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六百     ろくでもない話と嬉しい話(2013/3/24)
五百九拾九  辺野古移設のまやかし(2013/3/10)
五百九拾八  デザイナー受難(2013/3/3)
五百九拾七  ドラえもん 生物でない理由は?(2013/2/24)
五百九拾六  村田諒太氏プロ入り(2013/2/16)
五百九拾五  未熟な中国海軍(2013/2/9)
五百九拾四  最近の世相(2013/2/2)
五百九拾参  2012ミステリ特選(2013/1/20)
五百九拾弐  辺野古茫洋(2013/1/13)
五百九拾壱  最強対決6たび(2013/1/6)
五百九拾   尖閣が煮詰まってきました(2012/12/30)
五百八拾九  MDのでたらめ再び(2012/12/24)
五百八拾八  歳末総選挙(2012/12/16)
五百八拾七  パッキャオ壮絶KO敗(2012/12/9)
五百八拾六  最近の世相(2012/12/1)
五百八拾五  ありがちな分析(2012/11/18)
五百八拾四  オバマ再選(2012/11/11)
五百八拾参  絶品!! 横山秀夫氏『64(ロクヨン)』(2012/11/5)
五百八拾弐  毎年の秋の夜長(2012/10/28)
五百八拾壱  橋下市長vs週間朝日(2012/10/21)




六百     ろくでもない話と嬉しい話(2013/3/24)
産経ニュース(2013.3.23)から

官房長官「説明責任果たし、前へ」

菅義偉官房長官は23日、都内で講演し、政府が沖縄県に提出した米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設をめぐる埋め立て申請について、県に対し「しっかりと説明責任を果たし、物事を前に進めていく」と理解を求めた。

このコメントは、日本政府が沖縄県に対して、辺野古一帯の埋め立て申請を行い、安倍首相が「普天間固定化あってはならない」との考えを示したのに応じての発言です。

しかしねえ、「説明責任」なんて果たせますかねえ。こんなこと言ってると、どうせまたグダグダになるでしょうに。防衛省の担当者がお気の毒です。

つい最近まで、私も北朝鮮情勢はどうせ変わらないだろうとか思っていました。しかしながら核実験以後、なんか保ちそうにない雰囲気が出てきました。頼みの中国も経済制裁に踏み出しましたし。
北朝鮮崩壊もそう先の話でもなさそうですね。どんな形であれ、北が崩壊すれば、海兵隊駐留の意味づけが難しくなるでしょう。アメリカそのものが海兵隊削減、米本土撤収路線ですしね。一部はハワイやグアムに転進だし。現今は、北朝鮮情勢を訴えるのでは弱いとあって、さかんに尖閣情勢をアピールしていますけど。尖閣で海兵隊がやれることなんてないでしょうに。

辺野古一帯は、沖縄にとって将来に亘って保持すべき大事な観光資源です。海兵隊の今後の展開を無視し、わざわざ埋め立てまでして飛行場を建設する意義なんてないじゃないですか。腹立たしいまでの防衛利権の横車です。
橋本政権時代から、国民の眼前でこんな出鱈目劇場を見せつけられているのに、なにもできないもどかしさが悔しいです。

嘉手納統合を反故にするため、わざとらしい統合反対論を展開し、国防をゼニに変える代替案を楽しげにぶち上げてくれました。やれメガフロートだの、やれ埋め立てだのと、業界からの後押しを受けて、さぞや美味しかったのでしょう。もう、こういうのは国民がノーを突きつけなきゃならんですよ。

嘉手納の空軍も縮小しているわけで、海兵隊が同居できない理由なんてないのに。あそこまで見え透いた嘘をついてまでして、土木利権が欲しいんかいな。


今朝の産経ニュースによると、嬉しい話がありました。

海自飛行艇 印へ輸出 中国牽制、政府手続き着手

インド政府は3年ほど前から日本政府にUS-2を購入したいとの意向を伝えていた。昨年6月に海自とインド海軍が相模湾で初めて共同訓練を行った際、海自はUS-2も投入、インド海軍幹部は性能の高さを直接確認したという。

あの短距離離水性能を目の当たりにしたら、誰もが驚くでしょう。そのうえ、低空でのあの低速性能ですから。良いデモンストレーションをやったものです。

政府高官によると、タイやインドネシア、ブルネイなどもUS-2導入に関心を示している。インドに加え、これらの東南アジア諸国連合(ASEAN)各国と同じ装備を保有し、技術交流や共同訓練を活発化させれば、「高圧的な海洋進出を拡大させる中国への牽制(けんせい)にもなる」

長い道のりでした。やっと、日の丸飛行艇が海外の海原を翔る日がきたのです。感慨深いものがあります。
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五百九拾九  辺野古移設のまやかし(2013/3/10)
産経ニュース(2013.3.9)から引用します。

普天間飛行場の辺野古移設「暫定」案 政府・与党で浮上

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題で、同県名護市辺野古の代替施設への移設を「暫定移設」とする案が政府・与党内で浮上していることが8日、分かった。辺野古への移設は「普天間固定化」を回避するため早期の実現を図るが、一時的な移駐とし、将来的には県外移設を検討する。辺野古移設に反対する地元への説得材料としたい考えで、与党議員は非公式に地元への打診を始めた。

 暫定移設案について、政府高官は「地元と交渉していく上で、将来的な県外移設方針を打ち出すことが不可欠だ」と指摘。沖縄の基地問題に精通する自民党幹部も「普天間固定化を避けるための一時的な辺野古移設という論法を前面に掲げるべきだ」と語る。

 政府は、地元の名護市議会が閉会する今月26日以降にも辺野古移設に必要な海面の埋め立てを仲井真弘多(ひろかず)知事に申請する。埋め立てには知事の許可が必要だが、仲井真氏は県外移設を主張しており、現時点では許可する可能性は低いとされる。

 地元の反対姿勢を軟化させるため、政府は平成25年度予算案で県から要望があった沖縄振興について満額回答となる3001億円を計上した。だが、政府・与党内では「振興策だけでは辺野古移設への理解は得られない」(自民党国防関係議員)との指摘が多い。

 このため暫定移設案が浮上。辺野古移設について、普天間問題の原点である「危険性除去」を早期に実現するための「次善の策」と位置付け、将来的な県外移設を検討する方針に転換し、仲井真氏が辺野古移設容認に転じることを促す狙いがある。

 地元にも、辺野古移設が膠着(こうちゃく)したままだと米側も移設を断念し、普天間の固定化が現実味を帯びるとして、一時的な辺野古移設を容認する向きもある。

 暫定移設案への転換には米政府の同意が必要。しかし、中国海空軍が東シナ海で挑発的な軍事行動を活発化させる中、在沖縄海兵隊の県外移転を打診することは米側の不信を招く可能性もあり、慎重な対応が必要となりそうだ。


 もう、言ってることが出鱈目です。五百九拾弐  辺野古茫洋(2013/1/13)でも紹介したとおり、防衛省は、日本国内での海兵隊配備について、分散は絶対に許容されないと断言してきました。
 「海兵隊の一体性が損なわれる」「部隊運用の効率性が損なわれる」「即応性・機動性が失われる」とかで、その結果として、辺野古移設が「これまでに特定された唯ーの有効な解決策である」を訴えてきたのです。

 県外移設を将来的課題に据えるなら、まずは海兵隊の配置に関する定義づけを改めていただきたいです。もちろん、これは可能です。だって、防衛省自身がグアムやらハワイやらへの分散配置は有効と認めているのですから。それを、国内に関しては沖縄以外は駄目だとかの無茶苦茶理論を振り回していたわけです。
 今回の自民案からすると、そもそも海兵隊施設が沖縄に集中する必要がないということです。それならば、辺野古移設が必ずしも唯一の解決策ではないと訂正することから始めるべきです。

 結局、憲法9条と同じですね。中身は出鱈目のまま、表面的な整合性を無理偏の解釈でこじつけようという姑息な手法です。で、辺野古移設の件にしても、日本人は9条と同じく許してしまうのでしょう。私は納得がいきません。
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五百九拾八  デザイナー受難(2013/3/3)
 大阪市の天王寺区がえげつないことをやらかしてくれました。

 昨日の読売新聞の記事を引用します。

 『無報酬デザイナー募集…抗議殺到、計画中止』
 大阪市天王寺区は1日、区のポスターなどを民間デザイナーに手掛けてもらおうと、「任期1年、無報酬」の条件で募集したところ、プロのデザイナーらから「業界をバカにしている」などと批判が相次ぎ計画を取りやめた、と発表した。

 従来、区制作のポスターやチラシは職員がデザイン。昨年8月に就任した元NHK記者の水谷翔太区長が、「民間の力を生かしてよりよいものを」と発案した。

 ところが、2月4日に募集を始めたところ、電話やメールで抗議が殺到。6日にはアマチュア限定に変更したが、「業界への配慮を欠くことに変わりない」「正当な対価を払うべきだ」などの意見が続いた。

 結局、28日の締め切りまでに4人が応募したが、区は「これだけ批判を浴びると理解が得られにくい」と計画を断念。4人には事情を説明するメールを送った。

 水谷区長は読売新聞の取材に、「業界に対する認識が足りなかった」と話している。


 PCと便利なレイアウト・ソフトが普及したため、ここ10数年来、全国各地の自治体では職員自身が印刷物制作に取り組むようになりました。
 頁編集物については、最初はWindows版 Page makerが導入され、やがてWindows版 In Designへとバトンタッチされました。その後、Wordの仕様が改善されたことから、高品質な印刷物以外はWordが利用されるようになりました。
 Wordは、ほぼすべての方が操作可能でしょう。RGBしか扱えないとか、カラーマネージメント未対応とか、組版が不十分とかの欠点はあるものの、そこそこの目的であれば問題ないでしょう。
 ポスターやリーフレットなんかの単頁物については、昔も今もIllustratorですね。


 天王寺区でも職員がデザインしていたものを、区長さんが“本格的なデザイン”とかの色気を出したのでしょうね。そりゃあ職員と専門デザイナーとでは次元の違う成果物となるでしょう。デザイナーはそのためのスキルを持っているわけですから。
 それをロハで利用しようっていう了見が理解できません。非常勤であれ、職員ともなれば業務として任ずるわけですね。ひどい話です。業務命令として責任を課しながら、無報酬ってありえないというか、労基マターじゃないですかね。これが業界のお手本となるべき地方自治体からの発議なんですから。

 他の業界同様に、デザイン業界も痛んでいます。自治体にしろ会社にしろ、内部にカラー印刷環境があるのが当たり前になっています。また、市町合併による公共関係の激減、会計規則の厳密適用による単価切り下げ、支出削減のための発注削減など、デザイン業界も旨味がなくなり、乾いた雑巾をさらに絞るかのような実態があります。

 区長は知ってか知らずか、よくも言えたものです。元NHK記者とかで、マスコミ人らしい受け狙いというか、思いつき施策だったのでしょう。60年前、レイモンド・ローウィが日本人に与えたショックは遠くなりにけりです。デザインの価値も安く見られたものです。
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五百九拾七  ドラえもん 生物でない理由は?(2013/2/24)
 東京新聞の古い記事(2月12日)ですけど、受験界隈で大きな話題になったそうです。私立麻布中学校が今月行った入学試験の理科で出題された問題だそうです。

 <問> 右図は、99年後に誕生する予定のネコ型ロボット「ドラえもん」です。この「ドラえもん」がすぐれた技術で作られていても、生物として認められることはありません。それはなぜですか。理由を答えなさい。

 この設問の前題で、生物の重要な特徴として、「自分と外界とを区別する境目をもつ」「自身が成長したり、子をつくったりする」「エネルギーをたくわえたり、使ったりするしくみをもっている」の3つが挙げられていて、これを前提にしています。

 複数の学習塾が公開した模範解答は、自身の成長や生殖という2番目の条件を満たせないから、としています。命題に対して要件が満たされているかどうかを論理的に思考する課題だそうです。暗記に拠らず、論理的思考力を問う趣旨であると、麻布中学側は説明しています。


 しかし、どうなんでしょう。「自身が成長したり、子をつくったりする」のが生物であるという前提を満たせていないとの模範回答ですが、この前提そのものに疑義を抱いた生徒もいるでしょう。

 交配種とか遺伝子操作植物とかで、種を残せないものがありますね。それらが生物でないとは、なかなか言い難いでしょう。また、生物は成長から劣化の過程を経、やがて死を迎えるようプログラムされています。で、機械も同じ過程を辿ります。製造された機器は馴染みやエージングによって性能を上げていき、やがて経年劣化により性能低下し、最期に死を迎えるという、生物と同じ過程ですね。

 私みたいに考えた生徒は報われません。いえ、そういう人間は受験向きでないのでしょう。ですから、私自身、テストを出題する際、回答の曖昧さを排除するよう腐心しています。また、回答時に生徒から他回答の可能性を指摘されたら、認めるようにしています。そういえば、八拾  試験問題は精選せよ (2003/5/18)にも書いていました。
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五百九拾六  村田諒太氏プロ入り(2013/2/16)
 ロンドン五輪ボクシングのミドル級金メダリスト、村田諒太氏がプロに転向する意向の模様です。五輪の話は五百七拾弐  48年ぶりの快挙に書いたとおりです。

 仄聞するところでは、フジTVがバックアップし、世界挑戦への道とかのコンテンツづくりをするみたいです。奥方もTVへの露出が好きみたいだし、夫婦二人三脚でのチャレンジとかのストーリーに仕上げていくのでしょう。

 で、TV局が資金を出して世界戦を実現するのでしょう。TBSが亀田兄弟をネタにして、結構な視聴率を稼いだ件の二番煎じを狙ってのことでしょう。世界戦生中継まで漕ぎつけ、そこで視聴率を稼げばプロジェクトは成功との位置づけだと思われます。世界チャンピォンになれるなんて、誰も思っていないでしょう。もちろん戴冠できればそれに越したことはありませんけど。

 例えば、WBC王者のセルヒオ・マルチネス選手と比較すると、すべての面で勝ち味がありません。まだプロ以前ですから、比較するのもおこがましいのですが。
 そもそも12R闘える身体をつくれるかさえ怪しいんじゃないでしょうか。五輪の3Rでさえ一杯一杯で息が上がっていましたね。ソウル五輪でのロイ・ジョーンズJrは、3Rフルに無人の野を征くがごとく動き回っていました。ロイと比べるのは無理があるとしても、27歳の村田氏が今後どれほどの向上を果たせるか疑問です。

 また、アマでは75kgであったのを72.5kgまで絞る必要があります。これもまた厳しいハードルとなるでしょう。スーパー・ミドル級なら76kgでm今までどおりの体重で対応できます。しかし、スーパー・ミドルのトップ連中はあまりに強い面子ばかりです。アンドレ・ウォード、カール・フロッチ、ルシアン・ビュテ、ミッケル・ケスラー、アーサー・アブラハム、アンドレ・ディレルとか、よくもこんなに強いボクサーが一堂に会したものだと感心します。

 とてもじゃないけど、スーパー・ミドルには1%の可能性もありません。かといってミドル級でも厳しいのね。それでも私ゃ応援しますけどね。
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五百九拾五  未熟な中国海軍(2013/2/9)
 今週最大のニュースは、中国フリーゲート艦による海自護衛艦への火器管制レーダーの照射事件でした。このニュース第一報を聞いたとき、私の感想はヤリィってなもんでした。

 私ゃ中国の夜郎自大な行為を歓迎しています。日本は昔から外圧がなけりゃ、なにも変えられずにきました。貿易摩擦時代、アメリカの強圧あってこそ、変化を受け入れることができました。要求の中には、そんなのおかしいだろうとかの項目もありました。それでも、次々に受け入れましたね。
 あるいは、冷戦時代のソ連の傍若無人な振る舞いを受けてさえ、自縄自縛の国防方針を変えることができませんでした。しかしながら、オホーツク海と東シナ海とでは事情が違います。シーレーン確保と自国領土侵犯の話ですから、切迫度が段違いですね。

 政府が事件を公開した翌日、石破氏が「有事の法制整備が必要(意訳)」と言ってました。そのとおりですが、有事法制を整備するには、強い外圧が必要です。そして、今まさに中国がその役割を果たしてくれているのです。ですから、私ゃ大歓迎なんです。

 今回の行為は、日本にとって有難いことだし、対外的に中国の無法ぶりをアピールできるしで、ごっちゃんです。しかし、これ以上のことは期待できないんじゃないでしょうか。いつも強気の中国外交担当者の最初の記者レクで、質問に対して即答できず、目が泳いでいました。外交当局自身が「困った事態だ」との認識だったのでしょう。
 翌日には、日本側のでっち上げだとかの言いがかりに方針転換していました。それでも忸怩たるものを感じているのでしょう。一応、尖閣から引き上げたみたいですね。
 艦隊運用関係者たちは、国際ルールを知らないのでしょう。あるいは教育されていないのかも。

 未整備な日本の国防に係る法制を見直すには、相当な外圧が必要です。旧ソ連以上の脅威をかけられるのは中国様しかいません。ここで反省せずに、軍部さん、もう一息気張ってくれんかな。
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五百九拾四  最近の世相(2013/2/2)
 先週の休日は、障害者技能競技大会の審査員を6年ぶりに務めていました。事前の競技課題づくりに始まり、直前の会場機器のチェック、そして当日の審査と忙しい休日でした。おかげで、サイト開設以来2度目のさぼりとなりました。

 この2週間の間にいろいろなことがありました。


 元横綱・大鵬の納谷幸喜さん死去
 大鵬関は本当に強かったですね。今の白鵬と同じで、相手のぶちかましの衝撃を、下半身はびくともせず上半身だけで殺していました。また、四つに組んだら最期、必勝でしたね。あんまり強くて勝ちすぎたものだから、観戦側の飽きもあったかと思います。

 当時、平幕だったかの貴乃花関に敗れて引退したのでしたっけ。負けた瞬間、客席からの座布団の乱舞が凄かったです。注目の一戦で意外な結果が出た際、座布団が投げ入れられますけど、あの一戦での興奮が史上最高であったかと。


 内柴被告
 裁判で聞こえてきた内柴氏の発言は無責任なものばかりでした。生徒から誘われただの、合意の上だったのの自己弁護ばかりです。
 そもそも未成年者に酒を飲ませる教師ってありえない話です。私ゃ、未成年者が混じった生徒の飲み会に参加するのが嫌でした。できるだけ断っていました。だって、酒を飲むな、煙草を喫すなとか、無粋な注意係を務めにゃなりませんから。

 5年とかの実刑判決は仕方ないですね。ただ、氏が未だに拘留されているのは変でしょう。逃亡の惧れもなく、証拠隠滅の惧れもなく、また被害者や証人に対する脅迫を行えば、自分で自分の頚を絞める行為だし。
 拘置期限の延長が恣意的に運用される日本の司法制度には怒りを覚えます。数十年来、批判され続けてきた問題点で、今さらな話ですけど。


 橋下市長「体罰認めるか、出席停止を」
 「ある程度の有形力の行使を認めるか、それとも一切禁止の代わりに生徒を出席停止とするのか、どちらかの大きな方向性に行かないといけない」と述べています。

 体罰は明確に禁止されているものの、ここでいう“有形力の行使”がどういうものなのか、体罰に該当しないものなのか判然としません。例えば、罰として校庭2周走を課しても体罰でなく、20周となれば体罰となります。橋下氏の言う“有形力の行使”が、例示のように体罰を避けるものなのか、体罰に該当するものを必要と訴えているのかが分かりません。

 橋下氏の発言の背景として、氏は現場のどうしようもない状況をよく理解しているのでしょう。有形力の行使を可能とする、あるいは出席停止のハードルを下げる運用の途を残すことは重要かと思います。橋下氏が提示したテーゼは、真剣に向き合うべきものだと考えます。
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五百九拾参  2012ミステリ特選(2013/1/20)
 今さらながらですけど、昨年のミステリ My Selectをやります。

 第1位 『ロスジェネの逆襲』池井戸潤(ダイヤモンド社)

 池井戸氏は、文句なく銀行(金融)ミステリーの第一人者でしょう。多作でありますが、駄作が一作もないという貴重な作家です。池井戸氏の話題作は『下町ロケット』ですが、代表作は“半沢直樹シリーズ”でしょう。『オレたちバブル入行組』、『オレたち花のバブル組』そして本作です。

 不況とあって誰もが苦しい仕事を強いられる中、主人公もまた理不尽ともいえる業務に任ぜられ、やがて絶体絶命のピンチに立たされます。そこからの逆転劇が読者の共感を得るみたいです。今や、サラリーマン諸氏一推しのシリーズとなっています。
 きっと皆さん、逃げ場のないなか、日々胃の痛む思いをしているのでしょう。私も何度も読み返し、その都度カタルシスを味わい、仕事のストレスを発散しています。

 半沢直樹の決め台詞がいわせません。
「俺は自分から喧嘩を売ることはない。しかし、やられたら倍返しだ」


 第2位 『真鍮の評決』マイクル・コナリー(講談社文庫)

 マイクル・コナリーといえば、“ハリー・ボッシュ シリーズ”ですが、新しい“ミッキー・ハラー シリーズ”も絶品です。『リンカーン弁護士』に続く第2作目です。

 コナリーのアイデア作出、構成力は凄いものです。本シリーズはリーガル・サスペンスですけど、凡百の法廷モノとは一線を画しています。第1作、本作ともに、今までにないプロットで、独創性と意外性が光っています。さすがコナリーです。


 第3位 『64(ロクヨン)』横山秀夫(文藝春秋)

 「このミス2013」で一位を獲得しましたから、説明の必要がありません。
 また、五百八拾参  絶品!! 横山秀夫氏『64(ロクヨン)』  (2012/11/5)にも、私の感想を記載しています。


 第4位 『密売人』佐々木譲(角川春樹事務所)

 “北海道警シリーズ”『笑う(うたう)警官』、『警察庁から来た男』、『警官の紋章』、『巡査の休日』に続く第5弾です。
北海道警の例のはぐれグループの活躍が描かれています。このシリーズは、完全に佐々木氏のライフワークに育ったかと思います。本作でも、殺人事件と警察内部の問題がリンクしています。第1作から連なる郡司事件の余波ともいえる物語です。

 皆様で、未読のものがあれば是非とも読んでください。特に池井戸氏の“半沢直樹シリーズ”は、サラリーマン諸氏にお薦めです。辛い毎日をお過ごしの方にも、きっと勇気を与えてくれます。
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五百九拾弐  辺野古茫洋(2013/1/13)
 自民党の石破幹事長は、取りあえず辺野古移転を推進するものの、将来的には県外移転を考慮するとか発言しました。なんだかなあです。海兵隊の県外移転なんぞできっこないのに、取りあえず沖縄県側を静かにさせることを狙ってのことでしょう。

 一方の沖縄側は、又吉知事公室長が国務省を訪ねて関係者に辺野古移転は不可能と伝えたそうです。県、市町、国会議員、県市議会議員のすべてが辺野古移転に反対し、県外移設を希望している状況です。
 そんななか、国は沖縄県への環境調査評価を伝え、飛行場建設に踏み出したい意向のようです。

 これまで、沖縄側は防衛省に海兵隊の存置必要性や沖縄への一極集中の緩和を求め、その理由を質してきました。その回答が「『在日米軍・海兵隊の意義及び役割』に関する沖縄県知事からの再質問に対する回答」です。面白い内容で、いろいろ考えさせられました。

 この回答書は突っ込みどころ満載で、特に引っかかったのは、部隊の分散配備について述べた部分です。

 「ハワイやグアム等の他の地域にも海兵空地任務部隊(MAGTF)が形成されることによって、地域における海兵隊全体の対処能力が向上する。」とし、国外移転によっても、「我が国及び地域における米軍の抑止力は維持・強化されるもの」「アジア・太平洋地域において、多様な事態により柔軟かつ迅速に対応し得る米軍の態勢が構築される」との認識を示しています。また、国外移転を「部隊配置の縦深性が増す」と積極的な評価もしています。

 その一方で、日本国内での配備を語る際には、沖縄への一極集中が重要であると矛盾したことを述べています。
 潜在的紛争地域として朝鮮半島や台湾海峡、脅威が増大している中国を想定し、沖縄はこれらに“近くかつ近すぎない”位置にあるとしています。朝鮮半島のみを念頭に置いた配置とした場合、台湾海峡や東南アジア等へのアクセスが不利になるとして、沖縄以外の県外移転を難じています。「海兵隊の一体性が損なわれる」「部隊運用の効率性が損なわれる」「即応性・機動性が失われる」とか全力で否定してます。

 ハワイやグアムへ展開しても、対処能力は向上しうるものなのに、なぜか日本国内での移転は、海兵隊の運用能力低下に繋がるそうです。言ってることが無茶苦茶じゃないですか。

 で、私が一番気にしてる嘉手納統合です。例の問題点が挙げられています。
 ・騒音の増加
 ・速度の遅い回転翼機と速い戦闘機を共同運用することによる安全性の低下
 ・有事等における混雑による基地機能の低下

 ○ 騒音については、米軍全体の再編と関係してきます。空軍の縮小も計画されており、決して増加ともいえないでしょう。
 ○ 共同運用については、防衛省も検討し、管制可能と結論づけましたね。海兵隊も可能としましたし。空軍は嫌がってるそうですけど。
 ○ そもそも有事って、どんな状況を想定しているのでしょうか。内容も語らずに、過去には「有事の際には、運用機体数がこんなに過大なものになるんだ」とか主張していました。ベトナム戦争最盛時でさえ、そこまでの機体数を集中しなかったでしょう。なんか、自分に都合のいい想定数字を挙げているだけじゃないですかね。
 仮に米中全面対決なんてことになったら、そりゃあ大軍を動員せにゃならんでしょう。しかしその際、沖縄に空軍主力を置けますかねえ。

 結局、辺野古移設案が、「これまでに特定された唯ーの有効な解決策である」を言いたいのでしょう。防衛省の担当者苦肉の回答書です。宮仕えは辛いものです。
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五百九拾壱  最強対決6たび(2013/1/6)
 人気番組『ほこ×たて』の看板対決である最強金属vs最強ドリル対決が元旦に放映されました。これはもう、見ずにおれません。TVの前で姿勢を正して凝視しました。

 日本のドリルメーカーの監事を務める3社、“三菱マテリアル”、前回対決の“OSG”、そして今回の“不二越”です。ドリル開発の資力、人材、研究開発体制などを備えた業界ナンバー2ではないでしょうか。

 すでに対決の課題は明白です。不二越は、ダイヤモンド砥粒の盛り方(砥粒サイズ)、研削パターン、本体の形状・抗堪性などを詰めていきました。実験のため、グループ企業の材料会社にセラミックス焼成物を製造させ、これを対象に研削し、最適なドリルをつくり上げました。

 一方の“日本タングステン”も、より硬度を高めた新素材を準備しました。OSG対決で1,950であった硬度を2,119にまで高めていました。





 結果はやはりドリルの敗北でした。これはもう仕方ないかと思います。不二越さんも日本タングステン側の硬度を甘く想定しすぎていましたね。素材専門メーカーともなれば、それなりのノウハウがあるのでしょう。当然でしょうけど。

 ドリル本体も摩滅しつくしています。


 未穿孔部8mmを残していますので、全然ですね。前回のOSGは残り3mmに迫っていましたから。


 この対決は、「五百五拾七   「ほこ×たて」最強決戦 終章  (2012/4/22)」に書いたとおりドリル側が不利です。まず勝ち目はないかと思います。
 次の興味は、“三菱マテリアル”が挑戦することですが、三菱はやらないでしょうね。プライドが高そうですから。あるいは、日立工機もドリルを製造しており、開発資金も潤沢でしょうから見てみたいところです。

 またあるいは、日本マテリアル以外の素材メーカーが自社開発のセラミックス板で挑むのも面白いかと思います。OSGとかの自信のドリルで同時に穿孔を開始し、どちらがより抗堪性を発揮するかを競うとか。
 「ほこ×たて」対決のなかでも、このドリル対決には別格のドラマがあります。結果はともかく、やはり次回対決が楽しみです。
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五百九拾   尖閣が煮詰まってきました(2012/12/30)
 昨年は津波と原発の衝撃に気がふさがった一年でした。今年といえば、中国との軋轢です。2年前の年初にも、「四百九拾壱   今年の課題も対中戦略  (2011/1/2)」を書いています。

 石原前都知事の肝いりで、尖閣諸島を所有する栗原家から都への移転が検討されました。中国との軋轢を忌避する外務省の浅知恵によって、結局国有化が為されました。で、これが藪蛇となり、中国政府主導の反日暴動が演出されました。

 まさに後知恵ですが、都所有が正解でしたね。日本国による国有化は刺激が強すぎます。外務省は尖閣利用を徹底的に阻害してきました。所謂“棚上げ”によって、中国と裏取引をしてきたわけです。でも、これって今さえよければいい式の無責任な対応です。
 いずれ海洋開発などの利権が正面に出てきたとき、中国との対決は避けられません。しかも、月日が経つと、日本有利の権利関係が希薄になってしまいます。中国が狙ってきたのは、まさにこの点です。で、外務省はその中国に歩調を合わせてきたのです。

 今回、国有化したのですから、外務省には責任を持って、正面から中国と向かい合っていただきたいです。なんかねえ、海保や自衛隊ばかりを正面に立て、自分はバッくれているやに見受けられます。


 先日、森本前防衛大臣が、なんか言ってます。
 「海上保安庁や自衛隊の現有能力を分析すると、日本は中国に対抗することはできない。人員や装備の強化をしなければ、中国の行動に対応できない危機状態が起こりうる」
 「日本がはるかに後れを取っている」
 「今後長い間、中国からの圧力を受けることになる。空中警戒や艦船配備を強化しなければ、尖閣周辺で中国に対抗することは不可能」

 こういった考えはどうかと思います。軍拡競争より、実効支配−それも軍事色のない利用実績が有効かと思います。東京都が計画していた自然環境調査や自然環境整備、漁船用船溜まりを建設しての石垣漁民への漁業支援なんかが最適でしょう。また学術調査員や漁業関係者を常駐させるための宿泊施設を整備したりも実績として有効でしょう。あるいは気象観測施設も有意義かと。学術とか民間利用による実績を積み重ねることが軍拡より大切かと思います。

 民間人やらの非戦闘員を駐留させ、彼らに危険が迫った際の救出目的でないと、自衛隊の実戦投入は難しいでしょう。日本人の安全確保目的であれば、実力行使も可能でしょう。というか、その際に日和ったら、いずれの政権であっても、政権瓦解でしょう。
 遅まきながら、東京都が計画していた尖閣利用、つまり実効支配に向けて動いて欲しいところです。ちなみに島との緊急の行き来には、オスプレイよりUS-2推しです。尖閣上空を舞うUS-2を見てみたいです。
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五百八拾九  MDのでたらめ再び(2012/12/24)
 先週実施された衆議院総選挙は、予想通りの結果でしたね。自民党の勝利後、安倍総裁や石破幹事長は、すでに与党気分でいろいろな発言を連発してくれています。

 私は見ていないのですが、石破氏がNHKの報道番組で、「アメリカ行きの北のミサイルをイージス艦で撃ち落とす」とか仰ったそうです。石破氏は防衛大臣も務めた上、軍事オタクとのことですから、この発言が不適切だというのは承知しているはずです。多分、安倍総裁が以前の首相時代から、集団的自衛権行使の件で主張して内容に合わせての発言なのでしょう。

 この件については、百七拾六 MDの怪談 (2005/2/12)弐百七拾四 ミサイル防衛、なんじゃらほい (2006/11/25)にも書いています。あらためて書くのも憚られますが、米本土に届く北のミサイルは、日本上空を通過しません。これは地球儀で確認するとよく分かります。オホーツクを通過する飛翔コースとなりますから。

 それと馬鹿馬鹿しいのは、米本土に届くとなると、テポドン2を超えるロケットとなります。もう完全な大陸間弾道弾−ICBMでっせ。断言します。ICBMはSM3の迎撃高度をはるかに超えているし、さらには迎撃可能な想定速度をもはるかに上回っています。
 SM3が想定している迎撃速度は、ノドンクラス程度ではないでしょうか。それに、SM3による迎撃実験の際の模擬弾の速度は、ノドンクラスの半分くらいと宣う識者もいます。模擬弾の速度については、一切公表されていないので、本当のところは判りません。
 いずれにしても、軍事オタクの石破氏としては、忸怩たるものを抱えながらの発言だったのではないでしょうか

 再確認すると、基本的な話として、SM3は中距離弾道弾迎撃システムでしょう。長距離弾道弾を撃ち落す技術が、世の中に存在するって話は聞いたことがありません。ひょっとして、あるものなのでしょうか。少なくともSM3は違うでしょう。
 その中距離弾道弾迎撃にしても、有効な速度レンジがあるはずです。MDの実態については、迎撃テストの数値内容が公表されていない以上、外部の人間には本当のところが判らないというオバケ話じゃないですか。あまり信用しないようにしましょう。
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五百八拾八  歳末総選挙(2012/12/16)
 今現在、衆議院選挙の開票速報待ちで待機しています。今夜半にかけては、各局とも特番でテーブルを埋めています。私はTV東京をメインに見る予定です。池上彰氏がプレゼンターを務めるとかで楽しみにしています。

 前回の総選挙で、池上さんの恐れを知らぬ直球コメントが笑わせてくれました。他局番組の不誠実さを堂々と指摘したのは、他の人間には絶対真似できないことでしょう。あれは、TV朝日の選挙ステーションを非難したものでしょう。他にも公明党と創価学会の関係を語ったりで楽しませてくれました。今夜も期待が高まります。

 雑誌や放送局の事前予想では、いずれも自民圧勝でした。230〜290議席と幅はあるものの、過半数を窺う数字です。対して民主党の凋落がまた凄まじいものです。60〜90議席と見るも無残というべきです。
 民主党の減数分は、自民党と維新系に流れるものと思われます。民主党から分裂したでっちあげ政党もまた苦戦の模様です。
 また、現時点で投票率が低いとのことなので、公明党も漸増するかもしれません。これら事前予想が当るのか、まさに興味津々です。

 安倍総裁は以前から大勝利を確信したかのように振舞っていましたね。大丈夫なのでしょうか。“国防軍”だの“集団的自衛権の行使”だのと、景気のいいことを吹聴していますが、肝心の尖閣や竹島については、具体的対応策を提示していません。きっと、昔どおり有耶無耶の棚上げ路線を実行するのでしょう。
 あるいは、従軍慰安婦問題でも、本当に河野談話を否定できるものでしょうか。安倍さんって、以前もそうだったけど、肝心なことは実現できませんでしたから。

 それから悪趣味ですが、この3年間の民主党閣僚の帰趨がどうなるものか楽しみにしているところです。残念なのは、鳩山元首相が引退したことです。是非とも民意による洗礼を受けていただきたかったです。
 菅元首相も危なそうですね。聴衆が一人もいない選挙演説なんて前代未聞でしょう。果たして今夜の民意はいかがなものか。

 そろそろ始まる選挙特番に備えたいと思います。
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五百八拾七  パッキャオ壮絶KO敗(2012/12/9)
 本日ラスベガスにおいて、ウェルター級のビッグマッチが行われました。マニー・パッキャオとファン・マヌエル・マルケスとの再戦です。それも第4戦目という因縁の試合です。第1戦目は引き分け、第2戦、3戦目は、どちらが勝ってもおかしくない接戦でした。今回はまさにけりをつける決着戦だったのです。

 生中継だったのを、仕事で見ることができず、帰宅後に録画映像を鑑賞しました。で、大ショックを受けました。
 3R、マルケスの大振りの右フックを直撃されたパッキャオがダウンしました。5Rには、パッキャオの左ストレートを受けたマルケスがダウンしました。

 そして6R終了間際、左ストレートを打つべくステップインしたパッキャオに対して、マルケスが左に体を躱わしながら右クロスのカウンターを当てました。身体を突っ込ませたところへの見事なカウンターとなり、前のめりに倒れたパッキャオはピクリとも動きませんでした。完全な失神KOです。

マルケスの拳を受けたパッキャの頭部が跳ね上がるほどの衝撃でした。人間の意識が飛ぶのも仕方ありません。人間の脳は電気信号を扱う関係で、許容量以上の衝撃があった場合、回路を守るために信号を遮断するようにできています。長いことパッキャオの意識が戻らなかったのは、衝撃があまりに強かったため、ブレーカーの遮断レベルもまた強かったのでしょう。
 その場面を画像でご覧ください。







 オーソドックス構えから、左に身体を沈めながら右クロスのカウンターを決めるシーンは何度も見てきました。しかし、今回のカウンターは最も強烈なものです。この時点で、マルケスもダメージによって動きが鈍っていたところです。油断したのでしょう。迂闊な接近でした。

 でも、悔やんでも仕方ありません。パッキャオには捲土重来を期していただきたいです。幸い、試合後のインタビューで再起を誓っていました。きっと、今回の敗戦もまたパッキャオにとって、よい戦訓となるでしょう。さらに成長したパッキャオを見ることができると信じています。
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五百八拾六  最近の世相(2012/12/1)
チャイナネット から

殲15機の発着飛行訓練を順調に実施 中国の航空母艦

 中国初の空母「遼寧艦」が引き渡され、配備された後、海軍の将兵は、科学的実務的態度と粘り強くたたかう精神で、計画に従って迅速に張りつめた海上訓練と研究・試験任務に入った。その間、殲15機の発着飛行訓練を順調に行った。空母プラットホームと航空機の技術性能は十分に検証され、艦艇・機体のフィット性能は良好で、設計指標の要件に達していた。


 殲15の発着艦試験動画が話題になっています。私も意外な展開に驚きました。
 拘束ワイヤーは自主開発したのでしょうか、あるいはどこぞから購入したのでしょうか。多分、ウクライナあたりから購入したのでしょうね。ロシアやウクライナは売らないとか言っていましたが、金を優先したのでしょう。

 ワイヤーなんかより、もっと肝心の制動緩衝装置をものしたのに感心しました。いえ、これもまた購入したのでしょうか。ひょっとすると、最初から設置されたまま中国に売られたのかもしれません。30t近い機体を制動緩衝させるショック・アブソーバーの開発、生半可なことではないでしょう。もし、中国が自主開発したのなら、大したものです。ショックの製造には、手堅い基礎技術が必要ですから。

 ちなみに、旧海軍の制動装置は萱場製ですね。萱場は空母の着艦拘束システムでのノウハウを元にして、戦後は自動車のショックを製造しています。私はカヤバ製でなく、安価なモンローのショックを使ったことがあります。

 しかしまあ、「遼寧」そのものは、速度といい、スキージャンプといい、別にどうこう言うほどのものでもないでしょう。
この先、中国が空母建造・運用をどこまでやれるか疑問です。現時点で中国バブルは崩壊手前と見るべきでしょう。このまま軍拡路線を進めたら、旧ソ連の二の舞になるんじゃないですか。造ったはいいが野晒しとか、まともに動かせないとかになるのではないでしょうか。


INTERNATIONAL BUSINESS TIMES から

国防軍 自民がHPで説明も徴兵制に触れず

 自民党は党のHPで「自民党があたかも戦争を引き起こすかのような報道や批判がでているが、それは間違い」としたうえで「私たちはシビリアン・コントロールの鉄則を変えるつもりはありません」と説明。
 あわせて「憲法の平和主義や戦争の放棄もまったく変わらない」とした。
 自民党は「自衛隊は国内では軍隊と呼ばれていませんが、海外では軍隊として扱われている」とし「こうした矛盾を解消するため、憲法を改正することで自衛隊を国防軍として位置付けることを公約に揚げているのです」と説明している。


 「国防軍」論議の中で「徴兵制が出てくるのではないか」と懸念する声というのは、誰の謂でしょうか。そこのところがないままでは、意味をなさない文章です。

 今日び、徴兵制みたくくだらないものを推進しようなんて馬鹿はいないでしょう。極めて専門化、細分化された現代戦においては、徴兵制なんぞ害悪でさえあるでしょう。大規模な歩兵師団の編成が必要な戦闘場面なんぞ、日本には無縁でしょう。海外へ大軍を派兵するとかありえませんし、本土で大規模な地上戦でも想定しない限り関係ない話です。

 しかも、徴兵制を実施すると、予算のバカ喰い必須です。ただでさえ予算削減で定員や装備調達、開発費にしわ寄せがいってる中で、そんな無駄な支出は自分で自分の頚を絞める行為です。
 一体どこの誰が徴兵制なんぞやろうっていうのか。典型的な気分だけの文章です。
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五百八拾五  ありがちな分析(2012/11/18)
 先週のJ-CAST 会社ウォッチに、経済アナリストの小田切尚登氏が「世界で勝てないのは「日本人サラリーマンのライフスタイル」が原因だ」を寄稿していました。
 この内容というのが、よくある紋切り型の分析だったのです。氏は経済専門のアナリストなのに、なんでか筋の悪い分析を元に文章を書いています。

 まず、前提にしている日本の定義が変です。

 ・日本人サラリーマンが「機械を知って人間を知らない」ところにある。
 ・技術はあるが、製品を使う人が感じ考えるところを理解していない。
 ・今まで日本企業が得意だった「とりたてて魅力的でも個性的でもないが、性能が高く壊れにくい」という製品の入り込む余地は少なくなる。


 上の2点は、根拠のない氏の個人的な印象ですね。3点目は完全に事実を捩じ曲げてます。日本製品が未だに世界で支持されているのは、壊れにくいという信頼性です。多分、知ってて自説展開上否定して見せたのでしょう。

 続いて、“「人間らしい」活動をすることから始めよう”との提言から、いろいろ書いていますが、これが出鱈目なのです。

 ・日本のサラリーマンには、衣食住にこだわりが少なく、女性や若者の動向に無頓着で、文化や芸術に無関心、という人が多い(もちろん例外も多数いるが)。
 ・組織集団に従属するのではなく、個人を大切にした「人間らしい」活動に時間を当てるべきだろう。まずは長時間労働をやめ、終業後の同僚との飲み会も減らす。ぼんやりとテレビを見る時間を少なくし、落ち着いた思索ができる時間と場所を確保することも欠かせない。


 1点目もまた、氏の個人的印象でしょう。日本のサラリーマンを舐めすぎです。そもそも欧米のサラリーマンが、日本より「衣食住にこだわりがあって、女性や若者の動向に執着し、文化や芸術に関心を寄せている」根拠って存在するのでしょうか。
 私自身はといえば、貧乏性で、田舎者で、出不精で、なにごとも面倒くさがっているファッション無関心層です。小田切氏に言わせれば、駄目サラリーマンの典型でしょう。でもね、文化や芸術に関心はあるし、世間の動向にはアンテナを張っていますよ。ホワイトカラーのサラリーマンは、大抵のところそんなものじゃないですか。

 で、小田切氏が成功例に挙げているAppleそのものが、小田切氏が否定している、組織集団への従属、個人の抹殺、長時間労働をまさに実践している企業じゃないですかね。
 また、逆に日本式スタイルで成功している事例を一体どう説明するのでしょうか。
 あるいは、“長時間労働に身をやつし、終業後に同僚と飲んでいる”人間には、“私たちに足りないのは何か、どんな商品やサービスが私たちを豊かにするのか、深く考えることが”できないとでもいうのでしょうか。

 突っ込みどころ満載の、浅いというか、安っぽい考察です。小田切氏のいう“世界で勝つ”には、小田切氏のような紋切り型の思考から脱することが肝要なのかなと思います。いえ、それ以前に、この小田切氏のようなステレオタイプの分析をしてちゃ勝てないだろうとか思います。
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五百八拾四  オバマ再選(2012/11/11)
 オバマ大統領が再選されました。今後の4年間は、国政や外交についてかなり自由に取り組めるでしょう。前期においてさえ、国民皆保険を実現したくらいですから、期待できる部分もあります。
 国民皆保険制度はビル・クリントン元大統領が立法化に取り組んだものです。妻のヒラリー氏を医療保険改革問題特別専門委員長に任命し、答申を出しましたが、結局潰えました。

 この制度はオバマ氏の選挙公約でもあり、国務長官に迎えたヒラリー氏ともども尽力して実現にこぎつけました。というか、連邦最高裁で合憲の判断が下されたとものです。アメリカ長年のテーマに一応の決着がつけられた格好です。

 さて、オバマ大統領は東アジアの問題に対して、いかに打って出るのでしょうか。多分、大したことはできないでしょう。オバマ氏は外交に関しては、特に精通しているわけではありませんから。
 ただ、ひょっとすると国務長官にあのジョン・ケリー氏が迎えられるかもしれません。あの、というのは、「百弐拾参 7月4日に生まれて (2004/3/7)」で触れてもいるからです。以前にも、氏が好きだとか書いていますが、最近の氏のスピーチにも感銘を受けました。話題となったのは、先日のマサチューセッツ民主党大会でのスピーチです。
威厳と余裕が感じられ、間の使い方も上手く、また温かみのある表情が豊かです。これほどの演説は、長いこと見たことがありません。ヒトラーもかくやです。
 上院外交委員長も務めており、なんか期待できそうです。ベトナム戦争での捨て身のドンパチなんか、他の大統領や大統領候補たちと一線を画しています。8年前の大統領選挙では、どう考えてもブッシュよりモノが上だろうとか思ったものです。なんせ、ブッシュは州兵勤務でお茶を濁して徴兵逃れをやってますから。

 私、ジョン・ケリー氏が大好きです。実戦褒賞の勲章を連取した軍人上がりのケリー氏ならば、東アジアの対中牽制も巧みにこなせるのではないかと期待しているのです。
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五百八拾参  絶品!! 横山秀夫氏『64(ロクヨン)』(2012/11/5)
 先週から読み始めた『64』、昨日夜半に読み終えました。横山氏7年ぶりの新作とあって、じっくり楽しみました。先を急がず、行間を味わいながら読み進めたため、時間がかかりました。

 期待に違わぬ傑作でした。帯の惹句に「『警察発表』に真実はあるのか <昭和64年>に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件をめぐり、刑事部と警務部が全面戦争に突入。狭間に落ちた広報官・三上義信は己の真を問われる。」とあります。
 また、「究極の警察小説完成!」ともあります。究極というのは盛りすぎかとも思いますが、究極に近いといって差し支えないでしょう。

 この惹句に期待は高まり、まさに期待は裏切られなかったわけです。雰囲気的に『震度0』の趣を予想していました。警察上層部の権力闘争と組織政治に翻弄される、あるいは立ち向かう構図を想像しました。
 予想はほぼ当っていました。ただ、『震度0』が刑事部長室を主として演じられる舞台劇の趣なのに対して、本作は広報室を主舞台にしています。そして、誘拐事件を扱う関係から、自然とフィールドが広がっていきます。

 刑事部と警務部の抜き差しならない対立劇は、『クライマーズ・ハイ』をも髣髴させます。『クライマーズ・ハイ』においても、編集と営業の対立、編集と幹部との対立など、組織内部の対立が見せどころとなっています。

 私としては、『震度0』と『クライマーズ・ハイ』を合わせた面白さを堪能できました。また、広報官が主人公とあって、対マスコミとのせめぎあいも楽しめました。匿名報道問題、会見ボイコット、事前質問提供などの日常における業務遂行上の軋轢が描かれています。

 警察内部の激烈な対立は、誘拐事件という悪夢の再現によって決着がつけられます。このあたりの怒涛の展開は読んでのお楽しみです。刑事としての自負を強く持つ主人公は、警務部の肩書きと責務を負いながら、警察内部の対立にいかに立ち向かうのか。宮仕えの身としては、考えさせられる点が多々あります。
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五百八拾弐  毎年の秋の夜長(2012/10/28)
 農業を止めた身としては、一年のこの時期が一番安らぎます。秋祭りも終わり、暑さ寒さからも解放され、山々が色づくのを待つ風情です。
 この時期は、ミステリーとのマッチングが最高です。今日も今日とて、横山秀夫氏の「64」を購入し、読むのを待つばかりです。横山氏の新作に飢えていたところ、久々に出版してくれました。帯の惹句を読むと、いやが上にも期待が高まります。

 <昭和64年に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件をめぐり、刑事部と警務部が全面戦争に突入。狭間に落ちた広報官・三上義信は己の真を問われる。>

 いかがでしょうか。なんかもうね、「震度0」を髣髴させるでしょう。今から読むのが楽しみです。本作は今秋ベストのミステリーでしょうから、じっくり楽しみながら読むつもりです。これ以外には、めぼしい新作がなさそうですから。

 横山氏にとって、7年ぶりの新作だそうです。640頁を超える大作ですから、たっぷり刺激的な時間を提供してくれるでしょう。今夜から読み始めるつもりです。
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五百八拾壱  橋下市長vs週間朝日(2012/10/21)
 先週号の週刊朝日の特集記事が物議を醸しました。話題になっているとあって、喫茶店で件の記事を読んでみました。

 Web上で散々書かれていたこともあって、予想はしていました。この記事って三文ルポです。週刊朝日がどういう雑誌か知らないのですけど、この記事が似合っているのは、むしろ実話系雑誌です。そんな正面から論ずる内容でもないかと思います。言ってみれば、大スポの煽り記事に大真面目に反論するか、ということです。

 内容はお下劣です。佐野氏は橋下氏が大嫌いなのでしょう。文章の大部は、佐野氏の主観的思いばかりです。また、周辺の人間の感想とかも、あえて書くほどの内容でないしで、ノンフィクションとしての体裁が整っていないんじゃないでしょうか。客観的事実の記述は、ほんの僅かです。
 冒頭のパーティのシーンも客観的描写でなく、悪意に染まった修辞や確信犯的な決めつけが多いです。まさに、実話系雑誌にぴったりの文章です。佐野氏も老いたのか、あるいはこの程度のライターだったのか。

 後の方で、第一次大戦後の混乱期にヒトラーがポピュリズムの権化として台頭したことと、橋下氏とを重ねていましたね。安っぽい譬えです。今の世界中の政治家は、いずれも大衆迎合の景気のいいことを訴求したり、政敵を先鋭的に攻撃してるじゃないですか。佐野氏には、その都度「ヒトラーの台頭」とか連呼してくださいね。
 当時のドイツの社会状況なんぞ、とても日本に置き換えて譬えられるものじゃないのに。本当に安っぽい記事です。上で書いたように、この記事がイエロー・ジャーナリズムに掲載されたものなら騒ぐ必要もないでしょう。しかし、一応名前の通った週刊朝日に掲載されたのは拙かったかと思います。


 結局、週刊朝日は謝罪とともに連載中止を発表しました。この流れから、今後、政治家などへのマスコミの監視や追及が躊躇う傾向になりはしないか心配です。
 社会正義を実現するためには、言論の自由とか広範囲な取材権の確保とかが必須です。とすると、佐野氏の今回のルポ記事と掲載中止は、自分で自分の頚を絞める行為ではなかったか。それも、自身だけに止まらず、ジャーナリズム全体に閉塞をもたらしかねない話です。
 例えば、同和の闇は極めて重要な課題であり、かつセンシティブな性格を有しています。しかるに、佐野氏は事実関係の提示というスタイルを採らず、罵倒したり、皮肉ったり、レッテルを張るなどの相手につけ込む隙を与えてしまいました。
 自ら低俗な言説に堕し、自ら批判を招き、ひいてはジャーナリズム全体の足を引っ張る行為であったかと思います。立花隆氏の「田中角栄研究」との違いは、作者が黒子に徹しているかどうか、取材対象を観察対象として、客観的に提示できているかどうかだと思います。
 しかるに、煽情的なイエロー・ジャーナリズム路線を採ってしまいました。佐野氏も脇が甘いと思います。猛省を促したいです。
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