後、ある対処を実施するつもりです。褒められたものではありませんが、もう草抜きに汲々するのはご免です。やっちゃいますよ、私は。
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七拾六    エリザベス女王薨去(2022/9/11)
 エリザベス女王が先週木曜日に亡くなりました。70年の治世とあって、イギリス人にとっては当たり前の日常が終わった感覚でしょう。
 昭和天皇薨去の際に日本人が受けた空虚感と同じです。あるいは6年前にタイのプミポン国王が亡くなった際にも同じ感興を持ちました。ラーマ王もまた70年の在位期間であったわけで、タイの人々にとっては、朝に日が昇るにも似た自然なあり様だったことでしょう。

 昭和天皇、プミポン国王、エリザベス女王のいずれもが、国民大半にとって、生まれたときから普通にそこに存在していた君主だったでしょう。私も同様で、昭和帝はものごころついたときから、当たり前の存在でした。

 世界の王族の中でも、英国王室には特別感があります。さすがにアフリカや中東では大して興味を惹きはしないのでしょうが、ヨーロッパ、北米、東アジア、インド豪州などでは、ゴシップを含めて強い興味の対象でしょう。特にアメリカなんて歴史が浅いだけに、憧憬とともに夢中になりますものね。その結果としてのエドワード8世とシンプソン夫人の“王冠を懸けた恋”でしょう。

 近年のダイアナ妃騒動は、我が日本でも相当なものでした。また、最近のヘンリー王子とメーガン妃の王室離脱騒動も散々報じられましたしね。

 英国王室が日本で語られるとき、なにかと皇室と比較して英国に学ぶべしとか上から目線で諭す方がいます。ああいうのは放っておきましょう。どうせ、英国王室を深く知らないんですよ。
 日本で見聞きする英王室像と、英国人がおらが王室として投影している像には大きな乖離がありそうです。彼らは当然のこと自国王室の歴史を知悉しています。一方で大半の日本人はなんにも知りませんから、双方が考える王室像に食い違いあって当然でしょう。

 『英国王室愛欲史話』を読むと、愛人許容、不倫讃歌、権力と名誉取得への足掛かりなどエゲツなさ満点です。そして、国民たちは昔から王室スキャンダルを俎上に上げ、上級民たちを品定めして楽しんできました。

 英国王族の振舞いというのは、とてもとても皇室が真似できるものではありません。幕府、朝廷、諸藩においては、正室、側室、お手付きなどを奥向きで内部完結させていました。間違っても自由恋愛でほっつき歩くスタイルじゃないです。

 一番無茶苦茶だったのは、ヘンリー8世ですね。誰彼かまわず目についた女性を所望し、臣下への初夜権や略奪権をフルに行使しています。6度結婚して妃2人を殺すという無法ぶりです。自分勝手な離婚婚姻を実現するため、英国をカトリック教会から独立させたりですもの。
 それでも実態はいざ知らず、記録上では国民から嫌われたわけでもないそうで、英国王室のあり方は皇室から遠いものでしょう。

 小学館のコミック誌で連載している『セシルの女王』が、上のヘンリー8世とその娘である後のエリザベス1世をネタにしています。チラ見しただけですが、作中のアン・ブーリングが普通に過ぎます。実際のアン・ブーリングは、ヘンリー8世をも右往左往させた手練れだそうですからね。
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七拾五    最近の世相(2022/9/4)
 OSアップデートしたiPhone の電池消耗度合は、均すと-18%/日当たりに収まりました。各種アプリの省電力設定を進めたこととシステム構成が一段落したためでしょう。以前の-13%/日に比して、ほぼ1.4倍の消耗具合です。これくらいなら、よしとしなけりゃいけないんでしょうね。

 軍事ジャーナリストの清谷信一氏のブログに次の記述がありました。

 ■本日の市ヶ谷の噂■
 陸幕は弾薬を増やせ、弾薬庫を増やせと主張するも、未だにこの先使用する予定も全くない、M20改4型バズーカ、無反動砲用の106ミリ砲弾、203ミリ榴弾砲弾などの旧式弾薬を山のように保有して廃棄は遅々として進まず。要求するより、これらを先に廃棄しろと内外から批判、との噂。


 弾薬の廃棄は安全面と無毒化から手間と経費がかかるのでしょう。簡単にいかないのにも納得できます。すると、同じような話であるPCB廃棄物処理について危惧されます。期限どおり処分を終えているのか、あるいは所定手続きどおり進捗しているのか怪しんでしまいます。
 自衛隊施設には自前の発電や変電を扱う機器が多いでしょうから、高濃度PCB廃棄物がてんこ盛りのはずです。これ、期限を過ぎると処理施設自体がなくなります。全国的に見逃し廃棄物があったりで、期限も延長されたみたいです。その延長も近々終了しますから、見逃し、あるいは放置があると大変なことになります。

 また、米軍施設はどうなっているのでしょうか。治外法権とあって不可触領域なのでしょうか。米軍にすれば、どうせ日本側が無毒化作業をやってくれるから、その辺に放置して捨て置けばいいと考えていそうです。今までずっとそれでやってきましたから。いえ、あくまで邪推ですよ。


 中国が歴史的干ばつと洪水に見舞われています。人民網の記事「中国で今年初の気象学的干ばつ警報が発令」です。
 中国国家気候センターのコメントです。
 現時点で、地域的な熱波の影響は2013年を超えてはいないものの、南方エリアでは今後2週間もその影響が続くと予想されている。その場合、猛暑日が62日続いた2013年を超えて、1961年以来で最も長い猛暑日の記録を塗り替えると予想されている。今年の猛暑の強さも、完全な記録のある1961年以来で最強クラスとなりそうだ

 中国の高温警報は、レベルが違っています。東方新報が詳細を報じています。
 気温44度 「60年間で最悪」の猛暑続く中国、水&電力不足で打撃も

 記された気温には怖気を震ってしまいます。
 中国中央気象台は連日、3段階で最も深刻な赤色の高温警報を発令。湖北省、竹山県で44.6度を記録したのをはじめ、河北省、重慶市、雲南省で44度に達した。上海市では、この夏で40度以上の日がすでに40日を超えている。

 これはもう人間が住めるものじゃないですね。中東なんかの乾燥地だと、日陰で凌げそうですけど、上の地域は蒸すそうです。
 この記事を読んで感心したこともあります。中国も40℃超気温を報じるようになってたんですね。以前の当局発表は、どんなに暑くても40℃を上限にしていたそうです。20数年前に江西省に留学し、その後延安大学で講師をしていた女性漫画家の小田空氏が実体験を描いていました。

 延安時代には蒸し暑くて眠れず、夜は外で涼を得ていたそうです。住民たちも大勢が外で寛いでいて、親しく交流を深めることができたそうです。
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七拾四    iOS のシステムデータ領域問題(2022/8/28)
 先週に記したように、システムデータ領域が拡大し、ストレージを圧迫しているため、今後の運用が危惧されます。
 これまで僅かなサイズで済んでいたのが、初めてのOSアップデートにより、アップデートデータや一時ファイルが満ち満ちたものでしょう。Windows だとtmp ファイルやold ファイルということで明示的に把握でき、不用とあれば削除できます。3年前にノートPC をWindows7 からWindows10 にアップデートした際には、回復に備えたold ファイルやtmp ファイルがでかかったです。アップデート後の設定や試用を経て、問題なしと確認できた後、それらはすべてばっさり削除しました。

 スマホの場合、ユーザに触らせない方針なのでしょう。Andorid がどうなっているかは知りませんが、ブラックボックス的扱いをするのはApple らしいです。なお、この件について、iOS15 の不具合との解説もあり、現時点で解消する方法はなさそうです。

 それでも、できることはないかとチャレンジしました。
 再起動によって構成整理されることもあるそうで、さっそく試しましたが、減ることなく、むしろ若干増えた気がします。
 リセットで緩和される可能性もありということで、「すべての設定をリセット」を試しました。残念ながらシステムデータ領域に変化はありませんでした。「すべてのコンテンツと設定を消去」を試す気になりませんでした。電話帳など復旧が大変ですから。
 「すべての設定をリセット」なら、再起動後に英語表示になるくらいで、日本語表示に戻していくらか再設定するだけです。

 まだ試していませんが、iOS15 のバグと看做しての対処法として、「デバイスの位置情報とプライバシーをリセット」することによってシステムデータを適正化する方法があるみたいです。その内容が理解できないとあって、未だ手出ししていません。訳の分からないまま試して地獄を見るのは嫌ですもの。

 世界中で困っているみたいです。大容量のストレージを利用している方で、システムデータ領域が100GB 超えとなって困惑している方もいるそうです。私のなんか可愛いくらいですね。Apple がなんらか対処するのを待つことにします。いえ、期待できないかな。
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七拾参    iOS 最初で最後のアップデート(2022/8/21)
 4年半ほど前に中古のiPhone 6s を購入しました。OSバージョンは10.3.x でした。以後、バージョンアップごと通知が来ましたが、放置し続けました。

 6s は世間でも評判がよく、未だ使い続けている方も多いみたいです。私自身とても気に入っているので、快調な現状であえて変更を加える気になりませんでした。アップデートを忌避してきた最大の理由は、電池の保ちです。アップデートごと電池の保ちが悪くなるそうですね。新機種だと電池容量が大きくなってカバーされますが、古い6s には無理があります。

 足りない機能については、無料アプリや有料アプリでカバーしました。iOS11からサポートされたQR コード読み込みは、フリーソフトでまかないました。地図アプリの足りなさは、Google Maps で上回りさえしていますしね。また、ウザい広告を遮断するため、AdBlock Pro を導入しています。海外旅行用にGoogle 翻訳も買いました。そんな具合に、OSバージョンを止めたままでも問題ありませんでした。

 外出時でのネット閲覧や電話とショートメールを利用するくらいだし、各アプリや機能の設定を省電力設定にしていることも与り、電池の消耗劣化はほとんどありません。使い初めに比べても、充電スケジュールにさほど変化はありません。

 そんな具合に平和に暮らしていたものの、6s でのサポートがiOS15 までと聞いて悩みました。決済関係でスマホを活用する気はないにしろ、いざというときに備え、アップデートを決めました。

 自宅にWi-Fi 環境がないのでアップデートには苦労しました。バックアップする際も、近在のWi-Fi サービス提供施設を利用するくらいでしたから。
 先々週から先週にかけ、ネットカフェ利用のたびアップデートを進めました。覚悟していたといえ、ダウンロードには時間がかかりました。iOS15.6.1 まで一気に構成するとなると、膨大なファイルダウンロードが必要です。ネットカフェ利用3回目でやっとダウンロードが完了しました。そこにいくまで延々ダウンロードファイルを探しているとかのメッセージが出るだけで、順調にいっているのか駄目なのか判然としないんですね。我慢のしどころと、半信半疑のままひたすら待ちました。ストレージ容量をケチっているので、ひょっとしたら空きを探して時間を食っているのかも、あるいは後でリンゴループに陥いるかもと危惧もしました。

 ダウンロードが終わってシステム再構成にかかったときはホッとしました。
 すべて完了したとき、電池容量が残5%だったものだからゾッとしました。途中で電池が切れてたら焦ったことでしょう。

 「非使用のAppを取り除け」とかのメッセージが出たので確認すると、容量16GBのうち15GB強が使用済みとなっていました。さっそくキャッシュを削除したり、各種保存データを根こそぎ削除しました。さらに無用アプリも削除したものの14.3GB使用済みにしかなりませんでした。
 スマホを本格的に利用していないので、この空き容量内でなんとかなるでしょう。不要アプリを削除しても、大して容量が増えるわけでもありません。

 システムが内部的に利用しているファイルエリア(システムデータ領域)が巨大で、これはユーザにどうこうできるものではありません。PCならシステム内部ファイルひとつひとつまで表示して細かく対応できますが、スマホじゃやりようがありません。多分、OSアップデートにともなって生じた一時ファイルや旧ファイルだと想像します。アップデート前には小さなサイズだったのが、今や8GB 近く占めています。うぜえ〜。
 恐いのは、セキュリテイ関係などマイナーアップデートが提供されたとき、この空き容量でセッティングできるかです。そのときはそのときと諦めています。今から心配しても仕方ありません。

 現時点で電池消耗度は、以前に比べて1.5〜2倍ほどです。アプリが倍増していますし、多機能とあって常時動いているプロセスも倍増している印象です。もう少し様子を見て、電池の減り具合が好転しないようなら、不要アプリ削除、プロセスキルで対応したいと考えています。

 なお、動作はスムースで、なんの問題もありません。気になるのは、電池の減りだけです。
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七拾弐    『星を継ぐもの』シリーズ読了(2022/8/17)
 SF小説の傑作として世界中のファンに認められているのが、ジェイムズ・パトリック・ホーガンの『星を継ぐもの』です。これはシリーズもので、以下『ガニメデの優しい巨人』『巨人たちの星』を以って完結しています。私も昔から書名を知っていたし、増刷を受けて店頭に並ぶのを何度も見ました。

 夏前に『星を継ぐもの』102版目が書店に並び、頃合いかと購入しました。読んだところ、噂にたがわぬ面白さでした。
 月面で宇宙服を着た人間が発見され、調査の結果、5万年前の人間と判明しました。あまりの奇怪さに国連宇宙軍は、3次元透過スキャナー開発者でもある数学者で原子物理学者のヴィクター・ハントに調査依頼とともに調査チームのチーフ役を委嘱します。
 触れば崩れる恐れがあるため、3次元透過スキャナーを活用し、ルナリアンと名づけられた対象と彼が所持していた手帳から、あらゆる情報を読み取って謎に迫ってゆきます。

 調査チームの中に生物学の世界的碩学であるクリスチャン・ダンチェッカーがいて、彼は事実から導かれる推論のみで理論構築します。ダンチェッカーは、ルナリアンが人間以外のなにものでもないと断言します。5万年前の月に、なぜ人間が存在していたのか、この説明不可能な謎にハントをチーフとしたチームが迫ってゆきます。

 手帳に記されたルナリアン語を暗号解析の要領で解き明かすとともに、カレンダーと思しき様式から公転周期を割り出し、ルナリアン世界の秘密のベールが少しずつ剥がされてゆきます。

 一定の成果を挙げた後、ハントとダンチェッカーは木星軌道へと出かけます。衛星ガニメデでさらなる発見があったためです。地中深くに巨大な宇宙船が埋もれていて、これが2,500万年前の建造物と判じます。
 人類以前の太陽系に、遥かに高度な先史文明が存在していて、いかなる歴史が紡がれたものであるか、この圧倒的な謎にハントたちが挑んでゆきます。

 ハードSFでありながら、まるでアームチェア・ディテクティブ的ミステリの趣です。もちろん、椅子に凭れた探偵と違い、最新機器を活用し、その成果を地球最高レベルの頭脳群が分析し、仮説検証を繰り返します。そこでも、ダンチェッカーの揺るぎない事実立脚とハントの閃きが交錯して前進してゆく様が刺激的なんです。

 すぐに続きが読みたくなり、本屋を巡ると同じ日付の55版『ガニメデの優しい巨人』を見つけ、すかさず購入しました。残念ながら、『巨人たちの星』は見つけられず、続編の『内なる宇宙(上下)』とともに注文しました。今までにも当該本を店頭で見かけた記憶があり、その際に購入しなかったのを悔やみました。

 続刊の『ガニメデの優しい巨人』で、ガニメデに残された宇宙船の機器を通電させたところ、ビーコンであったらしく、重力波に導かれて過去から巨人の宇宙船がやってきます。ここに地球人とガニメアンの邂逅が生まれます。相互理解の中で、人類は太陽系の歴史の断片を知ることとなります。
 遠い過去、ガニメアン種族は住めなくなった母星を捨て、新たな住処を求めて外宇宙へ旅立ったと考えられました。ラスト、新天地を求めたであろう仲間を追い、巨人たちは地球を去ります。ハントたちは、巨人たちが目指す星系に向けてメッセージを発し、その直後に返信を受けるという驚きの成り行きの中、新たな新章へと続きます。

 次いで最終巻『巨人たちの星』において、すべての謎が解けるとともに、新たな宇宙の歴史が始まるというお話です。

 『巨人たちの星』は47版でした。今回購入した文庫本は2019年11月と2020年8月に増刷されたものです。刷数の多さから本シリーズの人気の高さが窺えますし、読めばなお納得させられます。
 書かれたのは40年ほど前であるのに、まるで未来を見通したかのようなアイデアです。後年のひも理論を髣髴させるかのように重力を取り扱っています。また、生物の分析に遺伝子と進化に対する理論を正しく持ち込んでいて、今読んでも色褪せる点がありません。
 きっと、将来に渡っても、世界中の読書人を興奮させ、ドラマチックな世界観に身を浸させてくれることでしょう。なお、『内なる宇宙』はシリーズから一旦離れた続編だそうで、届くのを心待ちにしています。

 参考までに紹介すると、星野之宣氏が上のシリーズを漫画化しています。ただし、お薦めまではしません。もし読むなら、原作の後にしてください。原作を大幅にアレンジしていて、そのアレンジ具合が改変レベルなんです。漫画を先に読むと、原作を読む際に感動が削がれるでしょう。
 文章で得られる感動とビジュアルで得られる感動には差異があり、星野氏は漫画ならではの効果を優先して再構成しています。最終巻で明らかになる謎が、漫画だと最初から描かれていて興醒めします。
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七拾壱    ソアラのエアコン不調(2022/8/11)
 参拾八    伊藤かずえ氏が羨ましい(2021/12/20)で書いたとおり、2018年にソアラのエアコンを修理しました。その5年くらい前から冷えが悪くなり、ついに冷房の用を為さなくなったため修理したものです。修理内容について、次のとおり記しています。
 中古パーツ交換でも足らず、メーカーへ送ってカスタムパーツで修理完了となりました。新品全交換より高くつきました。
 冷媒については、旧フロンが未だ供給されていて心配ありません。問題は中古部品による修理とあって、早い劣化が見込まれることです。また、新品と違って十分な性能保証が期待できないことです。

 修理後も冷えがもの足りなく、中古なので仕方あるまいと諦めの境地でした。そして、恐れていたとおり今年春くらいから冷えが悪くなり、夏を迎えてまったく効かない状況に至りました。猛暑続きに我慢できず、昨日のこと整備工場へ持ち込みました。
 ガス切れだったので、旧フロンを手配して補充しました。充填後も抜けるようであれば再修理しましょうということで、様子を見ることになりました。

 今は文句なしの冷気で、前回修理後より効きがいいくらいです。果たして、これがいつまで維持できるか怪しいながら、様子を見ます。

 BS11で放映されている「ディスカバリー傑作選 名車再生」を毎週楽しみにしています。クラシックカーをレストアする番組で、メカニックのエド・チャイナ氏の手腕が見どころです。クーラーなしのクラシックカーに、別途クーラーを取りつけたこともあります。ボディに穴を空けて取り付けステーを設置したりで苦労していました。

 我がソアラにも、同様に新しいエアコンが付けばいいのですが、エンジンルームがみっちり混み合っているので無理でしょう。メカニックの方も、新しいエアコンを取り付けるのは無理だと言ってました。すると、前回同様に中古パーツでの修理となりますが、あれから年月が経っているので余計に難しいでしょう。古い規格品がさらに市場から姿を消しているし、樹脂パーツの劣化は進んでいるしで、苦しい闘いを強いられるのが目に見えています。

 こうやって皆さん、クラシックカーを手放すんでしょうね。特に、日本ではエアコンなしのカーライフは考えられません。たまに、夏場には乗らない、あるいは汗だくを覚悟の上とかいう強者もいますけどね。私はソアラを実用に供していますから、そういうのはご勘弁です。
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七拾     フェルメールの真実とベラスケスの俊髦ぶり(2022/8/3)
 昨日のこと、猛暑の大阪を訪ねました。大阪市立美術館「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」と神戸市立博物館「美の巨匠たち スコットランド国立美術館」を鑑賞するためです。
 地元旅行代理店のツアーを利用しました。人気企画だったのでしょう。7月の催行はすべて埋まり、8月しか空いていませんでした。8月は暑いので皆さん敬遠したのでしょうか、わずか7名の参加者でした。バスはガラガラだし、待ち合わせや乗降は手間いらずだしで、余裕の鑑賞会となりました。

 フェルメールの「手紙を読む女」は無地の壁が背景となっていますが、実はその下に天使像が隠されています。修復作業の中で違ったニス層が認められ、最新技術による分析でフェルメール以後に無地の壁が描かれたものと断定されました。そこで、後年に描かれた背景を除去し、オリジナル天使像を露わにました。今回の展示は、その成果披露です。

 無地の壁面の方が、地味で深遠な雰囲気があり、むしろフェルメールらしさが感じられます。しかし、フェルメールらしさを演出するため、あえて描き加えられたとあっては余計ですね。それに天使像は仰山ながら、恋文と思われる手紙とセットの構成で、この女性の想いを表現したものでしょう。

 他にも、レンブラントの「若きサスキアの肖像」とか、メツーの「レースを編む女」などの名品を目の当たりにすることができました。

 昼食はアベノハルカス19階でのバイキングで、そこらのホテルバイキングとは料理の質が違っていました。
 市立美術館は隣の天王寺公園内にあり、近くて助かりました。なにせ、36℃の猛暑とあって、太陽に攻撃されている気分でしたから。



 大坂からの帰途、神戸市立博物館を訪ね、スコットランドで活躍した画家を中心に鑑賞しました。なお、両展覧会ともに作品撮影は禁止されていました。



 目玉はイングランドとは関係のないベラスケスでした。「卵を料理する老婆」は、ベラスケス十代の作品だそうで、その超絶技巧に唸らされました。あの完璧なまでの質感表現を、十代において使いこなしていたんですね。モネ17歳のときに描いた風景画「ルエルの眺め」にも感心しましたが、ベラスケスもまた絵画史において頂点にある画家であることを納得させられます。

 他にもレンブラントの「ベッドの中の女性」、ブーシェの「田園の情景3部作」― 「愛すべきパストラル」 「眠る女庭師」 「田舎風の贈物」も見応えがありました。
 また、今展覧会の目玉は、ジョシュア・レノルズの「ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち」です。神話の三女神を当時のイギリス上流階級の三姉妹に擬えた意欲作です。現実世界のビーナスとは、かくあらんやと思わしめます。おそらく当時の社交界において話題をさらったであろうと想像させられます。

 今回の旅行企画にGo Toはありませんから全額負担となります。しかし、まったく不満を覚えません。質の高い展覧会ふたつを堪能できて満足しています。
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六拾九    井岡選手、檜舞台に上がるか引き籠るか(2022/7/27)
 いささか旧聞になりますが、2週間前に大田区総合体育館でWBO S.フライ級王者の井岡選手に1位のドニー・ニエテス選手(フィリピン)が挑んだ世界戦が行われ、前回の雪辱を果たす大差判定勝利でした。

 横綱相撲と言っていい内容でした。前回の判定負け試合は、競ってはいたもののニエテス選手がよりパンチを効かせていました。両者ともに近間で潜る攻防一体のボクシングが巧みとあって、見応えがありました。今回は様相が違い、井岡選手が距離を取ってのボクシングでポイントを重ねました。40歳のニエテス選手は加齢もあってか、距離を詰めることもできず、いいようにやられました。

 井岡選手について改めて書くのは、一昨日のことWOWOWでWBC S.フライ級王者のジェシー・ロドリゲス選手と2位で元王者のシーサケット・ソー・ルンヴィサイ選手の対戦を観たからです。ロドリゲス選手はクアドラス選手と王座決定戦を行い、判定勝ちで王座を獲得しました。当初は前座で全米ライトフライ級王座決定戦を行う予定だったのが、クアドラス選手と対戦予定だったシーサケット選手が病気で欠場した為、2階級下のロドリゲス選手が急遽代役を務めたものです。

 2階級下で、なお急なマッチメイクでありながら、見事に強豪を下したのです。ゆえに、底知れない実力が窺われました。今回の挑戦者は最強といっていいシーサケット選手ですから、どのような展開になるのか、実力は本物なのかなど興味津々でした。
 結果は、あまりに一方的な8回TKO勝利でした。見事な足捌きで、打たせずに打つを実践し、シーサケット選手の強打を空回りさせました。今後、S.フライ級への適応が進めば、クラス随一の強豪と看做されるのではないでしょうか。

 そこで、井岡選手です。今後、どうするのでしょうか。王者たちを整理します。
  WBAスーパー王者
   ファン・フランシスコ・エストラーダ 42勝3敗(28KO)
  同レギュラー王者
   ジョシュア・フランコ 18勝1敗2分1無効(8KO)
  WBC王者
   ジェシー・ロドリゲス 16勝無敗(11KO)
  IBF王者
   フェルナンド・マルティネス 14勝無敗(8KO)
  WBO王者
   井岡一翔 29勝2敗(15KO)
 なお、無冠ながらローマン・ゴンザレス選手も文句なしの強豪です。昨年、エストラーデ選手と統一戦を行い2-1の判定で敗れました。私は明確にゴンザレス選手が勝ったと思いました。ジャッジが物議を醸したことから、世間一般もゴンザレス選手の勝ちと見たのでしょう。戦績は51勝3敗(41KO)で、上の王者たちより実績で上回っています。

 ゴンザレス選手とエストラーデ選手の年内再々戦が予定されています。私はゴンザレス選手優位と見ています。前戦でも手数で若干上回り、ヒット数は明らかに多かったものです。ジャッジが批判されたこともあり、次回は真っ当な判定が為されるでしょうしね。

 もし、ゴンザレス選手が勝てば、間違いなく上に記したWBC王者ジェシー・ロドリゲス選手と統一戦へと進むでしょう。ゴンザレス選手はシーサケット選手に連敗していて、名誉回復のためにもロドリゲス選手と闘わずにいられないでしょう。
 となると井岡選手は蚊帳の外です。ゴンザレス選手やロドリゲス選手との対戦を忌避するなら、引き籠りの日本限定王者として空しい立場となります。せっかく優れたボクサーなのですから、世界頂点争闘に加わっていただきたいです。でもね、そのようなビッグマッチ路線を期待できないんです。このまま強敵から逃げ続け、裸の王様を続けるのかな。
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六拾八    『ヒトラーの戦い』読了(2022/7/21)
 一昨年の10月から読み始めた児島譲著『第二次世界大戦 ヒトラーの戦い』を読み終えました。文春文庫版で全10巻の大作ながら、1年9か月もかかりました。『日露戦争』全8巻も日数がかかりましたが、本作は格別でした。もちろん、合間を縫って他の書籍も読みながらではありましたけど。
 九百七拾九  ラスボス『ヒトラーの戦い』(2020/10/12)は、第一巻読了後に書いたもので、はや2年近く経ったことに驚いてもいます。

 ヒトラーによる政権奪取に始まり、第二次世界大戦が開始されるや、その内容があまりに膨大なだけに、把握するにも手間がかかりました。何度も地図を参照し、人名と地名を確認しながら読み進めなければならず、遅々として読み進めることができませんでした。
 いろいろ考えさせられたんです。戦闘については、ほぼ知悉しています。第1巻でのラインラント進駐以後、オーストリア併合、ポーランド侵攻、パリ侵攻電撃戦、ノルウェー侵攻、バトル・オブ・ブリテン、バルバロッサ作戦、アフリカ戦線と拡大一方です。そして、エル・アラメインとスターリングラードで挫折します。やがて東部戦線が崩壊し、ノルマンディーと地中海から大陸反攻が為されました。

 戦勢の変化に応じて政治的動きも活発になり、そのあたりが勉強になりました。ムソリーニ家族の軋轢など初めて知りました。トム・クルーズが演じたスタウフェンベルク大佐を実行犯とするヒトラー暗殺計画も、その背景と幅広い人脈が係っていたのも初めて知りました。あるいは、ヨーロッパ全土は勿論、エジプトまでもが濃い情報戦の舞台になっていたのも勉強になりました。

 ヤルタ会談とその前段となったマルタ会議など、終戦処理と戦後体制の打合せなど、あらためて整理できました。また、フランスの戦勝ポジション確保とイタリアの降伏に至るまでのグダグダなどは、イライラしながら読み進めました。日本を決められない国とか自虐する向きがありますが、イタリアに比べれば真っ当なものです。
 あるいは、西部戦線における連合軍最高司令管アイゼンハワー元帥に対し、イギリスのモンゴメリー元帥が主導権を握ろうと争う姿も印象的でした。
 そのような政治的争闘については、知らないことばかりだったので頭に刻み込みながら読み進めました。ために、否応もなく読書スピードも遅くなり、幾度も書を横に置いて考えさせられました。一昨年に読み始めたとき、まさかここまで時間を食うとは想像もできませんでした。

 本書はタイトルのとおり、ヒトラーを主人公としているので、その人となりを最大限に描いています。病気と身体の不調を抱え、ここまでの戦争指導をする重圧はいかほどでしょうか。まともな人間なら耐えられないでしょう。主治医の恣意的診断による不適切な処方で、長きにわたって重い症状に悩まされながらの国家指導です。これがヒトラー後年の拙劣な判断に繋がったかもしれません。あるいは、己の罪障を抑え込むには、あえて狂気に染まらなければ務まらなかったのかもしれません。
 20世紀最大の狂気で国家を染め、染まったのがドイツという一大工業国であり、勤勉で規律に忠実な国民であったのも不幸でした。我が日本陸軍もまた、そのドイツに魅せられ、引きずられてしまいました。

 眼前のウクライナ戦争を眺めると、プーチン大統領がピョートル大帝を引用することから、フリードリヒ大王に魅せられたヒトラーに倣っているやもと疑わせられます。願わくば、大祖国戦争を称揚するプーチン大統領には、その災厄をもたらしたヒトラーが、まさに己の姿であることに気づいていただきたいです。
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六拾七    最近の世相(2022/7/13)
 参議院選挙期間中に衝撃的な事件が起こりました。奈良での警護状況が非難されているのは、仕方ないというか素人目にも駄目駄目ですもの。警護の方々、全周警戒をやってないですね。完全に気の緩みです。発砲を受けた後、誰も身体保護をやらずに突っ立ていました。状況を見定めていたのでしょうが、最悪の結果を招いた以上は言い訳のしようもありません。日本の要人警護の実態が残念です。

 上の事件を受けての小沢氏の発言が非難を浴びました。
 社会が安定して良い政治が行われていれば、こんな過激な事件は起きない。自民党がおごり高ぶり、勝手なことをやった結果だ。

 前段の民生の安定話は横に置いて、自民党内での驕慢さが一番際立ったのは小沢氏じゃないかな。経世会のなんかの役職に就いていたとき、総裁候補を面接した例の図が最たるものに見えました。あれで自民党他派閥の方々から許すまじの怒りを買ったことでしょう。
 民主党が政権を取ったときも、すかさず陳情窓口を幹事長たる自分の事務所に一元化しました。驕り高ぶる政治家の名に一番相応しい振舞いでした。
 小沢氏は前の衆議院選挙で地方区落選となり、比例復活という大恥を晒しています。今回も支援議員が落選ということで、落日を印象づけました。もはや、誰も相手にせんでしょう。

 日本女性の意識のあり様も大きく変化しました。
 風俗で「出稼ぎ海外渡航」日本人女性の急増でアメリカは厳重警戒、入国拒否も

 記事中、ライターさんによる背景説明は次のとおりです。

 純粋に、日本が貧しくなった点はあるでしょう。パパ活などでカジュアル化したせいで、個人でおこなう売春の価格が暴落していますし、風俗でも客の奪い合いが激しいですからね。割のいい海外に行って稼ぐ、という選択肢が出てくるのも当然です。

 必ずしも貧困話に落とし込むのは違うかと思います。A子さんの説明からも、割のよさを求めてのことに見えます。“パパ活”にしても、40年前に名を売った“夕ぐれ族”のまんまです。“愛人バンク”とかが全国的に猖獗していました。昔も今も売春に対するハードルの低い人間がいて、今は上の「カジュアル化」という意識のあり様の変化なのでしょう。

 夕ぐれ族の代表的なグループの社長だったかのTM氏が、インタビューとかマスコミに結構顔出していました。横山やすし氏がホストを務める週刊誌での対談が事故案件でした。横山氏が口汚く罵倒するものだから、TM氏は「見解の相違ですね。これ以上はお話できません」と席を立っちゃいました。うろ憶えですけど、そんな記事があったかと。対談記事中の写真―席を立つTM氏の顔が引き攣っていました。

 大谷選手がMLBのいろんな記録を塗り替えています。その中でも、次の記録が異次元話です。漫画であってさえ、嘘くさくて敬遠するレベルです。
 ここ50年間における得点圏での長打率トップ3
  .621 大谷選手
  .616 トラウト選手
  .615 マグワイア選手
 ここ50年間における得点圏での被長打率トップ3
  .201 大谷投手
  .211 ベタンテス投手
  .226 チャップマン投手
 MLBのファンたちが、まさに歴史を目撃しているとばかりに夢中なのも頷けます。
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六拾六    節電要請にどう応えるか(2022/7/6)
 政府の節電要請を受け、野村総合研究所が2011年4月15日に発表した「震災復興に向けた緊急対策の推進について 〜第6回提言〜」が話題になりました。TVが電力を大きく食うことを、マスコミはなぜ報じないのかという趣旨です。例えば、「黙殺された野村総研の“TV消せばエアコンの1.7倍節電”報告」などです。

 ここで注目すべきは、「図表2 主な節電対策を講じた場合の1軒あたりの期待節電量」と「図表4 各節電施策の期待節電量」の試算です。
 効果の大きい順に挙げると、次のとおりです。
  テレビをこまめに消す:220W
  照明をこまめに消灯する:162W
  使用するエアコンの数を減らす:130W
  白熱電球を省エネ型照明に交換する:126W
  エアコンの設定温度を上げる:52W
 最大の節電効果はTVを点けないことで、前提条件が「液晶テレビ」となっています。調査は東北大震災後です。その数年前に実施された地デジ転換に合わせ、補助もあって液晶TVに置き換わった時期です。それから10余年を経て、各家庭で液晶TVの大型化が進んでいるところです。当然のこと、消費電力もより大きくなっています。

 なので、節電を慫慂するなら、TVの視聴控えを訴えるのが筋というものです。政府の節電要請をTVニュースが報じる際、エアコンを挙げるものの、TV視聴控えには一切口を噤んでいたんですね。これでは非難を浴びても仕方ないでしょう。

 ところで、次点の「照明をこまめに消灯する」の節電効果がやたら大きいことが気になりました。蛍光灯の消費電力は小さいのに、なんでこんなに節電効果が大きいのかと。そこで、中身を見ると「白熱電球3つを消す」という前提条件でした。
 たいていの家庭では、とうの昔に白熱球を蛍光球に交換しているでしょうに。前提条件が実態に合っていません。白熱球のメリットは暖色系の演色性以外にありません。電気を食うし、触れないほど熱くなりますし、いかにもな電気食いです。昨今ならLED球へ交換するケースが多いでしょうし。

 部屋へ頻繁に出入りする場合に一々スイッチングまでしなくていいんじゃないですか。大型の照明器具や白熱球は別です。さすがに電力食いですから、こまめに消すべきです。というか、誰でもそうしているでしょう。で、大半の蛍光灯については、こまめなスイッチングをしなくても問題は小さいでしょう。

 結論として、「TVをこまめに消し」、「熱中症対策としてエアコンを点けるにしろ、高目の温度設定にする」でよいかと思います。家庭用の小さな蛍光灯にまで目くじらを立てることもないでしょう。手間を惜しまないなら、好きにすればいいです。
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六拾五    ネット記事は玉石混交(2022/6/30)
 六拾壱    小栗忠順は再評価されるべき(2022/6/1) で、ネットを舞台にした情報発信のおかげで、いろいろな文章が日の目を見て喜ぶべきこととか書きました。しかしながら、当然のこと玉石混交なわけで、本来あるはずの編集からの適切なアドバイスもないとあって、恣意的な文章もまた掲載されることとなります。
 一昨日にYahoo! ニュースに載っていた宇山卓栄氏の「元寇の謎。なぜ高麗王は率先して、日本を侵略しようとしたのか」もまた、そのような記事かと思います。

 宇山氏の著書『民族と文明で読み解く大アジア史』に収めきれなかった章を別途 Web 連載の形で掲載したそうです。多分、本に収録するには、不適当との判断でなかったかと邪推しています。

 高麗の忠烈王が元への忠誠を政治闘争に利用し、元寇が忠烈王の権力維持によって生じたものとの趣旨で書かれています。詳細は読んでいただくとして、歴史的経緯の記述はそのとおりなのですが、その評価の方向が歪なんです。

 「蒙古襲来」とも言われるように、モンゴル人が大挙して押し寄せて来て、それに朝鮮人たちが仕方なく付き合わされたという捉え方が日本人の中にもあると思います。しかし、実態はそうではありません。

 よくもまあ言い切ったものです。さすがに本に収録するのが憚られる内容です。

 忠烈王の上奏文は高麗に日本侵略の意図があったことの何よりの証拠です。元を焚き付けた上での侵略ですから「虎の威を借りる狐」の如きものですが、実際に朝鮮兵はモンゴル兵とともに日本に襲来し、乱暴狼藉を働きました。立派な侵略であることに違いありません。

 宇山氏の説明からは、なにかと高麗を貶める風が感じられます。フビライは日本を冊封体制に入れようと、何度も日本に対して招諭(国交を開く働きかけ)を行いました。高麗からの国使は日本に来てさえいません。フビライの書状が高圧的だったので日本側が受け取るはずもなく、使節役が殺される恐れがあったためです。もともと、高麗の趙彜(い)等が日本と通ずべしと進言し、フビライは南宋との戦争もあって日本を取り込もうと考えたのでしょう。

 そして、高麗に命じて使節を送りましたが、高麗人たちは殺されることを恐れたのか日本に至りませんでした。しかし、再訪を命じられて大宰府に至り、国書が提出されました。国書は鎌倉に送られ、さらに朝廷に転送されたものの受け取りを拒否されました。

 次いで第三次招諭、第四次招諭が行われたものの、日本は無視しています。第五次、第六次も行われ、このときは女真族の趙良弼が節度使を務めています。趙良弼は金と元の戦争を経験しており、フビライの信任も厚かったそうですが、やはり日本に無視されています。趙良弼は大宰府に長く滞在していて、その間に日本の風物を観察して、日本攻撃は不可と進言しています。日本はジパングなどでなく、土地も狭くて利が得られず、渡海も難しく禍害は測ることができないとしています。そしてなにより、民の俗を「狼勇にして殺を嗜み」と鎌倉期の武士を恐れています。

 このような経緯を辿っていますから、宇山氏の忠烈王の使嗾によって日本侵攻が行われたかのような説明は不適切です。

 宇山氏は続けて高麗の歴史を辿り、忠烈王がフビライに忠誠を誓った経緯を述べています。それはそのとおりです。しかし、次の一文は余計でしょう。

 フビライの意を率先して遂行することが自らの義務と感じ、終始、フビライに過剰にへりくだるのです。そして、フビライの世界征服を助けるべく、高麗が犠牲になっても日本侵略を行おうと進言して、フビライの歓心を買いました。

 いくらなんでも、これはうがち過ぎというか話を作りすぎです。元による日本侵攻の先兵となったため、高麗はとんでもない負担と兵の供出を強いられました。戦船900艘の建造、兵士や水夫など1万5千人の動員が命じられていますからね。それまでの元との戦い、三別抄の内乱が続いて国が荒廃した中での大動員ですから疲弊の極みとなりました。フビライが命ずるなら避けようもありませんが、わざわざ自分から日本侵攻を慫慂するはずもないじゃないですか。

 忠烈王は日本を、元と高麗の共通の敵と措定することで、彼らの連帯意識を高めようとしたのです。元との結び付きが強固になればなるほど、高麗王の地位は安泰なものとなります。元寇で高麗は不本意ながらモンゴルに動員されたわけではなく、実際には高麗が積極的に加担していたのです。

 さすがに、こんな話を真に受ける読者もいないでしょう。
 続けて、忠烈王が高麗軍と元軍との指揮系統統一を図ったり、その統括権限を得たことを述べています。そして、次のように総括しているんです。

 忠烈王が元王朝の日本侵略を自らの王権強化のための材料として最大限利用したとも言えます。その意味において、忠烈王は政治的に大きな成果を挙げました。以後も朝鮮の王や為政者たちは忠烈王を模範として「虎の威を借りる狐」を演じていくことになります。

 忠烈王は徹底的なモンゴル化政策を進めています。これは仕方なかったものと思います。圧倒的な軍事力と徹底的な略奪政策の元を前にしては、敵対的な政策は取れません。むしろ、一体化することによって、高麗の地位を上げ、平静を獲得できます。現に、高麗に対する苛斂誅求を極めていた洪茶丘の権限を制限することを受け入れてもらっています。

 歴史の見方はいろいろありましょう。特に記録にない点については、解釈も多様に為されるのは当然です。ただ、宇山氏の場合は、同じ事実を見て偏った言葉で説明してるんです。上の記事は、忠烈王の人となりを否定的に表現しています。その度合いが過ぎるんですね。
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六拾四    ウクライナ戦は泥仕合の様相(2022/6/22)
 ウクライナ戦について、西側の報道が一方的で偏ったものであるとの批判が多くなっています。戦争の実相は知りませんが、少なくとも日本の報道が歪なのは間違いありません。

 ロシア軍兵士による住民虐殺、強姦話もでっち上げが明らかになっています。以下は田中宇氏の記事を引用しています。田中氏は陰謀論を語ることが多いので、話半分で読んでください。私自身、内容確認せずに引用していますので。

 ウクライナ政府のデニソバ人権監督官は、露軍兵士がウクライナで市民を強姦したり性的に残虐な殺し方をしているといった話を、4月の2週間に400件、米国側のマスコミに流し、米タイム誌などがさかんに喧伝した。だがその後、ウクライナのNGOが、露軍兵士に強姦された被害者たちの救援事業をやって米欧政府などから補助金や支援金を集めるため、デニソバ人権監督官の強姦話を一つずつ検証して被害者や家族など関係者に会っていこうとしたところ、具体的に検証していける話がなく、デニソバが話をでっち上げていたことがわかった。
加えてデニソバは、ウクライナ政府からロシアに行って捕虜交換の話をまとめてこいと言われたのに西欧に行って休養していたことも発覚し、NGOからの抗議を受けてウクライナ議会が調査し、5月31日にデニソバを罷免した。


 事実関係はともかく、デニソバ氏のやらかしが日本では報じられていません。ロシア軍兵士の非道を報じたのですから、続けてその後に明らかになった事実関係も報じるべきです。そういった点からも、いかに偏向しているかが理解できるでしょう。

 また、ロシア軍が痛めつけられていると何度も報じられましたが、現実の東部での戦況はウクライナ側が明らかに非勢です。アメリカを始めとした西側の兵器投入によって戦勢が大きく傾く旨の報道も多かったものですが、実際にはウクライナ軍が圧されています。投入兵力が違っていますから、これは当然の結果です。
 ゼレンスキー大統領もここにきて、ウクライナ軍兵士が毎日これだけ死んでいるとか悲観的数字を表に出しています。だから、もっと支援が必要との趣意ですね。

 5月頭にあるレポートを読みました。読んだ後に捨て置いたので紹介できないのが残念です。5月頭の時点で、すでに今の状況が予想されていました。アメリカの外交安全保障に係った3人による解説です。ロシア、ウクライナ、ベラルーシで仕事をしていた方々で、3人ともが同じ内容を語っていました。概ね次のようなものでした。

 ロシアは東部2州を完全に勢力下に置き、衛星国としてウクライナから切り離すのが作戦目的であるとの趣意でした。そのとおりになっていますね。付け足すなら、クリミアを完全に機能させるために隣接した陸地側を収めてもいます。

 虚心坦懐に眺めるなら、ロシアは完全に作戦目標を達成しようとしています。いかに西側が最新兵器を供与しようとも、上の制圧区域を取り返すのは無理でしょう。状況はロシア側が本来の目的を達成し、ウクライナ側はひたすら苦戦しているのが実態です。それどころか、ハリコフに対して再度の侵攻を企図している動きさえあります。
 TVで語っている軍事アナリストの方々は百も承知なのでしょう。しかし、なぜかそうは言わないんですね。視聴者側としては、マスコミ報道に眼を曇らされず、ものごとを正しく見抜くようにしましょう。
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六拾参    蓄電システムの本命−超伝導フライホイール(2022/6/15)
 プリウスが世界発ハイブリッドとして販売されたのが1997年で、はや四半世紀経ちます。三菱が世界初量産EVであるi-MiEVを販売したのが2009年で、同じく日産のリーフが2010年です。

 これら電動車は回生ブレーキを搭載し、運動エルギーを電気に変換して蓄電池に蓄え、逆に放出してモーターを駆動します。今まで熱として捨てていたエネルギーを再利用する手法です。今や車だけでなく、電動機を使用するエレベーター、鉄道車両など幅広く用いられています。

 JR東日本が超電導フライホイール蓄電システムの実証実験を計画していて、その意義とともに備忘録として書き留めておきます。

 この実証実験は、鉄道総合研究所、クボテック、古河電電工、ミラプロが参加したNEDOのプロジェクトを鉄道へ利用したものです。フライホイール型の蓄電には長短があります。リンク先のJR東日本が作成した一覧を再掲しておきます。これを眺めたら、それぞれの特長が明らかです。

超伝導フライホイール フライホイール 二次電池 キャパシタ
使用環境
蓄電容量
安全性
保守性

 フライホイールは回転体なので、軸受機構の摩擦損傷が後々のメンテコストとなります。

 電池はいうまでもなく、燃料とエネルギー転換部が一体化しているので、危険物そのものです。ゆえにリチウムみたくエネルギー密度を高めると危険性が級数的に跳ね上がります。

 キャパシタは回収・放出のレスポンスが瞬時に為される優れものながら、高くつきます。家電の回路部みたく小電力を扱うならともかく、大容量での利用は稀です。私が知る限り、20年ほど前に日産がトラックに採用したくらいです。
 内燃機関超基礎講座 | 世界初のキャパシタ使用ディーゼルハイブリッド

 フライホイールの長所はそのままに、課題とされていた軸受メンテを解消したのが超伝導フライホイールです。通常の接触軸受型フライホイールを導入し、電力を2割削減した実績がすでにあるものの、摩擦損傷によるメンテナンスコストが課題となっていたそうです。

 超伝導なのでロスがなく、長時間の保存ができて性能劣化もありません。電池を使用しないので有害物質にも無関係です。ただ、超電導はコスト高が課題で、コスト低減を図る技術革新が進められてきたものです。特に鉄道総合研究所を中心にしたリニアでの取り組みが大きく寄与しているそうです。
  • 蓄電容量はフライホイールの直径(2乗)、重さ、回転数に比例することから、炭素繊維強化プラスチックをフライホイール素材として採用
  • 液化ヘリウムは高価で希少なので、より高温で超電導を実現できる技術を開発
  • フライホイール側に超電導磁石を設置しなくても浮遊を実現できる独自の超電導バルク体を開発
  • 4tのフライホイールで6000回転/分を実現
 本来の主目的は、太陽光発電と連携させ、再生可能エネルギーの変動吸収を担うことだそうです。出力調整が大きな問題になっており、蓄電容量拡大が求められています。そこで、二次蓄電池でなく、超電導フライホイールが注目されています。容量拡大にも対応しやすく、発展性があるそうです。量産効果でコストも下げられるし、将来市場は世界規模で見込めるのではないでしょうか。

 今回の実証実験で有効性が確認されたら、広く普及するでしょう。世界の鉄道事業の必須技術になるかもしれません。今や電動車で回生ブレーキは当たり前だし、モータースポーツでも普通に利用されていますからね。鉄道でも有望だろうと期待しています。
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六拾弐    井上選手は裏切らない(2022/6/8)
 昨夜、さいたまスーパーアリーナにおいて、バンタム級王座統一戦が開催されました。WBA&IBF王者の井上尚弥選手とWBC王者のノニト・ドネア選手による3団体統一で、3年ぶりの再戦でした。
 成長途上の井上選手と39歳のドネア選手とでは、差が大きいところです。ただ、前回の試合が白熱していたことと、ここ2戦のドネア選手の勝ちっぷりが鮮やかだったため、激戦が期待されました。結果は井上選手の2回1分24秒TKO勝利で、意外ともいえる一方的な内容でした。

 両者ともに軽量級を代表するビッグネーム、それも稀代のハードパンチャーだけに世界中のボクシングファンが注目していました。地上波での放送はなく、AmazonプライムビデオとESPN+によるネット配信で世界に届けられました。高額のファイトマネーをじり貧の放送局では払えないんですね。

 初回終了間際、井上選手が近い距離で右クロスを打ち下ろしてダウンを奪いました。これが顔面の向こう奥まで振り抜くパンチで、ここでほぼ試合の帰趨が決まりました。試合後に井上選手が手応えがなかったと答えていましたが、手応えのなさこそが業の切れ具合を表しています。野球、ゴルフ、バレーボール、テニス、空手試割り、試し切りなどいずれも共通で、無駄なく最高精度の動作だと、むしろ手応えがないものです。井上選手のパンチは、すでに極まっていると考えるべきでしょう。

 2Rに入るや倒しにいき、ドネア選手もここが正念場とばかり迎え撃ったので打撃戦となり、ドネア選手は強打を浴びまくりました。何とか耐えていたドネア選手も堪らずダウンし、レフェリーががすかさず止めました。
 ドネア選手がここまで一方的に打ち倒されたのは、フェザー級(2階級上)でのニコラス・ウォータース戦のみです。そのウォータース選手より井上選手の方が速くてパンチも強かったです。つまり、井上選手はフェザー級でも十分戴冠できると証明したようなものです。
 バンタムに拘らず、さっさとS.バンタム級に上げるべきです。バンタム級での最強の相手がドネア選手だったのですから、もはやライバルが存在しません。

 なお、井上選手のグローブは、初めて嵌めたレイジェス製でした。レイジェスは薄いそうで、今回はいつも以上に硬いパンチに見えました。あんなのに晒されたドネア選手は、気の毒としか言えません。

 ボクシングマガジンが選定するPFPランキングで、トップに掲げられるのは間違いないでしょう。先日、サウル・アルバレス選手がディミトリー・ビボル選手に敗けましたから、順位が入れ替わるものと予想します。
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六拾壱    小栗忠順は再評価されるべき(2022/6/1)
 先月のJB press の記事です。
 東郷平八郎が「日露戦争の勝利は幕臣・小栗上野介のお陰」と感謝した理由」

 ネットへの情報発信が世の主となったため、かつての出版物を遥かに超える量で情報が溢れています。おかげで、今までなら出版にまで至らなかったであろう文章までが日の目を見ています。これは歓迎すべきことで、上の記事なども典型です。

 私は昔から、小栗忠順こそが幕末第一の人物であったとの確信がありました。小栗忠順は旗本大身に加え、抜群の智能を備えていたため、次々に役職の階段を登っていきました。詳細は Wiki ででも読んでいただくとして、知れば知るほど小栗の才能と業績に驚かされるでしょう。

 勝海舟の小栗評には笑わされます。
 小栗は誠に一俗物のみ、唯だ一の徳川氏あるを知りて、復た日本あるを知らず
 眼識局小にして、余り学問のなかりし人


 遣米使節の護衛として咸臨丸艦長を務めながら、船酔いがひどくてロクに努めを果たせなかった勝が、使節団の目付に抜擢され、進んだ文明 ― 特に工業や金融にまで学ぼうとした小栗を貶めるんですね。笑っちゃいます。小栗は帰国後に小判の為替相場を三倍に引き上げています。ワシントン滞在中にアメリカの金相場を研究したんですね。

 また、幕末も押し詰まり、小栗は封建制を廃して郡県制導入を企図します。勝は小栗から郡県制度敷設の相談を受けた際、戸惑って返事もできませんでした。その勝による上のごとき批評は、滑稽でさえあります。まるで、水亀が巨龍を上から目線で貶めている図です。
 小栗を評すに、対官軍戦評定を持ち出すのはショボイというかピント外れです。氏の業績を評価するにあたって、一評定なんてどうでもいい話です。

 小栗の業績を調べられた方は、内容が多岐に渡り、しかも先例のない国家的プロジェクトばかりであることに驚かされるでしょう。当時の日本にあっては、なにをどうしてよいか分からない未知の政策を、果断に実行して成果を挙げていったものです。
 維新関係者にとっては、歴史から抹殺するしかないでしょう。自分たちが否定した徳川幕府において、すでに燦然たる業績を挙げた人物ですから。まず以って、認める訳にはいきませんもの。

 中里介山氏が小栗を高く評価しています。『大菩薩峠』から引用します。
 小栗上野介の名は、徳川幕府の終わりにおいては、何人の名よりも忘れてはならない名の一つであるのに、維新以後においては、忘れられ過ぎるほど、忘れられた名前であります。
 事実において、この人ほど、維新前後の日本の歴史に重大関係を持ってゐる人はありません。それが忘れられ過ぎるほど忘れられてゐるのは、西郷と勝の名が急に光り出したせゐであります。
 江戸城譲り渡しといふ大詰めが、薩摩の西郷隆盛といふ千両役者と、江戸の勝安房といふ松助以上の脇師と二人の手によって、猫の児を譲り渡すやうに、あざやかな手際で、幕を切ってしまったものですから、舞台は二人が背負って立って、その一幕には他の役者が一切無用になりました。
 歴史といふものは、その当座は皆勝利の歴史であります。勝利者の宣伝によって歴史と人物とが一時幻惑されてしまひます。そこであの一幕見だけをのぞいた大向うは、いよう御両人!といふより外のかけ声がでないのであります。併し、その背後に江戸の方には、勝よりも以上の役者が一枚控えて、あたら千両の看板を一枚台無しにした悲壮なる黒幕があります。
 舞台の廻し方が、正当(或いは逆転)に行くならば、あの時、西郷を向こうに廻し当面に立つ処の役者は、小栗でありました。単に西郷といはず、所謂、維新の勢力の全部を向こうに廻して立つ役者が小栗上野介でありました。


 私は小栗忠順こそが幕末最大の、そして圧倒的巨人であったと考えています。小栗の死は、日本にとって痛恨の損失です。致仕した人間、それも戦闘になんの係りもない元官僚を殺す理由なんてありません。新撰組関係者と同列に扱う話じゃないです。
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